モノづくりメーカーの新メンバーとして仲間に加わると、新入社員研修を受けます。
まずは、いわゆる人事や総務から会社員として最低限知っていないと困るルールや手続きから始まり、その会社の基本的な社員教育、そして、営業や技術など各職場向けの教育と段階的に進んでいきます。
新入社員計画の内容や進め方は、それこそ会社により様々です。ここでは、メーカーの社員として必要な共通知識についての新入社員研修について、テーマ別に説明します。
まずは、ISOとJISについて説明します。
ISOとJISの違い
まずは、最初の質問です。
・ISOについて知っていますか?
聞いたことがある新入社員もいると思いますが、一通りISOについて説明します。
ISO(International Organization for Standardization)とは、国際標準化機構のことで、ISOの様々な規格を作っているところです。
製品の国際標準化とは、世界中にあるどの会社で作った製品でも、ISOの規格を守って作られたモノであれば、ユーザーがどの会社の製品を買っても使えるための規格(仕様)のことになります。
ISOはモノだけではありません。モノづくりでISOと言えば、マネジメントシステムを思い浮かべる場合が多いと思います。
例えば、ISO9001はマネジメントシステム規格の1つです。
マネジメントシステム規格もいろいろありますが、QMSが基本です。
以下、代表的なのマネジメントシステム規格を列挙します。
- ISO9001 QMS 品質マネジメントシステム
- ISO14001 EMS 環境マネジメントシステム
- ISO17001 ISMS 情報マネジメントシステム
続いて、ISOとJISの違いを説明します。
JISは、日本産業規格のことです。
例えば、ISO9000シリーズのQMS(品質マネジメントシステム)であれば、
ISOの最新版は、
- 「ISO9001:2015 Quality management systems – Requirements」
ISO9001:2015に相当するJIS規格は、
「JIS Q 9001:2015 品質マネジメントシステムー要求事項」
です。
簡単に言えば、ISOを日本語化したものがJISということです。
厳密に言えば、JISのISO9001(英語版)を和訳しただけでなく、追加の説明が注記で加えられています。
ただし、ISOの審査(サーベイランスや更新審査)で、ISOの規格要求事項としては、あくまでも英語版が正になります。
JISQ9001を読んでもいわゆるISO専門用語になじみがないだけでなく、日本語も分かりやすいとは言えません。ISO規格要求事項について正確な意味を知りたいのなら、英語版を読むことをおすすめします。
ISOとJISの品質管理責任者の違い
ISOとJISの管理責任者の違いについて説明します。
ISO9001の品質は、モノの品質だけではなく経営品質といってもよい範囲となっていることに注意が必要です。このため、ISO9001は社長のリーダーシップにより全社員で取り組むこととなっています。
ISOの管理責任者
ISO9001では管理責任者というのが正しいのですが、品質管理責任者と呼ばれている場合も多いです。
ISO9001の管理責任者は社長が任命します。
管理責任者の仕事(役割)は、品質マネジメントシステム(QMS)が回っていること(品質マニュアルや関連規定通り、ISOの要求であるマネジメントレビューや内部監査だけでなく、仕事がなされていることを確認する)を管理することです。
また、ISO9001の要求事項をどのようにして実現したり実行するかは、会社が決めたルールでその会社自ら行います。責任者はあくまで社長です。管理責任者は複数いてもかまいません。ISOの審査(更新審査やサーベイランス)では、要求事項を満たしていることを確認します。少々極端ない表現になりますが、要求事項を達成するレベルは問われないともいえます。
JIS品質管理責任者
JISマークが付いていれば、その製品はJIS規格を満たした製品であるということです。
JISの場合は、JIS品質管理責任者といいます。
品質管理責任者と言う場合、JIS品質管理責任者をさすことが多いようです。
JIS品質管理責任者は、JISマーク表示制度に関する法律に従い、JISマークをつける製品(部品)の品質や管理について責任を負います。
つまり、JISマークの付いた製品の品質についての責任者は、社長ではなくJIS品質管理責任者になります。
JISとISOの違い
ISOとJISの違いは何かと聞かれれば、次の2点が大きく違います。
- ISOは自社のルール(品質マニュアル)を守ればよい。
- JISに違反することは、法律違反となる。
責任者という意味合いでは、
- ISOは管理責任者は、あくまでもQMSが回っているかどうかを確認してすることが任務であり、強制力のようなものはありません。
- 内部監査でも、品質マニュアルや関連規定に定められたルールを守っていなければ不適合になる可能性が高くなりますが、それさえもサンプリングで不適合がたまたま見つかったと考え、被監査部署の同意がなければ不適合とすることはできません。
これは、できていないこと(不適合)を見つけるのが内部監査の目的ではないので、当たり前といえば当たり前のことです。
ちなみに、内部監査は業務改善やパフォーマンス改善を目的とする場合もあります。
JIS品質管理責任者の責任は次の様になります。
- JISマークをつけた製品の品質に問題(不具合や不適合)があった場合、その責任は、社長ではなく(JISマークを付けた製品の出荷を許可した)JIS品質管理責任者が問われます。
- JISマークの付いた製品の品質に関する責任は、JIS品質管理責任者は社員であっても、社長ではなくJIS品質管理責任者が問われるということです。
最近のJISとISOとの関係
JIS規格は、日本国内だけのローカルルールであり、JISを元にISO規格が作られる例もありますが、現在は現在、ISOとの整合性を取る方向で既存のJIS規格は改訂(改正)されています。
新規の規格については、ISOが先にあり、その後JIS化される流れとなっています。
これまで、JISで国内で製造・販売してきた製品の規格について、ISO規格ができると、JISはこのISO規格に合わせた形で改訂されています。
例えば、2021年末に溶融亜鉛めっきのJISが改訂されましたが、海外プロジェクトはもちろんのこと、海外向けに部品を販売した場合でも、JISを満たしていて物の品質に問題はなくても、ISO規格を満たしていないと受け入れてもらえません。
溶融亜鉛めっきのJIS規格については、以下の記事をご参照ください。
まとめ
モノづくりメーカーの新メンバーとして仲間に加わると、新入社員研修を受けます。
新入社員計画の内容や進め方は、それこそ会社により様々です。
ここでは、メーカーの社員として必要な共通知識についての新入社員研修について、ISOとJISの違いについて以下の項目で説明しました。
- ISOとJISの違い
- ISOとJISの品質管理責任者の違い
- ISOの管理責任者
- JIS品質管理責任者
- JISとISOの違い
- 最近のJISとISOとの関係