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はじめての品質管理:モノづくりの工程と4M、データ収集と分析

はじめての品質教育

新しい事業所を立ち上げて数年、組立や出荷に関するクレームが繰り返され、クレーム発生時や内部監査などの機会を利用して現場で話を聞いていると、モノづくりや品質管理についての基本的な知識(常識)を知らないようだ感じていました。

そこで、モノづくりに必要な品質管理について、まとめたのが以下のページです。

ところが、実際に教育をはじめようと準備を始めてみると、

  • 品質や品質管理についての入門書的なものがない。
  • 「QC検定4級の手引き」でさえ使われている用語が難しい。しかも想定されているのが自動車関連のモノづくりのようで、これから取り組むには敷居が高過ぎる。

ことに気づきました。

そこで、モノづくりメーカーとして、20名程度で、簡単な加工・組立、出荷をしている現場向けに、1回30分の教育5回分のテキストを作成しました。

品質というとモノづくりやモノの品質と考えがちですが、品質や品質管理の考え方は、モノづくりに限らず、様々な業界や会社で仕事をする場合にも役に立つ考え方です。

ここでは、品質管理活動の基礎知識として、モノづくりの工程(プロセス)と4M、データ収集と分析について説明します。

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モノづくりの工程(プロセス)と4M

1つの製品が完成するまでには、多くの人と作業(工程)が必要です。例えば1個の鉄の部品は、鉄の材料である鉄鉱石や石炭、鉄板を作る製鉄所、鉄板から部品を作るメーカー、商社や販売店からユーザーの手元に届きます。これらを、工程(プロセス)といいます。

プロセスは、生産工程「部品揃え→組立→検査→出荷」だけではありません。製品開発であれば「商品企画→設計→試作→量産→出荷」となります。

プロセスのインプットとアウトプット

1つのプロセスにはインプットとアウトプットがあります。下図のプロセスの調理は、材料がインプットであり、アウトプットが料理(オムライス)です。

料理で考えるプロセスのイメージ

料理で考えるプロセスのイメージ

図1 料理で考えるプロセスのイメージ

材料準備、調理、盛付の各プロセスを完全に行うことが、料理の品質を維持するために必要かつ重要です。材料準備のミスは、後工程の調理や盛付でカバーできません。調理や盛付にミスがあっても同様で、完成した料理の品質が落ちます。

複数のプロセスによって作り出される製品の品質は、次式のように各プロセスの掛け算で作られます。足し算ではありません。

  • (料理の品質)=(材料準備)×(調理)×(盛付)

各プロセスを10点満点とすると、満点は1,000点です。

各工程が9点なら、

  • (料理の品質)=(材料準備)×(調理)×(盛付)=9×9×9=729

1,000点満点のオムライスを頼んだのに出てきたのは729点です。

あなたがお客様なら729点のオムライスで満足できますか?

プロセスに対する考え方

プロセスは、「インプットに価値を加えてアウトプットを作る活動」です。

製品は1つのプロセスで完成するものではなく、様々な部署がそれぞれの仕事を行い、次々と引き継がれて最終的な製品となり、お客様の元に届きます。プロセスのつながりやプロセス間の受け渡しが重要で、次のような品質管理プロセスについての考え方があります。

  • 「次工程(後工程)はお客様」
    • 次工程の担当者をお客様だと思い自分が担当する工程を確実に行うこと
    • 次工程で働く人に喜んでもらえるように心がけて活動する考え方
  • 「品質は工程で作り込む」
    • 検査で不適合が分かるより、各工程を確実に行い不適合が出ないことが重要
    • 検査で製品の出来栄えを確認します。検査を増やしても品質はよくならない。

「次工程はお客様」について

次の工程はお客様と思い、全員が自分の工程に責任を持って仕事を行い、良い品質ものだけ払い出す。次工程では不良品を受け取らないことで、品質の良いものだけを作ります。

①「自分の工程での責任を果たす」

  • 会社で働く人は全員、責任を与えられて仕事をしています。
  • 全員が自分の工程での仕事の責任を果たさなくてはいけません。
  • これを最初の工程から最後の工程まで全員が行えば品質の良い製品を作れます。

