ISO9001(JISQ9001)品質マニュアル類の改訂を進めたり、内部監査などを利用して会社全体の品質マネジメントシステムを改善するヒントになるのではと思い、JISQ9100を読み進めています。
ISO9100(日本語版はJISQ9100)は、航空、宇宙及び防衛分野向けの品質マネジメントシステム(ISO9001)のセクター規格です。
日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016
品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項
Quality management systems- Requirements for aviation, space and defense organizations
ここでは、ISO9100(JISQ9100:2016)とISO9001(JISQ9001:2015)との違いについて、「7 支援」について説明します。
ISO9100の「7 支援」
ISO9100(JISQ9100:2016)の「7 支援」において、ISO9001(JISQ9001:2015)に追加されている内容を説明します。
ISO9100の「4 組織の状況」において、ISO9001に追加されているのは、以下の箇条です。
- 7.1.5 監視及び測定のための資源 7.1.5.2 測定のトレーサビリティ
- 7.2 力量 ※注記のみ追加
- 7.3 認識
- 7.4 コミュニケーション ※注記のみ追加
- 7.5 文書化した情報 7.5.2 作成及び更新 ※注記のみ追加
- 7.5.3 文書化した情報の管理 7.5.3.2
7.1.5 監視及び測定のための資源 7.1.5.2 測定のトレーサビリティ
ISO9100の「7.1.5 監視及び測定のための資源」の「7.1.5.2 測定のトレーサビリティ」に追加されている部分2箇所を引用します。
1つ目は、以下に関することが要求されています。
- 監視機器及び測定機器の回収についてのプロセス
- 監視機器及び測定機器の具体的な登録(管理)情報(機器の種類、識別、設置場所、校正又は検証の方法・頻度・判定基準)
組織は、校正又は検証を必要とする監視機器及び測定機器の回収に対するプロセスを確立し、実施し、維持しなければならない。
組織は、これらの監視機器及び測定機器の登録を維持しなければならない。登録には、機器の種類、固有の識別、配置場所、校正又は検証の方法、頻度及び判定基準を含めなければならない。
引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より
2つ目は、以下に関することが要求されています。
- 適切な環境条件下での監視機器及び測定機器の校正又は検証
監視機器及び測定機器の校正又は検証は、適切な環境条件の下で実施しなければならない(7.1.4 参照)。
引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より
当然と言えば当然の内容ではありますが、これらが適用される範囲(例えば自社だけではない)にも注意が必要です。
7.2 力量
ISO9100の「7.2 力量」の「7.1.5.2 測定のトレーサビリティ」は、注記が追加されています。当該部分を引用します。
以下について要求されています。
- 力量のレビューを定期的に行うこと
注記1 必要な力量の定期的なレビューを考慮することが望ましい。
引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より
検討が必要と考える項目を列挙します。
- 力量のレビューが要求されているので、力量を評価すればよいだけではない。何をもってレビューとするか。
- 定期的とあるので、力量の維持や向上についての継続すること(連続性)についての考慮が必要となってくる。
- 自社だけでなく協力会社も対象となる。
新製品開発の様に、営業、技術、製造、保管・出荷、品質管理など複数の部署について、関連性を含めて考えることが必要になると考えています。
7.3 認識
ISO9100の「7.3 認識」に追加されている部分2箇所を引用します。
e) 品質マネジメントシステムに関連する文書化した情報及びその変更
f) 製品又はサービスの適合に対する自らの貢献
g) 製品安全に対する自らの貢献
h) 倫理的行動の重要性
引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より
具体的に求めるレベル(実現するレベル)にもよりますが、全社員に対し、上記引用部分のe)からf)の4項目について認識させることは、一朝一夕にはいかないことです。
「ISOの要求事項を満たすために何かをする」のではなく、「お客様に提供する製品の品質を保証をするために作業手順を定め実施する」といった進め方が必要になってくると考えています。
