ここでは、商品を数名のチームで作り販売する、プロジェクト方式で仕事をする組織を想定しています。
品質マニュアルは、各種規定と組み合わせて作られる場合が多いと思いますが、品質マニュアルに規定を含めてしまい1冊にした方が使いやすいと思います。
ポイントは、次の2点です。
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- トップのサポート、支援
- 品質マニュアルは、ISO9001の要求事項に現在できていることを当てはめ、該当ない部分のみ最小限の追加をする。
ISO導入はトップ自らがベストですが注意点も
20名程度の会社(組織)で品質マネジメントを考える場合、現実的には1人で何役も担当している場合が多いため、いわゆる組織の「役職」ではなく、例えば顧客の要求を明らかにする営業、設計する技術といったように、「役割」で行動することをイメージするのが良いと思います。
1つの仕事(案件)をプロジェクトとして扱い、チームとして当たるということです。
形式的な組織図や品質マネジメントシステム体系図を作っても、営業部長が商品企画を兼ね、技術部長が設計・開発、製造、技術サポートを担当では、意味がないからです
次に、役割を果たすために何をするのかを明確に、具体的にします。
グレーゾーン、不明確な部分は、レビュー(会議)で決めるものとし、内容により議長を営業部長、技術部長が務め、会議で決まったこと(結論)を実行する期限と責任者を決めます。
品質マネジメントも2015年版になり、経営との統合が進んでいます。
トップの判断や決断が必要な場合には、トップ(社長)が積極的に関わり進めることがポイントになります。
使える品質マニュアルを作る
せっかくヒトと時間を使って作るのですから、入社研修や基本的な業務にも使えるマニュアルを社員自らの手で作ります。
例えば、
- 品質マニュアルを使って入社研修で会社の方針や社内業務の概要を説明できる。
- 中途採用やISOを知っている人なら、品質マニュアルを読めば社内業務の概要が分かる。
また、担当者が行き詰まる、手が止まっている場合には適時のフォローも必要になります。
いかにして、「人を動かし、巻き込むか」が、トップの腕(マネジメント)のみせどころです。
「知らないうちに、結果的にできてる」ような導入活動となるのがベストだと思います。
形式的なマニュアル、審査のためのマニュアルにメリットはありません。
- 審査の都度、審査のための事前準備が必要になる。
(しかも審査の回数が増えるほど手間も増えます) - 品質目標の達成にも、業務改善にも役立たない。
ISOコンサルについて
コンサルを入れること、助言をもらうことも必要と判断されたのであれば否定する気はありません。
しかし、自社の業務フローや内容は、社外の人には分からないというのが現実です。中小企業ではなおさらでしょう。
大企業ならひな型をそのまま利用しても何とか形にはなるでしょうが、人数の少ない企業では、自社の社員が自ら作らないと使えるマニュアルにはなりません。
社長が決めること
品質マニュアルで社長が決めることについて説明します。
組織図はプロジェクト形式であれば簡単なものですし、品質マネジメントシステム体系図も同様にシンプルなものになります。
- 経営理念、ビジョン
- 品質方針、品質目標と直接かつ深く関係します。
- 組織図、品質マネジメントシステム体系図
- マネジメントレビュー
- 経営会議や取締役会などの内容の一部として実施していると思います。
- 全社のPDCA
- マネジメントレビュー、内部監査を含めたPDCAを年1回回す。
ルール作りから取り組むこと
- 内部監査
- まずは、要求事項を満足しているかの内部監査を行います。
- 次に、全社最適化の目線で、業務改善を目的(狙い)とします。
- 教育・訓練
- OJTはやっているでしょうからゼロからではないと思われます。
- 設計・開発
- ISO9001の設計・開発はよくできている仕組みです。
- まずは、現状を要求事項に当てはめることから始めます。
品質マニュアル及び関連規定作成時の注意事項
現状レベルで作成・運用し、レベルが上がりできるようになったらルール化、文書化する。
- 現在できている、やっていることをISO9001の要求事項にあてはめる。
- こうありたいといった願望を入れない。(とても重要)
- ルールを作るのが目的ではない、ルールは手段であることを忘れない。
- ISOのためのルールや記録は避ける。やむを得ない場合にも最小限にする。