②「前工程は次工程に対して品質の責任がある」

  • 前工程の品質が悪ければ後工程で品質の良いものを作り出すことはできません。
  • 工程に責任を持つとは、次工程に払い出す(流す)製品の品質を保証することです。
  • 次工程には、お客様と同様、品質の良い製品だけを払い出し(流し)ます。

③「前工程からは品質の良いものしか受け取らない」

  • 前工程からは品質の良いものしか受け取らないようにします。
  • 後工程は前工程に対して正しい品質の要求を行う責任があります。
  • 不良だけでなく品質で気づいたことは上長を通じて前工程にフィードバックします。

4M(ヒト・モノ・設備・方法)について

製造には、ヒト(Man)、モノ(Material)、設備(Machine)、方法(Method)が不可欠であり、「4M(よんえむ)」といいます。

下表のように、4Mの変更や変化により工程や品質に大きな影響を与え、不適合やクレームになります。

ヒト(Man) ヒト(作業者)が不慣れなためバリが出た。
モノ(材料)(Material) 材料を間違えた。
設備(Machine) 機械の故障
方法(Method) 作業指示が変更されていたが気づかなかった。

また、4Mの変更は日常的に発生します。

このため、作業者に周知・徹底するために、掲示板等で今日の作業の4M変更について見える化したりする工夫が必要です。

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品質を管理するためのデータ収集と分析・活用

データを集め分析や評価を行う前に、品質改善や生産性向上など、目的を明確にしておくことが重要です。個人の主観的や感覚ではなく、実際のデータに基づき分析・評価します。

データ活用の基本的な流れ

データを活用するための基本的な流れは次の通りです。

  • データを集める。
  • データ全体の傾向をつかむ。(表計算ソフトのフィルタによる分類、グラフ)
  • 仮説とデータによる説明

データを利用した改善のポイントは、集めたデータの全体的な傾向をつかむことです。

データとばらつき(母集団とサンプル)について

品質管理では、経験や勘に頼らずに、事実をデータ(観測値や測定値)としてばらつきなどを把握し、客観的な判断をします。

データをとる場合には、母集団(対象となる全データ)から取り出したサンプルが偏らないように注意します。

QC7つ道具はグラフとチェックシートから

「QC7つ道具」とは、特性要因図、管理図、グラフ、チェックシート、パレート図、ヒストグラム、散布図のことです。図に示されている情報を読み取ることが大切です。

(1) グラフ

グラフには多くの種類があります。表計算ソフトを使えば、棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフや帯グラフなど様々なグラフを簡単に作ることができます。データを整理してグラフにすると情報を読み取りやすくなります。

(2) チェックシート

チェックシートは、データや結果などを数値やチェックマーク(レ点)などの記号で簡単に記録できます。チェックシートを作る際は、欲しいデータや記録のしやすさなどを考えて使いやすくします。チェックシートには、ある目的達成のために使う記録・調査用と、点検項目を満足しているかを調査する点検・確認用のチェックシートとがあります。

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まとめ

品質というとモノづくりやモノの品質と考えがちですが、品質や品質管理の考え方は、モノづくりに限らず、様々な業界や会社で仕事をする場合にも役に立つ考え方です。

そこで、モノづくりメーカーとして、20名程度で、簡単な加工・組立、出荷をしている現場向けに、1回30分の教育5回分のテキストを作成しました。

ここでは、以下の項目でモノづくりの工程と4M、データ収集と分析について説明しました。

  • モノづくりの工程(プロセス)と4M
    • プロセスのインプットとアウトプット
    • プロセスに対する考え方
    • 「次工程はお客様」について
    • 4M(ヒト・モノ・設備・方法)について
  • 品質を管理するためのデータ収集と分析・活用
    • データ活用の基本的な流れ
    • データとばらつき(母集団とサンプル)について
    • QC7つ道具はグラフとチェックシートから
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