このブログでは、20名規模のモノづくりメーカーを想定して作成した、「品質マニュアルと関連規定」やISOならではのマネジメントレビューの活用「実はやっているマネジメントレビュー」や内部監査の資料(内部監査ガイド、チェックリストの作り方)などISO9001を積極的に活用するための資料を公開しています。
ISO9001のQMS改善のヒントになればと思い、ISO9001:2015版品質マニュアルをISO9100:2016に対応させた品質マニュアルを作っていきます。
ISO9001の品質マニュアルの作り方については、以下をご参照ください。
Amazonへ:「わかりやすい品質マニュアルの作り方」
[ISO9100:2016版品質マニュアル]
「8.運用」は、ボリュームが大きいので3つの記事としています。
8.運用(行動、日々の業務)(その2)
ISO9100の設計開発に関する要求では、具体的な要求がかなり追加されています。
8.3 製品及びサービスの設計開発(製品の設計開発)
8.3.1 一般(設計開発のルールを決める)
以降の製品及びサービスの提供を確実にするために、「設計・開発管理規定」に従い、適切な設計開発プロセスを確立し、実施し、維持する。
8.3.2 設計開発の計画(設計開発の計画)
「設計・開発管理規定」に従い、設計開発のレビュー・検証・妥当性確認などを含む必要なプロセスを明確にし、そのプロセスに関する責任及び権限、必要な資源や関係者との関係などを考慮し設計開発を計画、管理し、必要な文書化した情報を保持する。
必要な場合には、設計・開発の活動を個別の活動に分割し、各活動について、作業項目、必要な資源、責任、設計の内容、インプット及びアウトプットを定める。
設計・開発の計画においては、製品及びサービスを提供し、検証し、試験し、保守(整備)する能力を考慮する。(8.1 a)のアウトプット参照)
8.3.3 設計開発へのインプット(設計開発に使う情報)
「設計・開発管理規定」に従い、機能や法令・規制などの要求事項、類似設計や当社の標準などを考慮し、設計開発する製品及びサービスに不可欠な要求事項を明確にする。
また、該当する場合には、旧式化・枯渇(obsolescence)から起こり得る結果(例えば、材料、プロセス、部品、機器、製品)を考慮する。
設計開発へのインプットは、設計開発の目的に対して、適切で、漏れがなく、曖昧でないものする。
設計開発へのインプット間の相反は解決し、これらに関する文書化した情報を保持する。
なお、設計・開発へのインプットの他の情報として、ベンチマーキング、外部提供者からのフィードバック、内部で発生したデータ及び運用中のデータも考慮できる。
設計開発の目的、インプットともその通りなのですが、現在の実力からあるべき姿(ありたい姿)になるために、段階的に目標を設定し継続して取り組むことがポイントです。
短期間(3ヵ月や半年)で達成可能な目標を設定して、あきらめずに取り組み続けることが大切です。一度回りだせば継続的改善につながります。
8.3.4 設計開発の管理(設計開発の管理)
「設計・開発管理規定」に従い、設計開発のレビュー・検証・妥当性確認を行い、設計開発のプロセスを管理し、これらに関する文書化した情報を保持する。
設計開発のプロセスを管理することで、次の事項を確実にすることができる。
a)達成すべき結果を定める。
b)設計・開発の結果の、要求事項を満たす能力を評価するために、レビューを行う。
c)設計・開発からのアウトプットが、インプットの要求事項を満たすことを確実にするために、検証活動を行う。
d)結果として得られる製品及びサービスが、指定された用途又は意図された用途に応じた要求事項を満たすことを確実にするために、妥当性確認活動を行う。
e)レビュー、又は検証及び妥当性確認の活動中に明確になった問題に対して必要な処置をとる。
f)これらの活動についての文書化した情報を保持する。
g)次の段階への移行を承認する。
設計・開発レビューへの参加者には、レビュー対象となっている設計・開発段階に関連する機能(役割)を代表する者を含める。
ISO9100では、設計開発で次の段階に移行する(進める)場合に、承認が求められています。
次の8.3.4.1は、ISO9100の追加要求事項です。
8.3.4.1 検証及び妥当性確認に試験が必要な場合には、これらの試験は、次の事項を確実にし、立証するために計画し、管理し、レビューし、文書化する。
