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モノづくりの新入社員教育:社会人としての心構えから仕事の進め方

小さなモノづくりメーカーの新入社員教育 教育・訓練

新卒や転職で新しいメンバーとなった新入社員には、まさに各社各様の新入社員教育が行われます。

今の時代、すでにインターンなどで全く初めてではない場合もありますが、それでもお客様に近い立場から社員になる際には、良い意味での緊張感があるのではないでしょうか。

同じ様な業界や職種からの転職でも、全く同じ様に仕事をしていることはありませんし、前職はこうだったというよりは、新しい職場はどうなっているのかを把握していくことが必要です。

ここでは、モノづくりメーカーを想定し、社員として現場のメンバーとして活動していくために必要な基本的な教育について説明します。

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新入社員教育のねらい(目的)

入社式や会社案内などがすむと新入社員教育が始まります。

ISOの教育・訓練であれば、教育の目的・目標、実施方法、評価方法を明らかにして、教育後有効性の評価を行います。

ここでは、新入社員にはじめて行う教育について説明します。

新入社員教育の目的

新卒や転職で新しいメンバーとなった社員に対し、モノづくりの基本や考え方について説明し、仕事に対する考え方や取り組み方についてのイメージを共有する。

教育にあたっての注意事項

教育にあたっては、新しいメンバーの現在の不安や抱負、様々な実務経験、成功や失敗の体験について話すことで、円滑なコミュニケーションを実現する助けとなるよう配慮する。

教育の目標(教育の有効性確認)

教育終了時に、新社員各自が、現時点でできている事とできていない事を明確にすることで、今後の社会人として、社員としてのレベルアップ(成長)に必要な基本な知識やスキル(力量)の習得イメージを描けることを目標にする。

新入社員の知識や経験の確認(現在の力量の推測)

まずは、自己紹介や事前に課題を提示して3分間スピーチを行う場合もあると思います。

今回は初めての新入社員向け教育なので、自己PR(アピール)の場とするよりは、教育を進めるうえで必要な名前の確認程度で、講師側が教育内容についての知識レベルを確認してもよいと考えています。

新入社員教育の場と考えると、教師の自己紹介や教育内容の説明をしながら緊張感をほぐす意味合いの方が強いとも考えています。

私の場合であれば、講師の自己紹介(氏名、やっている仕事の概要、勤続年数程度)を簡単にした後、教育内容についての知識や経験をザックリと聞いていきます。これには、誰に対し説明すればよいかなど教育の進め方を決めるための意味合いもあります。

確認する内容の例を列挙します。

  • 氏名
  • これまでの経験
  • モノづくりの経験の有無
  • ISOや品質管理を知っているか

社会人としての心構え

同じモノを作っているように見えても、その作り方は会社によって様々です。

各社好き勝手に作っているわけではなく、より良いモノづくりを目指した結果の積み重ねにより差が出てきているとも考えられます。そこには、より良いモノづくりを目指すために求められる心構えと行動があります。

モノづくりは一人ではできません。一人一人が自分の仕事に責任を持ち、100点満点の仕事をすることが必要です。

なぜ100点満点が求められるか、また、必要なのかモノづくりを料理を例に説明します。

1つのプロセスにはインプットとアウトプットがあります。下図は、材料がインプットであり、材料準備、調理、盛付をして、最終的なアウトプットが料理(オムライス)になります。

料理のプロセス:材料準備>調理>盛付

料理のプロセス:材料準備>調理>盛付

図 料理のプロセス:材料準備>調理>盛付

材料準備、調理、盛付の各プロセスを完全に行うこと(100点満点)が、料理の品質を維持するために必要かつ重要なことです。

材料準備のミスは、後工程の調理や盛付でカバーできません。調理や盛付にミスがあっても同様で、完成した料理の品質(味や見た目)が落ちます。

つまり、複数のプロセスによって作り出される製品の品質は、次式のように各プロセスの掛け算で作られます。足し算ではないことに注意してください。

(料理の品質)=(材料準備)×(調理)×(盛付)

各プロセスを10点満点とすると、満点は(掛け算なので)1,000点です。

各工程が9点なら、次式のように729点にしかなりません。

(料理の品質)=(材料準備)×(調理)×(盛付)=9×9×9=729

1,000点満点のオムライスを頼んだのに出てきたのは729点。お客様は満足すると思いますか?

