ISO9001品質マネジメントシステムでは、パフォーマンス改善にQMSが役立つものであることが要求されています。
内部監査では、監査対象部署や会社全体のパフォーマンス改善に役立つ情報(業務改善に役立つ内部監査結果)を提供できる内部監査を目指したいと考えています。
内部監査員に対し、パフォーマンス改善については次の様に説明しています。
- パフォーマンス改善に注目する
- 注目したプロセスの課題を明らかにする。
- 改善点(のヒント)を見つける。
こうすることで、改善に役立つ良い指摘となり、内部監査によるパフォーマンス改善につながると考えます。
ここでは、製造プロセス(部門)の内部監査を例に、パフォーマンス改善に注目した内部監査のポイントについて説明します。
製造プロセスのパフォーマンス改善を狙った内部監査
内部監査において製造プロセス(部門)パフォーマンス改善に注目する場合に、
- プロセスを意識すること(プロセスアプローチ)
- 4Mの視点(変更点を意識する)
を組み合わせた内部監査のポイントについて説明します。
M(材料):インプットとアウトプット
4Mの材料のインプットとアウトプットに注目します。
- 製造プロセスへのインプット:図面、部品や材料、生産計画など
- 製造プロセスのアウトプット:製品、生産データ、検査記録など
内部監査では、各々のインプットとアウトプットの成果物やデータに注目します。この際、文書や記録の有無ではなく、文書や記録に記載されている内容に注目します。
例えば次の様に進めます。
- 作業記録の指示内容、実際に作業した際のメモやコメントなどを確認し、その結果どうなったのか、何をしたかなどをヒアリングします。
- 作業記録を見る際に、製造部署あるいは作業プロセスごとの目標がないか聞いて、その目標を達成するためには、作業記録のどのデータが指標になるかなどを聞いていきます。
内部監査員としては、指摘することが目的ではなく、あくまで業務改善が目的であることを忘れず、次の様な進め方になります。
- 生産性向上として、歩留まりを上げるのであれば、そのために何をして、日頃の作業ではどの様なデータを記録して、記録したデータをどの程度の間隔で(定期的に)確認しているかを聞いたりします。
- 製造部門プロセスの材料に注目することで、生産性改善につながる活動を確認できることになります。
M(設備):何を用いて行うか
4Mの設備に注目します。
設備といえば、文字通りの生産設備や生産管理システムなどが対象になりますが、製造プロセスの改善に注目する際には、何を用いているか、何を使っているかに注目します。
また、製造プロセスについては、例えば作業手順の1つ1つのプロセス(工程)を見る視点と、製造プロセス全体を見る視点がありますので、双方のバランスに注意することが必要になってきます。
これは、製造プロセスの改善において、部分最適化にはなったが、全体としてみると改善されていないケースが少なくないからです。
生産設備の不具合、点検、製品への影響について、実際の運用状況や現場の声を聞くことが必要になります。
現場の声は、必ずしも生産設備やプロセス問題が表面化によるものとは限りませんし、現場の声の中に真の原因となる事象の一部が現れていたりするケースもあります。
M(人):誰が行うか(責任・力量)
4Mの人に注目します。
ここでいう人には、いわゆる作業者や資格を持った人だけではありません。現場リーダーや製造責任者も含まれますし、製造プロセスに関わってくるのは管理部門も含まれてきます。
製造プロセスの改善を、人の面から見ていく場合には、製造プロセスの部分及び全体について、関連する責任や権限について確認し、製造にかかわる個々の要因に加え、様々なグループ(作業グループ)と全体(工場全体)についても意識することが必要になります。
また、法的に必要な資格については、資格の有効期限や配置、資格を維持するための力量評価、必要な資格者を確保するための教育・訓練を含めた要員計画などについての確認が必要です。
さらに、実際の資格者や要員確保をする責任者などに、実態と今後の計画などについても聞いていきます。
M(方法):どのように行うか
4Mの方法(手段)に注目します。
いわゆる書類としては、作業手順書、QC工程図、製造管理規定、梱包などの標準を確認します。
個々の製造プロセスと共に、製造プロセス全体についても定められたルール(手順書)等と実態を確認していきます。
ヒアリングのポイントとしては、作業担当者に聞く場合と、それを見ている人や作業責任者、さらに上の製造プロセス全体の管理者など、各々の立場に応じた質問と製造部門の監査ポイントとして共通して聞くことを意識します。
さらに、モノづくりの現場では変更が当たり前のように発生しています。このため、製品仕様の変更と承認、作業手順や基準の変更と承認をどの様なルールで行い、実際にルール通りに実施されているかを複数の視点で確認していきます。
製造プロセスの評価指標は何か(監視項目・目標値)
製造プロセスの改善をするためには、前提として製造プロセスが適切に行われているか、目標に対して何をもってどの様に評価するか決められていることが必要になります。
製造プロセスを監視する項目には、次の様なものがありますが、これらは優先度を含め製造現場ごとに違うことが通常です。
- 優先度や目標値
- 不良率や歩留まり
- 設備停止時間
- クレーム件数(工程内、検査、出荷後)
内部監査における対応の例を以下に列挙します。
- 製造プロセスに関連する評価指標を確認
- 評価指標に対する評価結果を確認
- パフォーマンス改善状況を確認
- 結果が出ていない場合にはその原因を深堀り(いろいろな視点で聞く)
- ヒアリングや観察したことなどを総合的に判断し課題を明確化
- 改善点を見出し、改善に役立つ良い指摘を導く
文章にすると難しそうなイメージを持つかもしれませんが、
- 製造現場で何を改善したいのか(ヒアリング)
- 製造現場の現状の確認(観察)
- 課題や問題点の洗い出し(ヒアリング、コミュニケーション)
をすることで、自ずとすべきことが分かってくることもあります。
内部監査員としては、業務改善のためという視点を忘れず、現場に寄り添う態度で接することになります。
まとめ
ISO9001品質マネジメントシステムでは、パフォーマンス改善にQMSが役立つものであることが要求されています。
内部監査では、監査対象部署や会社全体のパフォーマンス改善に役立つ情報(業務改善に役立つ内部監査結果)を提供できるようにしたいと考えています。
ここでは、製造プロセス(部門)の内部監査を例に、パフォーマンス改善に注目した内部監査のポイントについて、以下の項目で説明しました。
- 製造プロセスのパフォーマンス改善を狙った内部監査
- M(材料):インプットとアウトプット
- M(設備):何を用いて行うか
- M(人):誰が行うか(責任・力量)
- M(方法):どのように行うか
- 製造プロセスの評価指標は何か(監視項目・目標値)