a)試験計画書又は仕様書には、試験対象品及び使用される資源を特定し、また、試験の目的及び条件、記録するパラメータ並びに関連する合否判定基準を明確にする。
b)試験手順には、使用される試験方法、試験の実施方法及び結果の記録の方法を記載する。
c)正しい形態で、試験対象品を試験に使う(供する)。
d)試験計画及び試験手順の要求事項を、遵守する。
e)合否判定基準を満たす。
試験に使用される監視機器及び測定機器は、7.1.5に従い管理する。
設計開発完了時に、組織は、製品又はサービスの設計が全ての特定された運用条件下で仕様書要求事項を満たすことを、報告書、計算結果、試験結果などにより確実に実証する。
ISO9001でもやっているとは思いますが、ISO9100では要求事項として明確に求められています。
8.3.5 設計開発からのアウトプット(設計開発の結果)
「設計・開発管理規定」に従い、設計開発からのアウトプットが、インプットの要求事項を満たし、以降のプロセスに対し適切で、必要に応じ監視及び測定の要求事項や合否判定基準を含め、製品を安全に使用するために必要な情報をその特性を含めて明確にし、これらの文書化した情報を保持する。
設計開発からのアウトプットは、以下のことを満たすものとする。
a)インプットで与えられた要求事項を満たす。
b)製品及びサービスの提供に関する以降のプロセスに対して適切である。
c)必要に応じて、監視及び測定の要求事項、並びに合否判定基準を含むか、又はそれらを参照している。
d)意図した目的並びに安全で適切な使用及び提供に不可欠な、製品及びサービスの特性を規定している。
e)該当する場合には、必ず、キー特性を含むクリティカルアイテム、及びそれらのアイテムに対してとられるべき特定の処置を規定している。
f)リリースの前に、権限のある人(又は人々)によって承認を受けている。
製品の識別、製造、検証、使用及び保守(整備)を行うために必要なデータを明確にする。
このデータには、次の事項が含まれる場合がある。
- 製品の形態及び設計特性を定めるために必要な図面、部品リスト及び仕様書
- 適合した製品又はサービスを提供及び維持するために必要な材料、工程、製造、組立、取扱い、包装及び保存のデータ
- 製品を運用及び保守(整備)するための技術データ及び修理計画
ISO9100では、設計開発から製造、保守を含めて具体的な要求となっています。
8.3.6 設計開発の変更(設計開発の変更)
「設計・開発管理規定」に従い、要求事項への適合に悪影響を及ぼさないように、製品及びサービスの設計開発の間又はそれ以降に行われた変更を識別し、レビューし、管理する。
顧客要求事項に影響を及ぼす変更について、実施前に、顧客に通知するための基準を含むプロセスを必ず実施する。
設計開発の変更、レビュー結果、変更の許可、及び悪影響を防止するための処置に関する文書化した情報を保持する。
設計・開発の変更は、形態管理のプロセス要求事項に従い管理する。
ISO9100では、変更についてもあらかじめ定めた手順に従うだけでなく、変更前の顧客への通知や形態管理についても要求されています。
8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理(外注・購買、調達、物流サービス)
8.4.1 一般(外注・購買の管理)
「外注・購買管理規定」に従い、外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、要求事項に適合するよう管理する。
顧客指定の提供元から提供されるものを含め、外部から提供されるプロセス、製品及びサービス全ての適合に責任を負う。
要求される場合には、工程提供元(例えば、特殊工程)を含む、顧客指定又は承認された外部提供者を使用する。
外部提供者の選定及び使用と同様に、プロセス、製品及びサービスの外部提供に関連するリスクを特定し、マネジメントする。
要求事項を満たしていることを確実にするために、外部提供者がその直接及び下請(sub-tier)の外部提供者へ適切な管理を適用することを要求する。
ISO9100では、自社だけでなく、協力会社などを含めた管理と責任が明示されています。
外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、次の事項に該当する場合には、外部提供者に対して、評価、選択、パフォーマンスの監視、及び再評価を行うための基準を定め管理し、これらの活動及びその評価によって生じる必要な処置について、文書化した情報を保持する。
