2026年版のISO9001(JISQ9001)の文書化した情報の要求は、文言は変更されていますが、要求されている内容に変わりはありません。
とはいえ、文言の変更は「品質文書管理規定」だけでなく、「品質マニュアル」を含め全ての規定等に影響があるため見直しの範囲は広くなります。
改訂作業を工夫したり、現状把握とこれからの文書管理を考慮した見直しの機会としてもよいと考えています。
1 目的
本規定は、文書化した情報(品質文書及び記録)の管理に係わる手順、方法等を定め、品質文書及び記録を的確かつ効率的に管理することを目的とする。
2 適用範囲
当社の品質マネジメントシステムに関する文書化した情報(品質文書及び記録)に適用する。
3 文書・記録の種類
3.1 文書の種類
(1) 一次文書:品質マニュアル
全社の基本方針、全社的活動を取り決めた品質マネジメントシステムの概要を記述した文書
(2) 二次文書:規定
全社及び複数の部署に関連する規定で、業務遂行上の基本的事項を定めた文書
規定は、次の2つに分類できる。
- JISQ9001が要求する文書化した情報として管理する規定
- 品質文書管理規定
- 内部監査規定
- 不適合品処理規定
- 是正処置規定
- その他の業務規定
(3) 三次文書:標準
二次文書を補足する文書
主に単独の部署で使用する。
(4)品質文書及び記録(文書化した情報)
表1、表2、表3に示す文書化した情報
図面、仕様書、品質工程図、作業手順書、検査記録など
(5) 外部文書
- 法令
- 外部機関が発行するISO規格等の規格類
- 顧客より発行される仕様書
- 図面等業務上必要な文書
3.2 規格が要求する文書・記録、所管部署
規格JIS Q9001が要求する文書・記録を表1、表2、表3に示す。
規定等の所管部署を表4に示す。
規格の要求する文書化した情報の管理には、次のことが求められている。
- 文書化した情報を、必要な人が、必要なときに、必要なところで、入手可能で利用できるのこと
- 文書化した情報が、機密性の喪失(情報流出など)、不適切な使用(旧版と知らずに使用など)、完全性の喪失(文書の一部欠落など)から保護されていること
表1 文書化した情報:当社が検討する文書化した情報
| JISQ9001:2026 当社が検討する文書化した情報 | 文書 | |
|---|---|---|
| 1 |
4.4.2 組織は、次の事項に必要な程度まで、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 a)プロセスの運用を支援する。 b)プロセスが計画どおりに実施されたことの証拠として。 |
品質マニュアル 各規定 |
| 2 |
7.5.1 組織の品質マネジメントシステムは、次の事項を含まなければならない。 a)この規格が要求する文書化した情報 b)品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した、文書化した情報 |
品質マニュアル 各規定 |
| 3 |
7.5.3.2 文書化した情報の管理 品質マネジメントシステムの計画策定及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書化した情報は、必要に応じて識別し、管理しなければならない。 適合の証拠として利用可能な文書化した情報は、意図しない改変から保護しなければならない。 |
品質マニュアル 各規定 |
| 4 |
8.1 運用の計画策定及び管理 組織は、プロセスが計画どおりに実施されたという確信をもつために必要な程度に、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 製品及びサービスの適合の証拠として必要な程度に、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 |
必要に応じ作成 規定(営業、購買、設計開発、製造) |
表2 文書化した情報(文書)
| JISQ9001:2026 文書化した情報(文書) | 文書 | |
|---|---|---|
| 1 |
4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定 適用範囲は、文書化した情報として利用可能な状態にしなければならない。 |
品質マニュアル |
| 2 |
5.2.2 品質方針 a)文書化した情報として利用可能である。 |
品質方針 |
| 3 |
6.2.1 品質目標及びそれを達成するための計画策定 文書化した情報として利用可能な状態にする。 |
