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はじめての品質管理:モノづくりの品質と品質管理、重点指向と標準化

はじめての品質教育

新しい事業所を立ち上げて数年、組立や出荷に関するクレームが繰り返され、クレーム発生時や内部監査などの機会を利用して現場で話を聞いていると、モノづくりや品質管理についての基本的な知識(常識)を知らないようだ感じていました。

そこで、モノづくりに必要な品質管理について、まとめたのが以下のページです。

ところが、実際に教育をはじめようと準備を始めてみると、

  • 品質や品質管理についての入門書的なものがない。
  • 「QC検定4級の手引き」でさえ使われている用語が難しい。しかも想定されているのが自動車関連のモノづくりのようで、これから取り組むには敷居が高過ぎる。

ことに気づきました。

そこで、モノづくりメーカーとして、20名程度で、簡単な加工・組立、出荷をしている現場向けに、1回30分の教育5回分のテキストを作成しました。

品質というとモノづくりやモノの品質と考えがちですが、品質や品質管理の考え方は、モノづくりに限らず、様々な業界や会社で仕事をする場合にも役に立つ考え方です。

ここでは、モノづくりの品質と品質管理について説明します。

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製品(モノ)やサービスの品質とQCD

ISO9001品質マネジメントシステムは、最終的にお客様に提供する製品やサービスについて、お客様が満足する(顧客満足を高めていく)ことを求めています。

お客様が満足する製品品質をQCD(Q:品質、C:コスト、D:納期)で見た例は「Q:製品のばらつきがない」「C:価格に見合った製品」「D:必要な時に入手できる」です。

お客様にとって良い品質とは

例えばお客様が自動車にもとめる品質には、使いやすさ(乗りやすさ)、燃費、価格、デザインなど様々で、お客様が何を優先するかでお客様にとっての良い品質も変わります。

モノづくりのおける3つの品質

設計品質:ねらいの品質

  • お客様の要求品質に対して、技術力や生産能力、コストを考慮して設計を行う上でねらった品質
  • 製造の目標としてねらう品質、設計図により定められた品質

製造品質:できばえの品質、適合の品質

  • 設計品質を目標に製造したお客様に提供される製品の品質
  • お客様の要求品質や設計品質に対してどのくらい適合しているかという尺度で品質の良否を判断

顧客品質:お客様にとっての品質

  • お客様の要求品質(お客様から求められる品質)に加え、使用品質(使って分かる品質)が含まれる品質

品質管理とは

図面通りにモノを作ることは、簡単ではありません。モノづくりでは、製品の3要素QCD(品質、コスト、納期)のバランスと製造の4M(ヒト、モノ、設備、方法)を考慮します。図面通りに製品を作るだけでなく、モノづくりのための様々な活動が品質管理です。

品質管理活動における問題解決の流れ

加工後のバラツキが大きい原因がヒトなら教育・訓練や加工ジグ作成。材料のバラツキなら同一の製造ロットで同じ材料を使います。問題解決の一般的な流れは以下の通りです。

  • 事実(何が起きているのか)を確認する。
  • 何が問題なのかを明らかにする。
  • 問題を解決する方法(対策)を考える。
  • 対策に時間がかかる場合、すぐにできることと長期的に取り組みを分けて進める。
  • 対策の効果を確認する。

品質管理活動に求められていること

品質管理は、「お客様に提供する製品の品質をより良いものにする」「製品の品質を一定に保つ」ことから始めます。良いものとは良い品質、お客様に満足頂ける製品です。製品品質を一定に保ち、プロセス(工程)により「お客様に提供できるもの」だけを販売するための活動が、品質管理活動です。

良い製品だけ販売するなら検査すればよいと考えがちですが、検査を増やしても品質は良くなりません。不良品を作ることは、ムダなコストです。「最初から良いものを作る(不良品を作らない)」「材料仕入れから、製造、販売まで、品質を一定に保てる仕組みを作る」ためには、各工程の担当者、現場、会社全体の協力と取り組みが必要です。

品質管理の基本:PDCA

品質管理の基本となる仕事の進め方は、PDCAです。

  • Plan(計画):計画を立てる。
  • Do(実行):計画を実行する。
  • Check(確認):計画通り進んでいるか確認する。
  • Action(改善):計画通り進んでいない、うまくできていないなら改善。

PDCAは、まずやってみることが重要です。やってみて、チェックして、またやってみる。短期間の小さいPDCAから始めると続けやすく、小さなPDCAを積み上げることで、PDCAを回すことが習慣になり、標準化や横展開ができるようになります。

改善する場合、何をすればよい(手段)、どうしたい(目標)、いつまでに(期限)は分かっていることが多いものです。「まずは行動、結果を確認、次の目標設定」と進めることは改善活動そのものです。

個人や現場(チーム)でPDCAを回すと、業務改善やムダ・ムラ・ムリを減らせるようになります。最初から大きな成果を求めるのではなく、小さなPDCAの成功体験が大切です。小さなPDCAから始め、段階的により大きな目標やチーム目標などに取り組みます。