現在ISO9001の認証取得をしていない場合でも、ISO9001の認証を取得し運用できるようになってから、ISO9100に移行(レベルアップ)することが、現実的な方法だと考える理由の1つです。
7.4 コミュニケーション
ISO9100の「7.4 コミュニケーション」は、注記が追加されています。当該部分を引用します。
「望ましい」となっていますが、以下について要求されています。
- QMSに関する内部及び外部からのフィードバックを得られるコミュニケーション
注記 コミュニケーションには、品質マネジメントシステムに関連する内部及び外部からのフィードバックを含むことが望ましい。
引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より
コミュニケーションに、QMSについての内部及び外部からのフィードバックを含めることが望ましいことは理解できます。
理解できますが、具体的にどうやってフィードバックを得る仕組みを実現するかは、会社や関係者にもよりますが、簡単ではないと考えています。
別の視点では、内部及び外部からのフィードバックを得られるような状態にあるということは、QMSのレベルがある程度以上になっているとも言えそうです。
7.5 文書化した情報 7.5.2 作成及び更新
ISO9100の「7.5 文書化した情報」の「7.5.2 作成及び更新」は、注記が追加されています。当該部分を引用します。
以下について要求されています。
- 文書の承認者、承認方法が決まっていること
注記 承認は、組織の決定どおりに、関連する文書化した情報の種類に対して、(承認)権限をもつ人々及び承認方法が特定されていることを意味する。
引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より
様々な文書(文書化した情報の種類)の承認、つまり、発行された文書に関する責任の所在が明確になっていることが求められているということです。
文書化した情報のエビデンスとしての客観性を確実にするための要求と考えています。
7.5.3 文書化した情報の管理 7.5.3.2
ISO9100の「7.5.3 文書化した情報の管理」の「7.5.3.2」に追加されている部分2箇所を引用します。
1つ目は、以下に関することが要求されています。
- 廃止した文書が誤って使われないようにすること
e) 廃止された文書化した情報を何らかの目的で保持する場合、除去又は適切な識別若しくは管理による誤使用の防止
引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より
文書化された情報は、電子化されてしまうと1つのデータ・ファイルになってしまうので、それが廃止されていたことを知らずに参照してしまう様なことが起きる可能性は否定できません。
例えば、廃止された文書(旧版)を使うことの内容、最新版の文書を使う仕組みとすることが要求されていると考えています。
2つ目は、以下に関することが要求されています。
- 電子化した情報のデータ保護プロセス(喪失、変更、改変、破損など)を定めること
文書化した情報を電子的に管理する場合、組織は、データ保護プロセスを定めなければならない(例えば、喪失、無許可の変更、意図しない改変、破損、物理的損傷からの保護)。
引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より
2つ目の要求は、トップマネジメント(社長)が情報管理の方針(目的や方向性など)を決めないと進まない要求だと考えています。
詳細は説明しませんが、以下の様に考えています。
- 情報セキュリティについては、ISMS認証取得のプロセスが参考になります。
- リスクアセスメントなどは、形式的ではなく現実的な対応が求められている。
情報セキュリティについての要求としては当然のことですが、これをどのように自社及び協力会社を含めた仕組みとしていくかは、かなり大変かと思いますが、情シスのマネージャ経験のため私が心配し過ぎなのかもしれません。
参考:日本産業標準調査会の「JIS検索」
JIS規格は、ネットで見ることができます。
日本産業標準調査会(JISC)の「JIS検索」のリンク先を紹介します。
検索の仕方は、以下のリンク先を参照してください。
まとめ
ISO9001(JISQ9001)品質マニュアル類の改訂を進めたり、内部監査などを利用して会社全体の品質マネジメントシステムを改善するヒントになるのではと思い、JISQ9100を読み進めています。
ここでは、ISO9100(JISQ9100:2016)とISO9001(JISQ9001:2015)との違いについて、「7 支援」について以下の項目で説明しました。
- ISO9100の「7 支援」
- 7.1.5 監視及び測定のための資源 7.1.5.2 測定のトレーサビリティ
- 7.2 力量
- 7.3 認識
- 7.4 コミュニケーション
- 7.5 文書化した情報 7.5.2 作成及び更新
- 7.5.3 文書化した情報の管理 7.5.3.2
- 参考:日本産業標準調査会の「JIS検索」