2023年12月も半ばを過ぎた頃、「なんか気になっていたんだよね。準備しておいてよかった。」というできごとがありました。
20名規模のモノづくり会社なのですが、ISO9001の設計・開発の適用除外に関することで、「審査機関の統合のため2024年の審査では適用除外は認められない方針に変わった。」との連絡がきたそうです。
「そもそもISO9001の設計・開発が適用除外を認めているほうがおかしいだろう。」と思っていたので驚きはありませんでしたが、相談されれば具体的にどの様に対応するか考えはじめました。
1週間後に訪問することにして、2024年の審査までに、どの様に改訂作業を進めるか考え始め、資料を作りはじめました。
よく考えて維持できるように品質マニュアルを作っていこうと考えています。
ここでは、統合マニュアルを運用するとあるモノづくり会社のQMS(品質マニュアルとISO規定類)に、どのように設計・開発の適用除外を対応させていくかについて説明します。
だから言ったのに(背景とこれまでの経緯)
2023年も12月に入ってから、とあるモノづくり会社(20名規模)の社長さんから、
来年からISO9001の設計・開発の適用除外は認められないと連絡がきました。
どうしたらよいのか相談にのってください。
とお願いされてしまいました。
詳しくお話を聞くと、「審査機関の統合により、今後、設計・開発の適用除外は認められないことになった。」との連絡が審査機関から文書できたそうです。
「モノづくりしているのにISO9001の適用除外は無いって言いましたよね。」と今更言っも仕方ないので、どうやるかを考えはじめました。
実は、こちらの会社では、統合マニュアルでQMSとEMSの認証を取得されていて、2023年に規定類を含め2015版の要求事項との整合性をとったばかりでした。
この整合性をとる作業をする際に、ISO9001の設計・開発の適用除外についてもどうするか確認したのですが、審査機関で認めてもらっているからそのままでよいとのことだったのですが。
設計・開発の適用除外を外すため、まずは現状と要望を確認
さて、相談を受けたものの、まずは、現状確認が必要です。
相談されたのでひとまず思考実験をはじめますが、とりあえず年内にISO事務局の方と大筋の方向性について話し合う機会を設けました。
社長さんと、管理責任者である工場長からは、今回もよろしくとお願いされました。信頼されているのはありがたいのですが、結構大仕事なんだけれどと思ったのも事実です。
訪問理由は、現状確認ということにしましたが、実際に作業をするISO事務局の方がゆっくりお正月を迎えられるようにひとまず「何とかなりますよ」と安心させるのが主たる目的です。
実際は大変というよりは面倒なな作業が必要になります。
プレッシャーをかけても誰にもメリットがありませんので、やるべきことのリストアップと優先順位の設定からはじめました。
実際の作業内容をイメージする
さて、ISO9001の設計・開発は、よくできていると定評の部分です。
QMSのメインといってもよいので、この部分を追加するということは、新規に品質マニュアルを作ることを意味しています。
- 設計・開発規定については、新規作成か品質マニュアルに含めるか現時点では決められません。
また、審査機関から次の審査で、
- 設計・開発についての事例を1つ以上確認できること
も求められています。
適用除外としていた設計・開発の事例を確認できなければ、不適合となりますし、当然期限も設定されますので、審査までに品質マニュアルと規定類の改訂をしておく必要があります。
100点満点ではなくて、不適合にならないよう60~70点を狙うイメージですす。
モノづくりはしていますが、製品設計や製造工程は、お客様の指示通りやっていて、二社監査を受けている状況です。
- 何をもって設計・開発にするか
を知ることが最優先だと考えました。
自分たちで説明できる品質マニュアルや規定類にしないと、審査で説明できませんので、ここは、状況確認と要望をよく聞く必要があります。
マニュアルや規定類の整備の方向性の案を作る
現状確認と並行して、品質マニュアルや規定類に関する作業についても考えます。
こちらの会社は、統合マニュアルでQMSとEMSを運用しています。
2015版の要求事項に対する整合性とる作業をした時に痛感したのですが、QMSとEMSを1つの統合マニュアルにしてしまうと規格改定作業と確認が大変です。
今回の設計・開発の適用除外については、次の審査まで9か月程度しかなく、正直なところ時間的余裕がありません。
そこで、次のような方針で品質マニュアルの改訂を進める案としました。
- 統合マニュアルの改訂はしない。
- 品質マニュアルは、統合マニュアルをたたき台にして新規作成とする。
- EMSについては、統合マニュアルを環境マニュアルとして使うことにする(手をつけない)。
設計・開発規定については、
- 設計・開発について具体的に何を適用するか明確にする。
- 設計・開発の具体例をイメージして、設計・開発規定(案)としてまとめる。
ことにします。
順序が前後しましたが、
- 適用除外で不適合とならないように、品質マニュアルでISO9001:2015の要求事項を満足できるようにする。
- 詳細は、設計・開発規定に記述する。
ことにします。
最初の打ち合わせの結果
事前に、「設計・開発に該当することをメモでもよいので準備しておいて欲しい。」とお願いしていたところ、A4用紙1枚にまとめておいて頂けました。
これさえあれば、後は何とかできると内心ホッとしながら、
- 疑問点などを聞いて、
- 具体的な改訂の進め方を説明し、
以下の方針で進めることにしました。
- 統合マニュアルをベースに品質マニュアルを作る。
- EMSは、2024年はこれまで通り統合マニュアルでの運用とする。
- 設計・開発規定は、既存の規定に設計・開発の部分を追記する。
- 品質マニュアルと関連規定の案は、2024年4月を目標とする。
なお、
- 環境マニュアルの改訂は、ISO審査後、統合マニュアルから環境マニュアルにする。
- 統合マニュアルにするかどうかは、ISO審査後決めることにする。
私としては、QMSとEMSを統合マニュアルで運用するよりは、品質マニュアルと環境マニュアルで運用する方が、ISO9000シリーズやISO14000シリーズの改訂に対応する際に分かりやすいと考えています。
ISO9001は、2025年末を目標にISO TC176/SC2で検討作業が開始されているので、適用除外を削除するタイミングとしては、ちょうどよかったのかもしれません。
まとめ
20名規模のモノづくり会社なのですが、ISO9001の設計・開発の適用除外に関することで、「審査機関の統合のため2024年の審査では適用除外は認められない方針に変わった。」との連絡がきたそうです。
「そもそもISO9001の設計・開発が適用除外になっているのがおかしいだろう。」と思っていたので驚きはありませんでしたが、相談されるとなると話が変わってきます。
ここでは、とあるモノづくり会社の統合マニュアルへの設計・開発の導入の仕方の例について、以下の項目で説明しました。
- だから言ったのに(背景とこれまでの経緯)
- 設計・開発の適用除外を外すため、まずは現状と要望を確認
- 実際の作業内容をイメージする
- マニュアルや規定類の整備の方向性の案を作る
- 最初の打ち合わせの結果