品質目標 品質目標計画 |
表3 文書化した情報(記録)
| JISQ9001:2026 文書化した情報(記録) | 記録 | |
|---|---|---|
| 1 |
7.1.5.1 一般 組織は、監視及び測定のための資源が目的と合致している証拠として、適切な文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 |
規定(検査) |
| 2 |
7.1.5.2 測定結果のトレーサビリティ a)そのような標準が存在しない場合には、校正又は検証に用いたよりどころを、文書化した情報として利用可能な状態にする。 |
検査設備台帳、校正記録、校正に用いた基準の記録 過去の計測結果の妥当性評価の記録 校正及び検証結果の記録 |
| 3 |
7.2 力量 組織は、力量の証拠として、適切な文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 |
教育・訓練の記録など |
| 4 |
8.2.3.2 (文書化した情報) 組織は、該当する場合には、必ず、次の事項に関する文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 a)レビューの結果 b)製品及びサービスに関する新たな又は変更された要求事項 |
インプット情報書 規定(設計開発、営業、購買) |
| 5 |
8.3.2 設計開発の計画 j)設計開発の要求事項を満たしていることを実証するために必要な文書化した情報 |
規定(設計開発) |
| 6 |
8.3.3 設計開発へのインプット 組織は、設計開発へのインプットに関する文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 |
インプット情報書 |
| 7 |
8.3.4 設計開発の管理 f)これらの活動の証拠として文書化した情報を利用可能な状態にする。 |
開発会議議事録、 試験結果報告書等 |
| 8 |
8.3.5 設計開発からのアウトプット 組織は、設計開発のアウトプットの証拠として、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 |
規定(設計開発) |
| 9 |
8.3.6 設計開発の変更 組織は、次の事項の証拠として、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 a)設計開発の変更 b)レビューの結果 c)変更の許可 d)悪影響を防止するための処置 |
開発会議議事録 |
| 10 |
8.4.1 一般 組織は、これらの活動及びその評価によって生じる必要な処置について、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 |
新規購買取引先評価表、 継続取引先評価表 |
| 11 |
8.5.1 製造及びサービス提供の管理 a)次の事項を定めた文書化した情報を利用できるようにし、かつ、使用する。 1)製品又はサービスの特性 2)実施する活動 3)達成すべき結果 |
規定(製造) |
| 12 |
8.5.2 識別及びトレーサビリティ d)トレーサビリティを可能とするために必要な文書化した情報を証拠として利用可能な状態にすることを確実にする。 |
製造:工程内検査記録、日報 検査:検査記録 出荷:出荷記録など |
| 13 |
8.5.3 顧客又は外部提供者の所有物 顧客若しくは外部提供者の所有物を紛失若しくは損傷した場合、又はその他これらが使用に適さないと判明した場合には、組織は、その旨を顧客又は外部提供者に報告しなければならない。発生した事柄の証拠として、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 |
支給品不適合の記録 |
| 14 |
8.5.6 変更の管理 組織は、変更のレビューの結果、変更を正式に許可した人(又は人々)及びレビューから生じた必要な処置の証拠として、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 |
規定(検査、設計開発) |
| 15 |
8.6 製品及びサービスのリリース 組織は、製品及びサービスのリリースの証拠として、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。これには、次の事項を含まなければならない。 a)合否判定基準への適合の証拠 b)リリースを正式に許可した人(又は人々)に対するトレーサビリティ |
