このブログでは、20名規模のモノづくりメーカーを想定して作成した、「品質マニュアルと関連規定」やISOならではのマネジメントレビューの活用「実はやっているマネジメントレビュー」や内部監査の資料(内部監査ガイド、チェックリストの作り方)などISO9001を積極的に活用するための資料を公開しています。
ISO9001のQMS改善のヒントになればと思い、ISO9001:2015版品質マニュアルをISO9100:2016に対応させた品質マニュアルを作っていきます。
ISO9001の品質マニュアルの作り方については、以下をご参照ください。
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[ISO9100:2016版品質マニュアル]
「8.運用」は、ボリュームが大きいので3つの記事としています。
8.運用(行動、日々の業務)(その3)
8.5 製造及びサービス提供(製造工程)
ISO9100では、製造工程の管理について、具体的に要求されています。
8.5.1 製造及びサービス提供の管理(製造工程の管理)
「製造管理規定」に従い、製造及びサービス提供を、管理された状態で実行する。
管理された状態には、次の事項のうち、該当するものは必ず含める。
a)次の事項を定めた文書化した情報を利用できるようにする。
1)製造する製品、提供するサービス、又は実施する活動の特性。
2)達成すべき結果
文書化した情報について以下補足する。
- 製品及びサービスの特性を定める文書化した情報には、デジタル製品定義データ、図面、部品リスト、材料及び工程仕様書が含まれる場合がある。
- 注記2 実施する活動及び達成すべき結果についての文書化した情報には、製造工程表、管理計画、製造文書(例えば、製造計画書、トラベラー、ルーター、作業指示書、工程カード)及び 検証文書が含まれる場合がある。
b)監視及び測定のための適切な資源を利用できるようにし、かつ、使用する。
c)プロセス又はアウトプットの管理基準、並びに製品及びサービスの合否判定基準を満たしていることを検証するために、適切な段階で監視及び測定活動を実施する。
1) 製品及びサービスの合否判定のための監視及び測定活動について文書化した情報は、次の事項を含める。
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- 合格及び不合格の基準
- 検証作業を実施すべき工程順序
- 保持(記録)すべき測定結果(最低限、合格又は不合格の表示)
- 要求される特定の監視及び測定機器、並びにそれらの使用に関連する指示書
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2) 抜取検査を製品の合否判定の手段として使用する場合、抜取計画は認知された統計理論に基づき正当化されたものであり、使用に適するものであることを確実にする。なお、「使用に適する」とは、抜取計画が製品の重要性及び工程能力に適していることである。
d)プロセスの運用のための適切なインフラストラクチャ及び環境を使用する。
- 適切なインフラストラクチャには、製品の専用治工具(例えば、ジグ、固定具、型)及びソフトウェアプログラムが含まれる場合がある。
e)必要な適格性を含め、力量を備えた人々を任命する。
f)製造及びサービス提供のプロセスで結果として生じるアウトプットを、それ以降の監視又は測定で検証することが不可能な場合には、製造及びサービス提供に関するプロセスの、計画した結果を達成する能力について妥当性確認を行う。
妥当性は、定期的に再確認する。
このようなプロセスは、特殊工程と呼ばれる。(8.5.1.2 参照)
g)ヒューマンエラーを防止するための処置を実施する。
h)リリース、顧客への提供及び提供後の活動を実施する。(8.6、8.5.5参照)
i)作業のできばえの基準を設定する。(例:規格書、標準見本、図解)
j)製造中における全ての製品に関する状態を把握する。(例:部品の数量、分割指示、不適合製品)
k)決められたプロセスに従った、キー特性を含む識別されたクリティカルアイテムを管理及び監視する。
l)ばらつきの値を測定するための方法を決定する。(例:治工具、機上測定プローブ、検査装置)
m)後工程では適合について十分な検証ができない場合、工程内での検査・検証ポイントを明確にする。
n)全ての製造及び検査・検証作業が、計画のとおり又は文書化され、承認された他の方法のとおりに実施された証拠を利用できるようにする。
o)異物の混入防止、検出及び除去を規定する。
p)製品要求事項への適合に影響する範囲で、ユーティリティ及び供給物(例えば、水、圧縮空気、電気、化学製品)を管理及び監視する。(7.1.3 参照)
q)後にその製品が要求事項を満たしていないと判明したときに回収及び交換ができるようにするため、後工程の製造で使用する目的で全ての要求される測定及び監視活動の完了前に、リリースされた製品であることを識別し、記録する。
以下、8.5.1.1、8.5.1.2、8.5.1.3は、ISO9100の追加要求事項です。製造に関する規定や標準などで具体的に規定する必要があります。
8.5.1.1 設備、治工具及びソフトウェアプログラムの管理