a)外部提供者からの製品及びサービスを当社の製品及びサービスに組み込む場合
b)製品及びサービスを外部提供者から直接顧客に提供する場合
c)外部提供者からプロセス又はプロセスの一部を提供する場合
なお、外部提供者を評価及び選定する際、客観的かつ信頼できる外部情報源からの品質データを、組織による評価として使用することができる(例えば、認定された品質マネジメントシステム又はプロセスの認証機関からの情報、政府当局又は顧客からの外部提供者認定)。
このようなデータの使用は、組織の外部提供者管理プロセスの1つの要素であり、外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが規定された要求事項を満たすことを検証する責任を負う。
次の8.4.4.1は、ISO9100の追加要求事項です。
8.4.1.1 承認等に関し当社が行うこと
組織は、次の事項を行わなければならない。
a)承認状態の決定、承認状態の変更及び外部提供者の承認状態に基づき外部提供者の使用制限を行うための条件について、プロセス、責任及び権限を定める。
b)承認状態(例えば、承認、条件付承認、否認)及び承認範囲(例えば、製品の種類、プロセスの分類)を含む外部提供者の登録を維持する。
c)プロセス、製品及びサービスの適合並びに納期どおりの引渡しを含む、外部提供者のパフォーマンスを定期的にレビューする。
d)要求事項を満たさない外部提供者に対してとるべき必要な処置を定める。
e)外部提供者によって作成及び/又は保持される文書化した情報の管理に対する要求事項を定める。
8.4.2 管理の方式及び程度(外注・購買の管理方法)
「外注・購買管理規定」に従い、次の事項を行い、外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、顧客に一貫して適合した製品及びサービスを提供する当社の能力に悪影響を及ぼさないよう管理する。
a)外部から提供されるプロセスを品質マネジメントシステムに含め管理する。
b)外部提供者に適用するための管理、及び外部提供者のアウトプットの管理方法を定める。
c)d)の管理方法について次の事項を考慮する。
1)外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を一貫して満たす当社の能力に与える潜在的な影響
2)外部提供者の自己管理の有効性(外部提供者の自己管理能力)
3)外部提供者のパフォーマンスの定期的なレビュー結果(8.4.1.1 c)参照)
d)外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが要求事項を満たすことを確認するために必要な検証又はその他の活動を明確にする。
外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの検証活動は、組織によって特定されたリスクに従って実施する。
模倣品のリスクを含め、不適合のリスクが高いとき、該当する場合には、必ず、検査又は定期的な試験を含める。
なお、以下について補足する。
- サプライチェーンのいかなるレベルで実施された顧客による検証活動も、受入れ可能なプロセス、製品及びサービスを提供し、全ての要求事項に適合するという組織の責任を免除するものではない。
- 検証活動には、次の事項を含み得る。
- 外部提供者からのプロセス、製品及びサービスの適合に関する客観的証拠(例えば、添付文書、適合証明書、試験文書、統計文書、工程管理文書、製造工程の検証及びその後の製造工程の変更の評価の結果)のレビュー
- 外部提供者先における検査及び監査
- 要求した文書類の内容確認
- 製造部品承認プロセスデータのレビュー
- 受領時の製品検査又はサービスの検証
- 外部提供者に対する製品検証の委譲のレビュー
外部から提供される製品が、全ての要求される検証活動の完了前に製造に使用するためリリースされる場合、後にその製品が要求事項を満たしていないと判明したときに回収及び交換ができるように識別し、記録する。
外部提供者に検証活動を委譲する場合には、組織は、委譲についての適用範囲及び要求事項を定め、委譲事項の登録を維持する。このため、外部提供者の委譲された検証活動を定期的に監視する。