検査記録 |
| 16 |
8.7.2 (不適合品に関する文書化した情報) 組織は次の事項の証拠として、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 a)不適合の性質 b)とった処置 c)取得した特別採用 d)不適合に関する処置について決定する権限をもつ者 |
不適合品処理の記録、 不適合発生の記録、 特採申請書 |
| 17 |
9.1.1 一般 組織は、この結果の証拠として、適切な文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 |
マネジメントレビュー実施結果 |
| 18 |
9.2.2 内部監査プログラム 組織は、監査プログラムの実施及び監査結果の証拠として、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 |
内部監査計画、 内部監査報告、 是正処置要求・報告(内部監査) |
| 19 |
9.3.3 マネジメントレビューの結果 組織は、マネジメントレビューの結果の証拠として、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 |
マネジメントレビュー実施結果 |
| 20 |
10.2.2 (文書化した情報の管理) 組織は、次に示す事項の証拠として、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。 a)不適合の性質及びそれに対してとったあらゆる処置 b)是正処置の結果 |
是正処置報告書 |
表4 規定等の所管一覧
| 文書名 | 品証 | 営業 | 技術 | 購買 | 製造 | 管理 |
| 品質マニュアル | ○ | |||||
| QMS組織・職務規定 | ○ | |||||
| マネジメントレビュー実施規定 | ○ | ○ | ||||
| 品質文書管理規定 | ○ | |||||
| 内部監査規定 | ○ | |||||
| 不適合品処理規定 | ○ | |||||
| 是正処置規定 | ○ | |||||
| 方針管理規定 | ○ | |||||
| 教育・訓練規定 | ○ | |||||
| 設計開発管理規定 | ○ | |||||
| 不具合管理規定 | ○ | ○ | ||||
| 営業業務規定 | ○ | |||||
| 購買管理規定 | ○ | ○ | ○ | |||
| 製造管理規定 | ○ | ○ | ||||
| 検査業務規定 | ○ | |||||
| 監視・測定機器管理規定 | ○ |
4 規定等の制改訂
規定等を作成する場合は、「規定等作成要領」に定める様式に従い作成する。
4.1 規定等の承認
規定等の制改訂は、当該文書の作成、検討、承認欄に各々権限を有する者が押印することによる。
規定等の承認について下表に示す。
|
一次文書 (品質マニュアル) |
管理責任者が立案し、社長が承認する。 |
|
二次文書 (規定) |
担当部署が起案し、担当部署長が承認する。 複数部署に関する場合には、管理責任者が確認する。 |
|
三次文書 (標準) |
担当部署が起案し、担当部署長が承認する。 |
4.2 規定等の改訂箇所の識別
(1) 改訂する文書には、改訂年月日を記入し、改訂履歴に、版数、改訂内容を記載する。
(2) 改訂箇所は赤字とする。なお、全面改訂の場合は改訂箇所を赤字にしなくてもよいものとする。
4.3 規定等の最新版管理
(1) 管理責任者は、制改訂された規定等を受理後、常に最新版を管理する。
(2) 制改訂された規定等については、通達により周知する。
4.4 規定等の原紙の保管・管理
管理部が行う。
4.5 規定等の解釈等に違いを生じた場合
管理責任者は、規定等の解釈等に違いが生じた場合、統一を図るため通達を発行する。
当該規定等は、通達の内容を盛り込んで改訂し、その時点で通達文書を廃止とする。
5 規定等のレビュー(文書レビュー)
(1) 規定等の文書レビューは、所管部署が毎年実施する。ただし、所管部署長が必要と判断した場合には都度改訂できる。
(2) 所管部署は、規定等のレビューを実施し、その進捗を管理する。改訂を行う場合は、「4 規定等の制改訂」による。
6 規定等の配布、管理
6.1 規定等制改訂の通達
(1) 管理責任者は、規定等の制改訂について通達を出し、制改訂した規定等を各部署に配布する。
(2) 管理部は、制改訂した規定等を社内共有サーバーに登録する。