製造工程を自動化、管理、監視又は測定するために使用される設備、治工具及びソフトウェアプログラムは、製造への最終リリース前に妥当性確認を行い、維持する。
保管中の製造設備又は治工具に対して、必要となる定期的な保存処置及び状態の点検を含む保管要求事項を定める。
8.5.1.2 特殊工程の妥当性確認及び管理
結果として生じるアウトプットが、それ以降の監視又は測定で検証することが不可能な場合のプロセスに対して、次の事項のうち該当するものについて含めた手続を確立する。
a)プロセスのレビュー及び承認のための基準の決定
b)承認を維持するための条件の明確化
c)施設及び設備の承認
d)人々の適格性認定
e)プロセスの実施及び監視に対する所定の方法及び手順の適用
f)保持すべき文書化した情報に対する要求事項
8.5.1.3 製造工程の検証
製造工程により、要求事項を満たす製品を製造できることを確実にするため、製造工程の検証活動を実施する。
これらの活動には、リスクアセスメント、生産能力(capacity)や製造能力(capability)の調査、及び、管理計画が含まれる場合がある。
製造工程、製造文書及び治工具により、要求事項を満たす部品及び組立品を製造できることを検証するため、新規の部品又は組立品の初回製造からの代表品を使用する。
この活動(初回製品検査(FAI))は、初回の結果を無効にする変更(例えば、設計の変更、製造工程の変更、治工具の変更)が生じたときには繰り返す。
製造工程検証の結果に関する文書化した情報を保持する。
8.5.2 識別及びトレーサビリティ
製品及びサービスの適合を確実にするため、「製造管理規定」に従い、アウトプットを識別する。
実際の形態と要求した形態との違いを識別できるように、製品及びサービス形態の識別を維持する。
製造及びサービス提供の全過程において、監視及び測定の要求事項に関連して、アウトプットの状態を識別する。
合格表示媒体(例:スタンプ、電子署名、パスワード)を使用する場合、その表示媒体の管理を確立しなければならない。
トレーサビリティが要求事項となっている場合には、アウトプットについて一意の識別を管理し、トレーサビリティに必要な文書化した情報を保持する。
なお、トレーサビリティの要求事項には、次の事項が含まれる場合がある。
- 製品耐用期間を通じて維持できる識別
- 同じ材料ロット又は同じ製造ロットから製造された全ての製品を、その行先(例えば、引渡し、廃棄)まで追跡する能力
- 組立品については、その構成部品及びその次段階の組立品を追跡する能力
- 製品について、検索可能な一連の製造記録(製造、組立及び検査・検証)
8.5.3 顧客又は外部提供者の所有物(顧客や外注・購買先から預かるもの)
「製造管理規定」に従い、顧客又は外部提供者の所有物が当社の管理下にある間、又は当社がそれを使用している間、注意を払い、識別、検証及び保護・防護を実施する。
これらを紛失若しくは損傷した場合、その他これらが使用に適さないと判明した場合には、その旨顧客又は外部提供者に報告し、発生した事柄について文書化した情報を保持する。
8.5.4 保存(製品の保管)
「製造管理規定」に従い、製造及びサービス提供を行う間、必要なアウトプットを保存する。
この保存には、該当する場合、識別、取扱い、包装、保管及び保護を含め、製品を構成する要素にも適用する。
アウトプットの保存には、該当するものについては、仕様書及び適用される法令・規制要求事項に従い、次の事項も含める。
a)洗浄
b)異物の混入防止、検出及び除去
c)取扱注意を要する製品に対する特別な取扱い及び保管
d)安全警告及び注意を含むマーキング及びラベルの貼付
e)有効保管寿命の管理及び在庫品の回転
f)危険性のある材料の特別な取扱い及び保管
8.5.5 引渡し後の活動(アフターサービス)
製品及びサービスに関連する引渡し(提供)後の活動(アフターサービス)に関する要求事項については、次の事項を考慮しアフターサービスの程度を決める。
a)法令・規制要求事項
b)製品及びサービスに関連して起こり得る望ましくない結果
c)製品及びサービスの性質、用途及び意図した耐用期間
d)顧客要求事項
e)顧客からのフィードバック
f)運用データの収集及び分析(例:パフォーマンス、信頼性、教訓(lessons learned))
g)製品の使用、保守(整備)、修理及びオーバーホールに関連する技術文書の管理、更新及び提供
h)組織の外部で行う作業に対する必要な管理(例:組織の施設以外の場所での作業)
i)製品・カスタマーサポート(例:問合せ、訓練、保証、保守(整備)、交換部品、資源、旧式化・枯渇(obsolescence))
引渡し後に問題が検出された場合、調査及び報告を含む適切な処置をとる。
8.5.6 変更の管理(製造工程の変更管理)
製造又はサービス提供に関する変更を、必要な程度までレビューし管理する。
製造又はサービス提供の変更を承認する権限をもつ人々を明確にし、識別できるようにする。
なお、製造又はサービス提供の変更には、工程、製造設備、治工具又はソフトウェアプログラムに影響を与える変更が含まれる場合がある。
変更のレビューの結果、変更を正式に許可した人(又は人々)及びレビューから生じた必要な処置を記載した、文書化した情報を保持する。
