このブログで公開している、20名規模のモノづくりメーカーを想定して作成した、「品質マニュアルと関連規定」をベースに、ISO9001のQMS改善のヒントになればと思い、ISO9100:2016に対応させた品質マニュアルと関連規定を作りました。
[ISO9100:2016版品質マニュアル]
- 1. 総則
- 2. 適用規格
- 3. 用語の定義
- 4.組織の状況(当社全体に関すること)
- 5.リーダーシップ
- 6.計画(事業計画)
- 7.支援(品質目標達成のためのサポート)
- 8.運用(行動、日々の業務)
- 9.パフォーマンス評価(結果の評価)
- 10.改善
- まとめ
1. 総則
1.1 目的(ビジョン)
株式会社○○(以下、当社という)は、顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たす製品を提供し、顧客満足の向上を実現するために、品質マネジメントシステム規格JIS Q 9100に準拠した品質保証体制を確立し、品質マネジメントシステムの継続的な改善活動を全社員で実行する。
ここには、会社のビジョンを書くとよいと思います。
ビジョンについては以下の記事をご参照ください。
1.2 適用範囲
(1)対象製品/サービスの適用範囲
当社の航空機用部品の製造
当社の航空機用組立部品の製造及びサービス提供(オーバーホール)
適用範囲はISO9001の場合よりも具体的(限定的)な表現になります。
協力会社についても自社と同様の品質管理を要求・実施することを明確に意識しておく必要があります。
「何をどこまでやるか」は、品質マニュアルの一貫性を保つためにも重要です。
(2)対象組織
株式会社 ○○
上記対象製品/サービスの製造及びサービス提供
対象組織(拠点)と適用範囲との関係を明確にします。
ここでは、「本社=自社工場」を想定しています。
(3)要求事項の除外
要求事項についての適用除外はない。
2. 適用規格
(1)この品質マネジメントシステムは、次の規格に準拠する。
JIS Q 9100 品質マネジメントシステム - 航空、宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項
JIS Q 9001 品質マネジメントシステム - 要求事項
JIS Q 9000 品質マネジメントシステム - 基本及び用語
JIS Q 9100は、JIS Q 9001の要求事項に対して、航空宇宙及び防衛産業の要求事項、定義及び注記などを追加したものなので、適用規格に含めています。
(2)参考規格
JIS Q 9004 組織の継続的成功のための運営管理 - 品質マネジメントアプローチ
JIS Q 9004は無くてもよいのですが、マネジメントシステムを理解するための参考になるため、参考規格としています。
ISO9100では二者監査も審査同様に行うことが想定されるので、参考規格としています。
【参考】JIS規格の詳細は、ネットで見ることができます。
以下の日本産業標準調査会(JISC)の「JIS検索」のリンク先を参照してください。
3. 用語の定義
本品質マニュアルで使用する用語は、JIS Q 9001に規定される定義による他、下表による。
用語 | 定義 |
---|---|
品質文書 | 品質マネジメントシステムに関する文書の総称 |
規定等 | 品質マニュアル、規定、標準をいう。 |
JISQ9100の用語及び定義で、追加された以下の5つの用語については、自社内で具体的な例を加えて説明した方がよいと考えています。
- 模倣品(counterfeit part)
- クリティカルアイテム(critical items)
- キー特性(key characteristic)
- 製品安全(product safety)
- 特別要求事項(special requirements)
例えば、ISO9100の用語と共に、ISO9001の用語についても、自社内で使われている言葉との関係を補足説明するなどして、明確にしておくことが必要です。
「ISO9001は分かりやすさ重視」でよいと考えていますが、「ISO9100の場合には正確性についても考慮が必要」です。
ISO9100では、ISO9001よりも言葉の定義を意識する必要があります。
乱暴な例えになりますが、「できる範囲で済ませるISO9001と義務の履行(義務を確実に果たす)を求められるISO9100」というイメージを持っています。
4.組織の状況(当社全体に関すること)
4.1 組織及びその状況の理解(当社を取り巻く状況)
社長は、当社の目的及び戦略的な方向性と一致して持続的に発展するために、品質マネジメントシステムを適用し、外部及び内部の課題をマネジメントレビューにおいて明確にし、監視する。
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解(利害関係者の要求事項)