改善のポイント:ムリ・ムラ・ムダをなくす

改善活動には、問題や課題に取り組む場合と、製品に要求される品質を確保する場合とがあります。製品やサービスの品質を確保するためには、普段の仕事のやり方を改善します。

改善の着眼点に「ムリ・ムラ・ムダ(3ム、ダラリとも)を無くす」があります。品質確保について問題意識を持ち、普段の作業のムリ・ムラ・ムダ(例:仕事のやり方にムリがある、前工程品の選別作業が必須)を探し、原因と対策を考え、実行します。

総合的な品質(QCDとPSME)

QCDとは、「Q(Quality):品質」「C(Cost):コスト、原価」「D(Delivery):納期」のことで、どれが優先というものではなく、QCDのバランスが重要です。

PSMEとは、「P(Productivity):生産性」「S(Safety):安全」「M(Morale、Moral):モラル」「E(Environment):環境」のことです。モノづくりでは、品質と同様に生産性も重視されます。しかし、より重要なのは働く人の安全(S:Safety)やモラル(M:Moral)であり、人を全ての基本におき、その範囲内で諸活動を実施するという考え方があります。モノづくりに関わる全ての人々がケガをせず、健康を維持し、かつ人間としての尊厳も大切にしつつ、安全を確保する活動を会社全体で行うということです。安全や健康は、労働安全衛生法などの法的な要求でもあります。

製品のライフサイクルにわたって(製造、販売、使用、廃棄まで)、使用者を含む全ての関係者の安全を保証する活動も大切です。環境(E:Environment)に関する活動も重視されており、PL法やRoHSなどがあります。

品質を優先する考え方

品質を優先するとは、「良い品質の製品(サービス)提供を、短期的な利益追求や売上げ拡大よりも優先する」ことです。製品の品質以外にも、「コスト低減」「在庫を減らす」「納期を守る」ことも必要なことです。しかし、肝心の製品品質が悪いままでは、「コストが上がる」「在庫が増える」「納期が遅れる」という結果になります。

製品を提供する側の論理(短期的な利益追求や売上拡大など)を優先するのではなく、製品を購入し実際に使うお客様から見た論理を優先しようとする考え方をマーケットイン、製品提供側の論理を優先する考え方をプロダクトアウトといいます。

品質を維持する活動と改善する活動

作業者や作業現場で品質改善活動には「良い状態を維持する活動」と「製品の品質や製品を作る仕事の質をより良いものに改善する活動」の2つあり合わせて管理活動といいます。

品質を維持する活動とは、「定められたルールや作業手順を守り、決められた作業を続ける(製品を安定かつ継続して作ること)」ことです。同じように作業を続けることで、どこに問題があるのか分かり、得られた結果が対策によるものなのか判断できます。

一定の品質の製品を安定かつ継続して作るためには、適正な標準(作業手順や作業の良否判断基準)が必要です。適正な標準を定めたら、作業者に標準に従い作業や判断をする教育をしてヒトによる品質のバラツキを減らし一定の範囲内にできるように訓練します。

品質を改善する活動には「製品の品質をより良いものにする」「後工程がやりやすくなるように仕事のやり方を変える」などがあります。作業を効果的かつ効率的に行うため、作業者の力量を教育・訓練(OJT含む)により向上させるのも品質改善の活動です。

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重要度と緊急度による重点指向の考え方

やることが増えてくると、何を優先するか、何に重点をおくか、選択と集中が必要となります。重点指向とは、より重要なものに焦点を絞り活動することです。

重要度と緊急度

下図は重要度と緊急度による分類です。

  高い ⇐ 緊急度 ⇒ 低い

高い

重要度

低い

分類A

重要かつ緊急

分類B

重要だが緊急ではない

分類C

緊急だが重要ではない

分類D

重要でも緊急でもない

図1 重要度と緊急度による分類イメージ

分類A「重要かつ緊急」は当然やることです。

ポイントは分類B「重要だが緊急ではない」をどうやって進めるかになります。

現場での改善活動は、目先のできることから改善しようとなりがちです。しかし、人・物・金・時間には限りがあります。「重要だが緊急ではない」ことは解決が困難でも全体への影響が大きいため、優先順位を上げて取り組むことが会社全体にとっては効果的です。

割り込み作業への対応

いくつも仕事を抱え、突発的な依頼にも対応しながら約束通りに仕上げるマルチタスクに見える人には、次のような当たり前や工夫があります。

  • 1度に1つのことに集中し別の作業を同時並行で進めない。
  • 1つの作業を小さな作業に分ける。
  • 作業に応じた時間配分:考えごとは集中できる時間帯、作業はある程度疲れていてもできる時間帯や隙間時間に処理する。