1人ではできないモノづくり。チーム仲良くとは言いませんが、モノづくりの前に社会人としても必要な心構えや求められる行動もあります。

心構えや行動というと、何か難しく大変そうに思えるかもしれませんが、実際は当たり前に思うことや、こんな簡単なことでいいのといったことが多いものです。

実際にやってみて続けていくうちに、なぜ大切なのかに気づく心構えや行動もあると思います。そして、個人がレベルアップすることでチームもレベルアップしていきます。

仕事の進め方と心構え

モノづくりの基本的な心構えと行動について説明します。

具体的には、PDCA、報連相(報告・連絡・相談)と3Sについて説明します。

計画的な仕事の進め方(PDCA)

品質管理の基本となる仕事の進め方は、PDCAです。

  •    Plan(計画):計画を立てる。
  •    Do(実行):計画を実行する。
  •    Check(確認):計画通り進んでいるか確認する。
  •    Action(改善):計画通り進んでいない、うまくできていないなら改善。

PDCAは、まずやってみることが重要です。やってみて、チェックして、またやってみる。

短期間の小さいPDCAから始めると続けやすく、小さなPDCAを積み上げることで、PDCAを回すことが習慣になり、標準化や横展開ができるようになります。

改善する場合、何をすればよい(手段)、どうしたい(目標)、いつまでに(期限)は分かっていることが多いものです。「まずは行動、結果を確認、次の目標設定」と進めることは改善活動そのものです。

個人や現場(チーム)でPDCAを回すと、業務改善やムダ・ムラ・ムリを減らせるようになります。最初から大きな成果を求めるのではなく、小さなPDCAの成功体験が大切です。小さなPDCAから始め、段階的により大きな目標やチーム目標などに取り組みます。

報連相(報告・連絡・相談)

モノづくりに限らず、仕事は1人でやっているわけではありません。

様々な人に関わりながらそれぞれの仕事を責任をもって行い、最終的な製品となっていきます。

複数の人と人とが関わる以上、コミュニケーションが必要となりますが、報告・連絡・相談(ほうれんそう)はコミュニケーションを円滑にする潤滑剤の様な働きをします。

ここでは、報告・連絡・相談(ほうれんそう)のポイントについて説明します。

報告のポイント

指示された業務を終えたら直ぐに、指示・命令した人に結果を報告します。

指示された期限(納期)を守れそうもない場合、ミスや問題が発生したら速やかに報告し、上長や責任者の指示を仰ぎます。

報告は結論から要点を述べます。

報告しやすい雰囲気作りも必要です。

連絡のポイント

連絡とは、共有すべき情報を関係者に知らせることで、「自分の意見や推測を入れない」「連絡先(相手)、内容、重要度、緊急度など、その時の状況を考慮して適切な方法を選ぶ」ようにします。

連絡を密にすることで、問題や事故を未然に防いだり、問題による影響を最小限にすることができます。連絡内容は、事前に検討・整理しておきます。

相談のポイント

日々の業務で予想外の問題が発生し自分では判断できないこともあります。この場合、一人で考え込まずに、速やかに上司や先輩に相談します。

相談する場合には、何を相談したいかを明確にし、自分の考えを整理し必要に応じ資料などを準備します。

相談も、報告と同様、相談を受ける側の姿勢や態度が重要です。

まずは3S

5Sとは、以下の5つのことです。

  • 整理:必要な物と不要な物に分け、不要な物は捨てること。
  • 整頓:必要な物を決められた場所(定位置)に置くこと。いつでも取り出したり、使えたりする状態にしておくこと。
  • 清掃:常に清掃をして、きれいな状態に保つこと。
  • 清潔:整理、整頓、清掃を維持すること。
  • 躾(しつけ):決められたことを正しく守る習慣が身につくこと。