8.6 製品及びサービスのリリース(製品の検査、出荷許可)
「検査業務規定」に従い、製品及びサービスの要求事項を満たしていることを検証するために、適切な段階において、計画(8.1参照)した取決めを実施する。
計画した取決めが問題なく完了するまでは、顧客への製品及びサービスのリリースを行わない。ただし、当該の権限をもつ者が承認し、かつ、顧客が承認したときは、この限りではない。
製品及びサービスのリリースについて文書化した情報を保持する。これには、合否判定基準への適合の証拠、リリースを正式に許可した人(又は人々)に対するトレーサビリティを含める。
製品認定の実証が要求された場合、組織は、保持する文書化した情報によって製品が定められた要求事項を満たしている証拠を提供する。
製品及びサービスに添付することを要求された全ての文書化した情報が出荷時に準備されている(存在することを確実にする)。
ISO9100では、製品認定などのエビデンスについても確実にそろえることが求められています。。
8.7 不適合なアウトプットの管理(不適合品の管理)
ISO9100では、不適合品の管理を確実に実施することが要求されています。
8.7.1 不適合なアウトプットの識別・管理(不適合品の識別・管理)
要求事項に適合しないアウトプットが誤って使用される、又は提供されることを防ぐため、「不適合品処理規定」に従い、それらを識別し、管理する。
不適合なアウトプットには、内部で発生した、外部提供者から受領したもしくは顧客によって特定された不適合な製品又はサービスを含む。
不適合の性質、並びにそれが製品及びサービスの適合に与える影響に基づき、適切な処置をとる。これは、製品の提供後、サービス提供中又は提供後に検出された、不適合な製品及びサービスにも適用する。
組織の不適合管理プロセスは、次の事項を含む文書化した情報として維持する。
- 不適合なアウトプットの内容確認及び処置判定に対する責任及び権限、並びにこれらの決定を行う人々の承認手順を規定する。
- 他のプロセス、製品又はサービスに及ぼす不適合の影響を封じ込めるために必要な処置をとる。
- 顧客及び密接に関連する利害関係者に引き渡された製品及びサービスに影響を及ぼす不適合の適時な報告
- 不適合の影響に応じて適切に、引渡し後に検出された不適合な製品及びサービスに対する是正処置を決定する。(10.2 参照)
なお、不適合な製品及びサービスの通知を要する利害関係者には、外部提供者、内部の組織、顧客、販売業者及び監督官庁が含まれる場合がある。
次の一つ以上の方法で、不適合なアウトプットを処理する。
a)修正(手直し) 修正後、要求事項への適合を検証する。
b)製品及びサービスの分離、散逸防止、返却又は提供停止
c)顧客への通知
d)当該の権限をもつ者及び顧客(該当する場合には、必ず)からの、特別採用による受入の正式な許可の取得
不適合製品の受入のためのそのまま使用又は修理の処置は、次の場合に限り実施する。
- 設計に責任のある組織の権限をもつ代表者又は設計組織から権限を委譲された人々による承認後
- 不適合が契約要求事項からの逸脱を引き起こす場合、顧客の承認後
廃棄と判定した製品は、物理的に使用できなくなるまで、分かりやすく、かつ、永久的な印を付けるか、又は確実に管理する。
模倣品又は模倣品の疑いのある部品は、サプライチェーンへの再混入を防止するために管理する。
不適合なアウトプットに修正を施したときには、要求事項への適合を検証する。
8.7.2 文書化した情報の保持(不適合品の記録)
「不適合品処理規定」に従い、不適合、とった処置、特別採用、及び不適合に関する処置について決定する権限をもつ人(又は人々)を特定している文書化した情報を保持する。
まとめ
ISO9001のQMS改善のヒントになればと思い、ISO9001:2015版品質マニュアルをISO9100:2016に対応させた品質マニュアルを作りはじめました。
ここでは、ISO9100:2016版対応の品質マニュアルの以下の項目についてまとめています。
ISO9100追加要求事項もあり、規定類の見直しも必要になります。
- 8.運用(行動、日々の業務)(その3)
- 8.5 製造及びサービス提供(製造工程)
- 8.5.1 製造及びサービス提供の管理(製造工程の管理)
- 8.5.1.1 設備、治工具及びソフトウェアプログラムの管理
- 8.5.1.2 特殊工程の妥当性確認及び管理
- 8.5.1.3 製造工程の検証
- 8.5.2 識別及びトレーサビリティ
- 8.5.3 顧客又は外部提供者の所有物(顧客や外注・購買先から預かるもの)
- 8.5.4 保存(製品の保管)
- 8.5.5 引渡し後の活動(アフターサービス)
- 8.5.6 変更の管理(製造工程の変更管理)
- 8.5.1 製造及びサービス提供の管理(製造工程の管理)
- 8.6 製品及びサービスのリリース(製品の検査、出荷許可)
- 8.7 不適合なアウトプットの管理(不適合品の管理)
- 8.7.1 不適合なアウトプットの識別・管理(不適合品の識別・管理)
- 8.7.2 文書化した情報の保持(不適合品の記録)
- 8.5 製造及びサービス提供(製造工程)