「安全衛生管理マニュアル」の補足資料です。
「安全管理の参考」のうち、ヒヤリハットについてまとめています。
1. ヒヤリハット事例報告手順
1.1 ヒヤリハット事例報告の目的
「ヒヤリハット」とは、幸い事故には至らなかったものの、事故の一歩手前で「ヒヤリ」とした、「ハット」した体験のことです。
ハインリッヒの法則(1:29:300、分析により導かれた労働災害の発生比率)では、1件の重大事故のウラに、29件の軽傷事故、300件の無傷事故(ヒヤリハット)があると言われています。
ヒヤリハット活動とは、この300件のヒヤリハットを集め、事前の対策と危険の認識を深めることで、重大な事故を未然に防ぐ活動のことで、作業者ひとりひとりができる、安全活動のひとつです。
大きな事故が発生する背後には、必ずこのヒヤリハット体験が存在すると言われており。ヒヤリハット事例を分析することは、重大な事故を未然に防止するために有効な手段となっています。
ヒヤリハット事例を分析し、重大な事故防止につなげるポイントは、次の2つの習慣を職場内で作り上げていくことです。
- ヒヤリハット体験は、仲間を守る貴重な情報源であるという意識をもって報告する習慣
- 報告された情報を職場全員で共有化し、学び合い、事故防止対策に役立たせる習慣
習慣となるまでには、様々な苦労があるかと思います・・・。
なお、ヒヤリハットの報告は、個人の責任を追及するためのものではありません。
個人の体験を教訓として、職場のその後の安全対策に活かすことが目的であることを忘れないでください。
1.2 報告書の記入方法
(1)報告書提出の対象は、災害活動及び訓練で体験した事例とするが、病院にかかるような負傷等を負った事例(労働災害認定事例)は、報告の対象から除く。
(2)作業環境の問題、設備機器の問題、作業方法の問題の欄へは、ヒヤリハットの原因となった不安全な状態又は行動等を記入する。
(3)今後の対策欄は、ヒヤリハット体験者の所属分団で同種の事例を起こさないための対策を話し合い、その内容を記入する。
安全装備品などの支給要望を記入してもよい。
(4)あなた自身の問題の欄には、ヒヤリハット経験者の事例発生時の行動などの反省点を記入する。
(5)心身分析の欄へは、ヒヤリハット体験時の心身の状態に該当するものすべてに○印を記入する。
1.3 報告書の活用方法
(1)管理部に提出された報告書は、他部署に配布する。
この際、管理部から報告書作成部署長に、そのときの状況を説明する資料の提出を依頼する場合がある。
(2)各部署では、同種の事例を起こさないための対策を話し合い、最も有効であると思われる対策を1つに絞り、管理部にその内容を提出する。
提出期限は、原則として事例資料配布から1ヶ月以内とする。
(3)管理部は、提出された各部署の対策をまとめ、配布する。
(4)各部署は、配布された対策の中で最も有効で実行可能な対策を検討し、今後の同種の事例に対する安全対策として、部署内に周知する。
(5)労働災害認定事例については、この報告の内容から除くが、管理部から事故の状況を説明する資料を各部署に配布するので、各部署は上記(2)~(4)の作業を行う。
1.4 ヒヤリハット報告書
ヒヤリハット報告書の一例を以下に示します。
1.5 安全衛生の活動(安全週間、ヒヤリハット活動、KY活動、指差呼称)
会社の安全衛生活動
会社では、工場の中での安全の確保をはじめとして作業環境上の問題除去、定期的な健康診断・特殊作業従事者健康診断など、職場で安全に過ごせるように様々な取り組みをしています。
また、安全週間といって、1週間、1日ごとに職場の安全点検の項目を決めて、全員参加で点検し、危険が予想される箇所には対策をしたり、従業員の安全に対する考えを教育したりする行事もあります。
もちろん、行事のときだけやればよいというものではなく、安全は常日頃から確保することが重要です。
工場や当社製品が使われている現場でも、緑十字の旗やポスターをよく見かけます。これは安全運動のシンボルマークで従業員の安全衛生意識の高揚を図るために掲げられ、緑十字マークと安全第一はセットで用いられています。
会社では、安全衛生管理を徹底して、労働災害の防止活動やゼロ災害(無災害)を達成しようという活動が行われており、具体的な活動としては、ヒヤリ・ハット活動、KY活動、指差呼称があげられます。
KY活動
KY活動は危険予知活動という意味でKYKともいい、作業を開始する前に危険な箇所や行動を予知・予測し、未然防止を図ります。
なお、危険予知トレーニング(KYT)は、イラストや写真にした作業現場の風景を用いて、危険な箇所や行動を視覚的に見つけ出し、その対策を考えるという訓練活動です。
KY活動の一環として安全確認する目的で、自分のすべき行動を「○○ヨシ!」などと対象物を見て指差し、大きな声で確認することを指差呼称と呼んでいます。具体的に呼称することが重要でヒューマンエラーによる事故を防ぐのに役立ちます。
危険予知活動(KYK)とは
危険予知活動(KYK)は、職場に潜在している作業行動面の危険を作業者自身が予知し、事前に排除したり、事故に巻き込まれたりしないように、危険予知能力や安全作業への集中力を向上し、安全作業を行うことで、事故をなくすための安全管理の手法の1つです。
危険(Kiken)予知(Yochi)活動(Katsudo)のローマ字表記の頭文字を取ってKYKやKY活動とも呼ばれます。
KYKは、次のようなことに役立つと言われています。
- 危険に対する一人ひとりの感受性を鋭くする。
- 作業に潜んでいる危険性に対してみんなが共通認識をもつ。
- 「自分たちの安全は自分たちで守る」というチームワークを醸成する。
- みんなで参加・発言・合意して決めたことを自主的に守る。
KYKは、作業現場に近いところで4ラウンド(現状把握、本質追究、対策樹立、目標設定)で構成されることが多く、作業開始にあたり指差呼称とタッチ・アンド・コールで締めくくられることが一般的です。
危険予知トレーニング(KYT)とは
危険予知トレーニング(KYT)は、KYKを適切に実施するための安全管理上の教育訓練のことで、「危険予知訓練」とも呼ばれています。
危険(Kiken)予知(Yochi)トレーニング(Training)の頭文字を取ってKYTと略記されています。
まとめ
ここでは、「安全衛生管理マニュアル」の補足資料として、「安全管理の参考」のうち、ヒヤリハットの事故報告手順について、以下の項目でまとめました。
- ヒヤリハット事例報告の目的
- 報告書の記入方法
- 報告書の活用方法
- ヒヤリハット報告書
- 安全衛生の活動(安全週間、ヒヤリハット活動、KY活動、指差呼称)
- 会社の安全衛生活動
- KY活動
- 危険予知活動(KYK)とは
- 危険予知トレーニング(KYT)とは