まずは、基本となる3S(整理・整頓・清掃)を徹底することが大切です。

はかせ
はかせ

5Sのすべてに初めから取り組み、徹底させることは意外に難しいものです。

3S「整理、整頓、清掃」とは、具体的には次のことに取り組むことです。

  • 不要な物を捨てる整理
  • 必要な物を定位置で管理する整頓
  • きれいな状態を維持する清掃

3Sがある程度徹底された状態になると、残り2つのSについてもある程度できている状態になってきます。

  • ある程度清潔になっている。
  • 整理、整頓、清掃、清潔をある程度のレベルを維持することのできる躾ができている。

5つのS全てのレベルを高くしていくことが目標だとしても、これから5Sに取り組む場合や、なかなか5Sが徹底されていないレベルから取り組む場合には、まず「整理、整頓、清掃」の3つのSを徹底していくのが現実的な取り組み方です。

また、5S活動はレベルを高くすることよりも、継続すること、さらに続けて習慣化するまで継続することが重要です。

以下、整理・整頓・清掃ついて詳しく説明します。

整理とは:5Sの始めは整理から

「整理」とは、必要な物と不要な物を分け、不要な物を捨てることです。

現場に「前回いつ頃使ったのか分からない物」「誰が管理しているのか分からない物」「何に使うのか分からない物」がありませんか?

整頓とは

整理の次は整頓です。

「整頓」とは、いつでも誰でも、必要な物が必要な時に、すぐ取り出せるように定位置を決めて保管することです。

定位置:定位置とは、必要な物を保管する場所です。すべての物に置き場所を付けます。効率的に動ける作業動線を考慮し、よく使う物や重量物は使用場所の近くに、使用頻度の低い物は保管場所をまとめるなどして、レイアウトを決めていきます。

定量:定量とは、物の有無と量が見た目ですぐに分かる状態にすることです。工具や治具が定位置になければ、使用中であることが分かります。使用する部品や消耗品などは、保管する最大量か最小量を決めると現在の使用状態(残量)がすぐに分かります。

定方向:定方向とは、物を置く向きを一定にすることです。向きを揃えると、取り出しや戻す作業がスムーズになります。定位置に違う物があった場合に気づきやすくなります。

表示:表示の対象は、定位置に置く物です。例えば、定位置に置く全ての工具に工具名を入れ、保管場所にも名前を明記します。表示があれば、その物を使わない人でも、表示のある物を定位置から取り出し、戻せます。

清掃とは

清掃とは、ゴミやホコリがない、機械や道具などが汚れていない状態を維持することです。

清掃は「毎朝10分間全員で清掃する」など定期的に行います。

最初は大きなゴミから、最終的にはホコリや汚れを取るところまで段階的に進めます。

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現場でのコミュニケーション:8つのマナー

一緒に仕事をするということは、チームで仕事をするということでもあります。

つまり、チーム内はもちろんチーム外の人ともコミュニケーションが取れなければなりません。コミュニケーションというと難しそうですが、いわば社会人としてのマナーの様なものです。

はかせ
はかせ

マナーとは「自主的に行う集団生活上一般的な行い」、躾(しつけ)とは「親が行う知識不足の子供への教え」のことです。

モノづくりは多くの人が各々の役割を果たすことで、材料が部品となり組み立てられ1つの製品となります。会社のルールを守るのは当然ですが、常識的に守らなければならない決まり事(マナー)があります。マナーとは、人間関係(コミュニケーション)を円滑な状態に維持するための暗黙の了解のようなものです。

ここでは、8つのマナーを紹介します。自分だったらどう思うか想像してみると分かりやすいと思います。

社会人としての自覚と責任

社会人としての自覚とは、製品の対価としてお金を頂き働いているプロとしての自覚を持ち、与えられた仕事を責任をもって行い自分の役割を果たすことです。

仕事は一人ではできないため、会社やチームの一員であることを常に意識することが重要です。チームの一員として認められるには、信頼されることが必要です。

時間を守る(時間厳守)