割り込みによる作業中断時の工夫:中断する作業を再開しやすいようにしてから対応する。中断作業に時間がかかる場合には、3分待ってと伝えてから中断作業を進める。

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標準化とは

モノづくりの標準化

作業手順や製造方法が定着し、一定品質の継続生産ができるようになると、この作業手順や製造方法を標準として、以後、この標準化した作業手順や製造方法により生産します。

伝票、点検表、チェックリストなどの書式作成も標準化の1例です。モノづくり(組み立て)の標準化では、品質降雨定図や作業手順書があります。

製品の組立手順を定めると、組み立て間違いを防ぎ、組み立てた製品の品質を一定範囲に収めることができます。

  • 品揃え:作業指示書に指定されている部品を揃える
  • 組み立て:作業指示書の順に部品を組み立てる
  • 工程内検査:作業指示書の通り実施する
  • 完成検査:検査員に組み立て品の検査を依頼する

なぜ標準化をするのか

業務(作業)手順がないと各自が自分のやり方で作業を始めてしまい、見込み以上に時間がかかる、成果物が安定しないなど品質も納期も不安定になります。

標準化とは、合理的な方法(作業標準)を定め、それを全員が守ることです。標準化後も定期的に見直し「標準を作る・守る・改善する、標準化の継続的な改善」が必要です。

4M(ヒト、モノ(材料)、設備、方法)変更時は、標準を見直すよい機会です。

規格と標準

標準には、業務に関する標準と、品物に関する標準(規格)があります。標準化を進めると、品質の安定、作業ミスの防止、作業の安定化を期待できるようになります。規格には、製品の基本構造を定める部品規格、設計規格、材料規格などがあります。

標準化とPDCA

作業手順や製造技術などが確立されてくると、同じ計画が繰り返されるようになります。こうなったら、PDCAの計画を標準(Standard)化に置き換え、標準の教育・訓練、標準の遵守、評価、処置というSDCAのサイクルを回していきます。

標準化しても「標準と異なるやり方で作業した」「作業者や現場の環境や作業条件が変わった」などの理由で問題が発生します。再びPDCAを回して標準を改善します。

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検査で品質は良くならない理由

お客様が満足する品質の製品を提供するためには、工程管理と検査が重要です。

工程管理では、工程通り確実に実施しているかを確認します。

検査では、製品を事前に確認(チェック、判定)し、不適切なモノを取り除きます。検査基準(検査規格)を満たしていないと検査不合格といい、要求事項(規格など)を満たしているものを適合品、満たしていないものを不適合品といいます。

3段階の検査と検査の仕方・種類

検査は一般的に次の3つの段階があります。

  • 原材料や一部加工品などを受け入れるときに行う受入検査(購入検査)
  • 一連の工程の中で実施する工程内検査(中間検査)
  • 完成した製品について行う最終検査(出荷検査)

検査の仕方で分類すると、次の様になります。

  • 対象全てを検査する全数検査
  • ロットからサンプルを抜き取ってロット全体の合否を判定する抜取検査
  • 自らは測定せず提出された資料だけで合否を判定する無試験検査(管理検査)

検査の種類も次の様に様々です。

  • 長さ、重さ、性能、有効成分量など品質特性を計測機器を用いて計測する検査
  • 手触り、味覚、音、視覚など人間の五感によって計測し判定する官能検査
  • 計測により対象物の機能が失われてしまう破壊検査

検査で品質は良くならない理由

検査不合格品が多いことは製品品質が悪いということです。検査を増やしても不良品がお客様に届くのを減らすだけで、肝心の製品品質は悪いままです。「不良品を作らないようにする」ことなしに製品品質は上がらないのです。

検査と品質情報のフィードバック

検査は良否判定に基づく後工程への品質保証です。検査で得た品質情報を前工程にフィードバックしていくことで、プロセスの良し悪しを判定し改善につなげていくことも大切です。

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まとめ

品質というとモノづくりやモノの品質と考えがちですが、品質や品質管理の考え方は、モノづくりに限らず、様々な業界や会社で仕事をする場合にも役に立つ考え方です。

そこで、モノづくりメーカーとして、20名程度で、簡単な加工・組立、出荷をしている現場向けに、1回30分の教育5回分のテキストを作成しました。

ここでは、以下の項目で品質や品質管理について説明しました。

  • 製品(モノ)やサービスの品質とQCD
    • お客様にとって良い品質とは
    • モノづくりのおける3つの品質
  • 品質管理とは
    • 品質管理活動における問題解決の流れ
    • 品質管理活動に求められていること
    • 品質管理の基本:PDCA
    • 改善のポイント:ムリ・ムラ・ムダをなくす
    • 総合的な品質(QCDとPSME)
    • 品質を優先する考え方
    • 品質を維持する活動と改善する活動
  • 重要度と緊急度による重点指向の考え方
    • 重要度と緊急度
    • 割り込み作業への対応
  • 標準化とはモノづくりの標準化
    • なぜ標準化をするのか
    • 規格と標準
    • 標準化とPDCA
  • 検査で品質は良くならない理由
    • 3段階の検査と検査の仕方・種類
    • 検査で品質は良くならない理由
    • 検査と品質情報のフィードバック
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はかせ

サイト管理人で記事も書いているモノづくり会社の品証の人
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