このブログでは、20名規模のモノづくりメーカーを想定して作成した、「品質マニュアルと関連規定」やISOならではのマネジメントレビューの活用「実はやっているマネジメントレビュー」や内部監査の資料(内部監査ガイド、チェックリストの作り方)などISO9001を積極的に活用するための資料を公開しています。
ISO9001のQMS改善のヒントになればと思い、ISO9001:2015版品質マニュアルをISO9100:2016に対応させた品質マニュアルを作っていきます。
ISO9001の品質マニュアルの作り方については、以下をご参照ください。
Amazonへ:「わかりやすい品質マニュアルの作り方」
[ISO9100:2016版品質マニュアル]
5.リーダーシップ
「1.1 目的(ビジョン)」が具体的で分かりやすいと、現在地からありたい姿に向かいどの様に取り組んでいるかも見えてくると思います。
経営理念、活動指針、会社のありたい姿など、会社の目的(ビジョン)がイメージしやすいと、内部監査でもどの様な「リーダーシップ」であるのか見えてくるようです。
5.1 リーダーシップ及びコミットメント(社長の役割)
5.1.1 一般(社長のリーダーシップ)
社長は、次の事項により、品質マネジメントシステムに関するリーダーシップ及びコミットメントを実証する。
a)品質マネジメントシステムの有効性に説明責任を負う。
b)品質方針及び品質目標を定め、それらを当社の状況及び戦略的な方向性と両立させる。
c)品質マネジメントシステム要求事項を当社の事業プロセスに統合させる。(品質マネジメントシステム要求事項を会社経営の仕組みの一部として機能させる。)
d)プロセスアプローチ及びリスクに基づく考え方(4.4 参照)の利用を促進する。
e)品質マネジメントシステムに必要な資源を利用できるようにする。
f)有効な品質マネジメント及び品質マネジメントシステム要求事項への適合の重要性を伝達する。
g)品質マネジメントシステムがその意図した結果(期待した結果)を達成するようにする。
h)品質マネジメントシステムの有効性に寄与するよう人々を積極的に参加させ、指揮し、支援する。
i)改善を促進する。
j)その他の関連する管理層(部署長)がその責任の領域においてリーダーシップを実証するよう、部署長の役割を支援する。
5.1.2 顧客重視(顧客を重視すること)
社長は、顧客重視についてリーダーシップを発揮し、責任を果たすため、顧客のニーズ及び期待が満たされている程度について、顧客がどのように受け止めているか監視する。
このため、顧客要求事項及び法令・規制要求事項を明確にして顧客との約束を守り、製品・サービスの品質や顧客満足に影響する「リスクへの対策」及び「機会を生かすための活動」に取り組み、顧客満足の向上を要員に常に意識させる。
また、製品及びサービスの適合並びに納期どおりの引渡しに関するパフォーマンスを測定し、計画した結果が達成できない、又は達成できる見込みがない場合には、適切な処置をとる。
最後の一文がISO9100の要求ですが、品質保証(適合)と納期遵守の状況(パフォーマンス)を計測して、計画達成の見込みがない場合に適切な処置をとることを明確に要求されています。
5.2 方針(品質方針の決定と周知)
5.2.1 品質方針の確立(品質方針を決定すること)
社長は、次の内容を含む品質方針を決め、この品質方針に従い会社を運営する。必要な場合には、品質方針を見直す。
a)会社の目的にふさわしく、取り巻く状況を反映し、経営戦略に沿って、進むべき方向を示す。
b)品質目標を決められるように、実現しようとする内容の具体的なイメージを示す。
c)顧客要求事項及び法令・規制要求事項を満たし、顧客との約束を守る。
d)品質マネジメントシステムの改善に継続的に努めることを約束する。
5.2.2 品質方針の伝達(品質方針を周知すること)
社長は、品質方針を掲示し、要員に理解させ取り組ませる。
必要に応じて、密接に関連する利害関係者が入手できるようにする。
品質方針は、そうそう変わるものではありませんので、自社のWebサイトに公開する場合が多いようです。
5.3 組織の役割、責任及び権限(社長の役割・責任・権限、管理責任者の責任・権限)
5.3.1 社長の役割、責任及び権限
社長は、関連する役割に対し責任及び権限を割り当て、次の事項が正しく行われるように管理する。
社長は、当社の管理層(管理職、マネジメント職)から管理責任者を任命し、管理責任者に以下のa)~d)項について監督する責任及び権限を割り当てる。管理責任者は複数名でもよい。
管理責任者を複数名にする場合には、不在時や緊急時を含めた役割分担をあらかじめ定め、コミュニケーションを保つことが必要になります。
社長は、管理責任者が品質マネジメントの問題を解決するために、組織上の自由をもち、かつ、制約なく社長に接触できるようにする。
品質マネジメントに関する問題について、社長と管理責任者の役割分担だけでなく、日頃のコミュニケーションについても配慮が必要です。
責任及び権限を「表1 主要業務の責任と権限」に、組織を「組織図」に示す。
a)品質マネジメントシステムが、この規格の要求事項に適合する。
b)プロセスが、意図したアウトプット(品質目標の達成、要求事項を満たす製品の提供、顧客満足の向上など)を生み出す。
c)品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び改善(10.1 参照)の機会を把握する。
d)全社にわたって、顧客重視を促進することを確実にする。(顧客重視の考え方を要員に理解させ顧客を重視した仕事のやり方を行わせる)
e)品質マネジメントシステムへの変更を計画し実施する場合には、品質マネジメントシステムが“完全に整っている状態”を維持する(一部の変更により品質マネジメントシステム全体のバランスが崩れたり、他の部分と矛盾が起こらないようにする)。
5.3.2 管理責任者(管理責任者の責任と権限)
管理責任者は、与えられている他の責任とかかわりなく、5.3.1 a)~e)項及び次の事項に対して責任及び権限を持つ。
a)品質マネジメントシステムに関する事項について、外部関係者との連絡調整を行う。