決められた時間や約束した時間を守ることは、社会人としても必須です。

1人時間に遅れると全体の仕事が遅れ、会社やチームでは大きな損失となり、納期を守れなければお客様に迷惑がかかります。

このため、「開始時間の5分前には持ち場につく」「担当業務を開始時刻にスタートできるようにする」ことを心がけます。

間に合えばよいと考えるのではなく、相手を待たせないようにしたり、休憩時間と就業時間のけじめをつけたりします。

挨拶をする

挨拶には「心を開いて相手に近づいていく」という意味があります。

挨拶は現場やチームでの良好なコミュニケーションの最初の一歩です。

自分から「おはようございます。お疲れさまです。こんにちは」などの挨拶をする。

呼ばれたら「はい」と返事をします。

言葉遣いに気をつける

言葉遣いはその人の考え方を表します。

上から目線や乱暴な言葉遣いでは、良い人間関係を作り良好なコミュニケーションを保つのは難しいのです。

「上司や先輩に丁寧な言葉を使う。年下の人に対しても呼び捨てにせず、さん付けで呼ぶ」など、言葉遣いに注意します。

はかせ
はかせ

言葉遣いに限りませんが、注意してくれる人がいることは恵まれたことだと考えています。注意することは気持ちのよいことではありませんので、変わらなければ注意しなくなります。

きちんとした服装をする(身だしなみ)

身だしなみは、社会人としてはもちろん、安全を確保するためにも重要です。

「清潔で相手に不快感を与えない」、「定められた服装を決められたとおりに着用する」ということで、当たり前のことでもあります。

服装の乱れは心の乱れ、だらしない服装は気が緩み、作業ミスやケガ・事故の原因にもなります。

公私混同をしない

公私混同とは「私的な用件で会社の設備、備品などを使う」、「部下や後輩に私的な指示を出す」、「業務時間中に私用メールなどの私的行動をする」ことです。

公私混同は、職場の雰囲気や規律を乱す原因の1つです。公私混同をしない・させない仕組みづくりが重要です。

整理・整頓をする

整理・整頓は、品質管理の基本です。

ロッカーや机などの備品や作業服などは、会社からの貸与品であり自分の物ではありません。

貸与品は、紛失だけでなく劣化や損傷などが分かるようにします。

環境に配慮する

環境に配慮するといっても特別なことではありません。

「ゴミを分別して捨てる」、「ゴミの量をなるべく少なくする」ことです。

分別すればゴミは再利用できる資源になります。

ゴミの分別や整理・整頓を進めることは快適な環境づくりにもつながります。

教育を受けてみて自分自身の変化を振り返る

ここまで、教育を受けてみて、教育前と今とで何か変わったな、こんなことを知ったなとか書き出してみてください。

今後、同じような内容の教育を受ける機会があったとしても、今思っていることや感じていることは、今しか分からないことです。

初めてだから感じることができたことが、今感じていることです。

書き出せば、残ります。残っていれば、振り返ることができます。

実際に振り返るかどうかは別にして、振り返る機会は、今夜寝る前かもしれませんし、週末だったり、1ヶ月後、3ヶ月後とかあります。もしかすると、来年の新入社員教育で教えているのはあなたかもしれません。

そんな時に、今日感じたことをメモでもいいので残していればきっと役に立ちます。

まとめ

新卒や転職で新しいメンバーとなった新入社員には、まさに各社各様の新入社員教育が行われます。

同じ様な業界や職種からの転職でも、全く同じ様に仕事をしていることはありませんし、前職はこうだったというよりは、新しい職場はどうなっているのかを把握していくことが必要です。

ここでは、モノづくりメーカーを想定し、社員として現場のメンバーとして活動していくために必要な基本的な教育について以下の項目で説明しました。

  • 新入社員教育のねらい(目的)
    • 新入社員教育の目的
    • 教育にあたっての注意事項
    • 教育の目標(教育の有効性確認)
  • 新入社員の知識や経験の確認(現在の力量の推測)
  • 社会人としての心構え
  • 仕事の進め方と心構え
    • 計画的な仕事の進め方(PDCA)
    • 報連相(報告・連絡・相談)
  • まずは3S
    • 整理とは:5Sの始めは整理から
    • 整頓とは
    • 清掃とは
  • 現場でのコミュニケーション:8つのマナー
    • 社会人としての自覚と責任
    • 時間を守る(時間厳守)
    • 挨拶をする
    • 言葉遣いに気をつける
    • きちんとした服装をする(身だしなみ)
    • 公私混同をしない
    • 整理・整頓をする
    • 環境に配慮する
  • 教育を受けてみて自分自身の変化を振り返る
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