6.2 最新版の管理
(1) 管理部は、制改訂した規定等の最新版を、社内共有サーバーで管理する。
(2) 配布文書を受領した部署長は、旧版と最新版の差替えを行い、旧版を破棄する。
(3) 部署長は、通達で示された最新版について部署内に周知する。
6.3 旧版の利用
旧版を業務の都合で使用する場合は、最新版と区別する。
例えば、「旧版」のスタンプを押す。
7 規定等の管理(文書・記録の承認、維持管理)
(1) 品質文書は、発行番号、改訂履歴を残すことを基本とする。
(2) 品質文書・記録は、作成(担当)、検討(審査)、承認の押印をする。
8 規定等の保管・廃棄
(1) 各部署は、文書と記録を読みやすく、容易に検索できるように管理する。
例1 文書、記録のファイルの背表紙に文書、記録の名称等を明記する。
例2 同種のファイルが複数となる場合は、ファイル番号を背表紙に表示する。
(2) 電子化している場合には、ファイル名やリストによりタイトル、作成(改訂)日等と共に最新版がわかるように管理する。
(3) 各部署は、利用したいときに利用できるように文書、記録の保管場所を定め、所定の場所に保管する。
(4) 品質記録については、劣化、損傷、紛失等を防止できる保管場所を定めて管理する。
(5) 品質文書、記録の保管部署、保管期間は「文書・記録保管期間標準」による。
(6) 各部署は、保管期限を過ぎた品質文書、記録を廃棄する。
9 規定等の廃止
(1) 規定等を廃止する場合は、管理責任者より通達を発行する。
(2) 各部署は、通達を受け当該規定等を破棄する。
10 原紙の管理、品質文書・記録の電子保管
(1) 品質文書・記録は、原紙(紙)保管が必要な場合を除き、電子媒体を基本とする。
(2) 部署内文書は各部署で利用できるように管理する。
11 文書・記録等の電子化
文書・記録等の電子化の進め方や注意事項について示す。
11.1 文書・記録等電子化の注意事項
(1) 電子化されたデータを利用できる人と権限を制限すること
データには、必要な権限(参照、ダウンロード、印刷、配布など)を設定する。
データを利用できる人(範囲)を決める際には、「Need to Knowの原則」により、必要なデータに対してのみ利用を許可する。
- Need to Knowの原則:情報は知る必要がある者にのみ与え、知る必要のない者には与えない。
(2) 電子化されたデータをパソコン等の画面で読めること
(3) 必要なデータを検索して特定できること
例1 電子化したデータをリストで管理する。(台帳管理)
例2 ファイル名に、データの種類や日時を記載する。(ファイル名のルール化)
11.2 電子化の進め方の例
(1) 電子化対象の選定
不要な書類は廃棄する。
電子化の対象は、活用頻度が高く素早く探したい書類に絞る。
過去の文書・記録等は、保管期間を考慮しどこまで電子化の対象とするか決める。
(2) データ形式や管理方法
電子化に必要な考慮事項を下表に示す。
| 考慮事項 | 内容 |
|---|---|
| 書類サイズ |
A4サイズを基本とする。 原本がA4以外の場合、原則実寸で取り込む。 |
| 解像度 |
用途に応じたスキャン解像度にする。 スキャン解像度が高過ぎるとファイルサイズが大きくなり閲覧や保管に支障がある。 例1 一般的な文書は200dpi 例2 細かい文字のある文書や写真などは300~400dpi |
| ファイル形式 |
ファイル形式は原則PDFとする。 画像ファイルの場合、jpgやpngなどの画像形式を決める。 元のファイル(WORDやEXCELなど)を残すかどうか決める。 |
| ファイル名 |
ファイル名は、検索しやすいルールを決める。 例 [作成年月]-[内容]-[作成者]-[バージョン] |
| データファイルの管理方法 |
ファイルや保管するフォルダ構造を検索しやすくする。 例1 探しやすいフォルダ構造 例2 リスト管理 |
| その他 | 電子化した文書・記録等はいつまで保管し、廃棄するか決める。 |
12 外部文書の管理
(1) 外部文書(原紙)の保管部署を下表に示す。原紙保管部署が、最新版管理をする。
| 外部文書の種類 | 品証 | 技術 | 製造 |
|---|---|---|---|
| ISO(JIS)等の規格 | ○ | ○ | ○ |
| 顧客の規格 | ○ | ||
| 顧客の仕様書・図面等 | ○ | ||
| 顧客の品質に関する文書等 | ○ |
(2) 外部文書の配布は原紙保管部署が、本規定「6 規定等の配布、管理」に準拠して管理する。