人が少ないからこその導入ポイント
何かと兼務が多い、人に依存する小さい会社だからこそできる強みもあります。
内部コミュニケーションに優れる、情報が速く伝わる、即断即決、初動が速く瞬発力があるなどなど。
中小企業は組織よりプロジェクト方式
プロジェクト管理はリスク管理。
リスクには優先順位をつけて対策をとればよい。
対策をしないというリスク対策はありです。
いつもやっていることのルール(約束事、フロー)を明確にして、できれば文書化(紙に書いて)、だれもが同じルールで仕事(担当業務)をできるようにする。
走りながらルール化して、落ち着いてきたら(回るようになってきたら)規定に(文書化)する。
品質マネジメント特有の要求(必要なこと)
- マネジメントレビュー
- 社長がすでにやっていること
- 内部監査
- 管理責任者が中心となって実施する。
- 教育・訓練
- OJTとか資格講習とか必要なことを実施しているはずです。
- 設計開発
- 文書化されていないかもしれませんが、流れ(業務フロー)はあるでしょう。
- リリース
- 出荷を許可する責任者がいますよね。
品質マネジメントとPDCA
品質マネジメントのうち、品質目標の達成に関するPDCAについて説明します。
PDCAは計画ありきではありません。実際に行動することが重要です。
- まず行動(D)から始める。
- まずありたい姿と現実とのギャップを明確にする(C)から始める。
品質目標に関する実施項目の例
- 前提
- 会社の目的達成のための会社目標
- 全社目標を達成するための部署目標
- 品質目標の設定
- 自部署でできることできないこと
- メンバーの力量(実力)と教育・訓練
- 予算、採用(自部署でどうにもならないことは目標にならない)
- 品質目標計画の進捗管理
- 日々の確認
- 毎週の確認(報告を受けるだけでは不十分)
- 毎月、四半期、通期は、振り返ること
- 品質目標計画の見直し
- 状況が変われば見直しをするのが当たり前。必要なら目標も見直す。
コピペで簡単に作れるが、結局使えない品質マニュアルは作らない
規格要求事項を「○○する」に語尾を修正するだけでも、品質マニュアルは作れます。
指摘は受けるかもしれませんが、認証取得のための文書審査はクリアできます。
ただし、外部審査や認証取得後の活動、そもそも品質マニュアルに書いてあるISO9001の要求事項をどのように実現するルールなのかが、品質マニュアルを作った担当者と認証取得に対応したISO事務局だけしかわからないのでは、認証取得後(その説明が)とても大変です。
もちろんサーベイランス等の外部審査をクリアするのも大変で、いかに時間切れに持ち込み指摘を受けないようにするかとか、もはや本末転倒で何のための品質マネジメント認証取得だったのかということになってしまいます。
品質マニュアル及び関連規定作成のポイントは、以下の2点です。
- 「実態(今できていること)をISO9001の要求事項に当てはめる
- 内部監査などのISO9001要求事項を満たしていない部分を最低レベルで盛り込む
くれぐれもありたい姿、こうすべきだという内容を品質マニュアルに盛り込まないこと。
これは2000年版導入のお手伝いをさせていただいた時の経験ですが、トップ(社長)が品質マニュアルを作りだしたケースがあって、管理責任者に作るよう助言させていただきました。
「品質マニュアルを社長が理解することも大切ですが、社員が使える品質マニュアルであることが最優先なのです。」。「今のレベルが低いと思っているのならレベルを上げてから品質マニュアル(ルール)を改訂すればよいのです。」と。若く熱い社長で当時は大変でしたが、今はよい思い出です。
まとめ
小規模の会社が品質マニュアルや規定を作る場合には、組織割ではなくプロジェクト方式で仕事の役割で記載するプロジェクト方式の方がよいと考えています。
ここでは、品質マニュアルと規定の作成について以下の項目で説明しました。
- ISO導入はトップ自らがベストですが注意点も
- 使える品質マニュアルを作る
- ISOコンサルについて
- 社長が決めること
- ルール作りから取り組むこと
- 品質マニュアル及び関連規定作成時の注意事項
- 人が少ないからこその導入ポイント
- 中小企業は組織よりプロジェクト方式
- 品質マネジメント特有の要求(必要なこと)
- 品質マネジメントとPDCA
- コピペで簡単に作れるが、結局使えない品質マニュアルは作らない