外部提供者の試験報告書を、外部から提供される製品を検証するために利用する場合、その製品が要求事項を満たしていることを確認するために、試験報告書のデータを評価するプロセスを実施する。顧客又は当社が、材料を重大な運用リスク(例えば、クリティカルアイテム)として識別する場合、試験報告書の正確さの妥当性確認を行うためのプロセスを実施する。
ISO9100では、外部から提供されるプロセスや製品などについて、責任と検証(妥当性確認)が具体的に要求されています。
8.4.3 外部提供者に対する情報(外注・購買先との約束)
「外注・購買管理規定」に従い、次の事項に関する要求事項が妥当であることを確認した後、外部提供者に伝達する。
a)関連する技術データ(例えば、仕様書、図面、工程要求書及び作業指示書)の識別を含む、提供されるプロセス、製品及びサービス(購買製品の仕様など)
b)次の事項についての承認
1)製品及びサービス(製品仕様など)
2)方法、プロセス及び設備(製造方法、使用設備など)
3)製品及びサービスのリリース(リリース(出荷許可)の条件、納品方法など)
c)要員の力量。これには必要な適格性を含む。(要員の資格など)
d)当社と外部提供者との相互作用(外注・購買先との作業分担や情報のやり取りなど)
e)当社が適用する、外部提供者のパフォーマンスの管理及び監視(提出記録、監査、評価など)
f)当社又は顧客が外部提供者先での実施する検証又は妥当性確認活動(立会、製品評価など)
g)設計・開発の管理
h)特別要求事項、クリティカルアイテム又はキー特性
i)試験、検査及び検証(製造工程の検証を含む。)
j)製品受入時の統計的手法の使用、及び組織が受け入れるための関連する指示事項
k)次の事項に対する必要性
-
- 品質マネジメントシステムを実施する。
- 工程提供元(例えば、特殊工程)を含む、顧客指定又は承認された外部提供者を使用する。
- 不適合なプロセス、製品及びサービスを組織に通知し、それらの処置に対し承認を得る。
- 模倣品の使用を防止する(8.1.4 参照)。
- 外部提供者が利用する外部提供者又は製造場所の変更を含む、プロセス、製品又はサービスの変更を組織に通知し、組織の承認を得る。
- 顧客要求事項を含む該当する要求事項を外部提供者まで展開する。
- 設計の承認、検査・検証、調査又は監査のための試験供試体を提供する。
- 保管期間及び廃棄の要求事項を含む文書化した情報を保持する。
l)組織、その顧客及び監督官庁が、サプライチェーンのあらゆるレベルにおいて、施設の該当区域への立入り及び該当する文書化した情報の閲覧を行う権利
m)人々が、次の事項を認識することを確実にする。
-
- 製品又はサービスの適合に対する自らの貢献
- 製品安全に対する自らの貢献
- 倫理的行動の重要性
ISO9100が航空宇宙の製品やサービスを対象としていることから、追加されている内容については安全性や信頼性を確保(保証)するために必要であることは理解できます。
実施に当たっては、規定等でルールを定めたうえで、ルール通りに実施できるようにし、それを維持し、かつ、定期的にチェックすることが求められています。
まとめ
ISO9001のQMS改善のヒントになればと思い、ISO9001:2015版品質マニュアルをISO9100:2016に対応させた品質マニュアルを作りはじめました。
ここでは、ISO9100:2016版対応の品質マニュアルの以下の項目についてまとめています。
ISO9100追加要求事項もあり、規定類の見直しも必要になります。
- 8.運用(行動、日々の業務)(その2)
- 8.3 製品及びサービスの設計開発(製品の設計開発)
- 8.3.1 一般(設計開発のルールを決める)
- 8.3.2 設計開発の計画(設計開発の計画)
- 8.3.3 設計開発へのインプット(設計開発に使う情報)
- 8.3.4 設計開発の管理(設計開発の管理)
- 8.4.1.1 承認等に関し当社が行うこと
- 8.3.5 設計開発からのアウトプット(設計開発の結果)
- 8.3.6 設計開発の変更(設計開発の変更)
- 8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理(外注・購買、調達、物流サービス)
- 8.4.1 一般(外注・購買の管理)
- 8.4.2 管理の方式及び程度(外注・購買の管理方法)
- 8.4.3 外部提供者に対する情報(外注・購買先との約束)
- 8.3 製品及びサービスの設計開発(製品の設計開発)