ISO9100の場合、管理責任者を複数指名し、必要な責任と権限を明確にして分担するのが現実的かもしれません。
●:責任(主管)部署 ○:関係(関連)部署
項目 | 社長 | 品質保証 | 管理 | 技術 | 製造 | 営業 | 購買 |
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4 組織の状況 | |||||||
4.1 組織及びその状況の理解 | ● | ||||||
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解 | ● | ||||||
4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定 | ● | ||||||
4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
5 リーダーシップ | |||||||
5.1 リーダーシップ及びコミットメント | ● | ||||||
5.2 方針 | ● | ||||||
5.3 組織の役割、責任及び権限 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
6 計画 | |||||||
6.1 リスク及び機会への取組み | ● | ||||||
6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
6.3 変更の計画 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7 支援 | |||||||
7.1 資源 | |||||||
7.1.1 一般 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7.1.2 人々 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7.1.3 インフラストラクチャ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7.1.4 プロセスの運用に関する環境 | ● | ● | ○ | ||||
7.1.5 監視及び測定のための資源 | ● | ● | |||||
7.1.6 組織の知識 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7.2 力量 | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | |
7.3 認識 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7.4 コミュニケーション | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7.5 文書化した情報 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |
8 運用 | |||||||
8.1 運用の計画及び管理 | ○ | ○ | ● | ● | ● | ● | |
8.2 製品及びサービスに関する要求事項 | ○ | ○ | ○ | ● | ○ | ||
8.3 製品及びサービスの設計・開発 | ○ | ● | ○ | ○ | |||
8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理 | ● | ● | |||||
8.5 製造及びサービス提供 | ● | ● | |||||
8.6 製品及びサービスのリリース | ● | ○ | ○ | ||||
8.7 不適合なアウトプットの管理 | ● | ○ | ● | ○ | ● | ||
9 パフォーマンス評価 | |||||||
9.1 監視、測定、分析及び評価 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
9.2 内部監査 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
9.3 マネジメントレビュー | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
10 改善 | |||||||
10.1 一般 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |
10.2 不適合及び是正処置 | ● | ○ | ○ | ● | ○ | ● | |
10.3 継続的改善 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
- 注1:品質保証は管理責任者とISO事務局を含む。
- 注2:設計開発は、主に設計を担当する技術と、主に製造を担当する製造とに分けて記載しています。
- 注3:購買は、主として営業が担当すると想定しています。
まとめ
ISO9001のQMS改善のヒントになればと思い、ISO9001:2015版品質マニュアルをISO9100:2016に対応させた品質マニュアルを作りはじめました。
ここでは、ISO9100:2016版対応の品質マニュアルの以下の項目についてまとめています。
責任と権限、特に、社長と管理責任者についても適用範囲の中でどの様に分担するのかや、不在時や緊急時の対応についても事前に定め、コミュニケーションを保つ必要があります。
- 5.リーダーシップ
- 5.1 リーダーシップ及びコミットメント(社長の役割)
- 5.1.1 一般(社長のリーダーシップ)
- 5.1.2 顧客重視(顧客を重視すること)
- 5.2 方針(品質方針の決定と周知)
- 5.2.1 品質方針の確立(品質方針を決定すること)
- 5.2.2 品質方針の伝達(品質方針を周知すること)
- 5.3 組織の役割、責任及び権限(社長の役割・責任・権限、管理責任者の責任・権限)
- 5.3.1 社長の役割、責任及び権限
- 5.3.2 管理責任者(管理責任者の責任と権限)
- 5.1 リーダーシップ及びコミットメント(社長の役割)