社長は、品質マネジメントシステムの運用に密接に関連する利害関係者及びその要求事項について、マネジメントレビューにおいて明確にし、それらに関する情報を監視し、レビューする。
4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定(QMSで管理する仕事の範囲)
社長は、次の事項を考慮した品質マネジメントシステムの適用範囲をマネジメントレビューにおいて決定する。
a)4.1に規定する外部及び内部の課題
b)4.2規定する、密接に関連する利害関係者の要求事項
c)当社の製品及びサービス(1.2 適用範囲)
4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス(QMSの概要)
4.4.1 品質マネジメントシステム(QMSの基本的な考え方)
当社は、JIS Q 9100の要求事項に従い確立した品質マネジメントシステムを、実施し、維持し、かつ、継続的に改善する。
当社の品質マネジメントシステムは、顧客及び適用される法令・規制上の品質マネジメントシステム要求事項も取り扱う。
文章にすれば1行ですが、「顧客及び適用される法令・規制上のQMS要求事項」を含めるため、品質マニュアルの適用範囲について、顧客や製品などを具体的にイメージすることが重要になってきます。
適用範囲が狭すぎるのも問題ではありますが、適用範囲が広すぎたり、あいまいな部分があると、規格要求に対し何をするかがぼやけてきます。
品質マニュアルはまだしも、規定や標準等を作る際に検討範囲のボリュームに圧倒されてしまうのではないかと考えています。
ひとまず最小限の適用範囲(例えば具体的な1製品に絞る)とし、ゴールを目指し、形ができたら適用範囲を広げていくのがよいと考えています。
「品質マネジメントシステム体系図」に示す品質マネジメントシステムに必要なプロセスについて、次の事項を実施する。
「品質マネジメントシステム体系図」と「組織図」は、ISO9001版品質マニュアルと同じとしています。
a)プロセスに必要なインプット、プロセスから期待されるアウトプット、及び各プロセスの順序及び相互作用を「品質マネジメントシステム体系図」に示す。
b)プロセスの効果的な運用及び管理を確実にするために必要な判断基準及び方法(監視、測定及び関連するパフォーマンス指標を含む)を「9 パフォーマンス評価」に示す。
c)プロセスに必要な資源を「7.1 資源」に明確にし、それが利用できるようにする。
d)プロセスに関する責任及び権限を「表1 主要業務の責任と権限」に示す。
e)「6.1 リスク及び機会への取組み」により決定したとおりにリスク及び機会に取り組む。
f)意図した結果を確実に達成するために、プロセスの評価と必要な変更を実施する。
g)プロセス及び品質マネジメントシステムを改善する。
4.4.2 品質マネジメントシステムのプロセス(QMSの文書と記録)
当社は、文書化した情報(文書・記録)について「品質文書管理規定」に定める。
様々なプロセスを正しく行うために必要な情報を、必要に応じ改定し適切な状態を保ち、その事を証明する記録を適切に保管する。(7.5参照)
当社は、次の事項を含む、文書化した情報を作成し、維持する。
- 密接に関連する利害関係者の全般的記述(4.2参照)
- 境界及び適用可能性を含む、品質マネジメントシステムの適用範囲(4.3参照)
- 品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの組織全体への適用の記述(「品質マネジメントシステム体系図」)
- これらのプロセスの順序及び相互関係(「品質マネジメントシステム体系図」)
- これらのプロセスに関する責任及び権限の割当て(「表1 主要業務の責任と権限」「表6 品質マニュアルの項と関連規定」、「品質文書管理規定 表3 規定等の所管一覧」)
文書化された情報は、ISO9001よりも検討範囲が広くなり、取り決めもより具体的になります。
検討範囲と深さを考慮して段階的に進めていくとよいと考えています。
5.リーダーシップ
「1.1 目的(ビジョン)」が具体的で分かりやすいと、現在地からありたい姿に向かいどの様に取り組んでいくかも見えてくると思います。
経営理念、活動指針、会社のありたい姿など、会社の目的(ビジョン)がイメージしやすいと、内部監査でもどの様な「リーダーシップ」であるのか見えてくるようです。
5.1 リーダーシップ及びコミットメント(社長の役割)
5.1.1 一般(社長のリーダーシップ)
社長は、次の事項により、品質マネジメントシステムに関するリーダーシップ及びコミットメントを実証する。
a)品質マネジメントシステムの有効性に説明責任を負う。
b)品質方針及び品質目標を定め、それらを当社の状況及び戦略的な方向性と両立させる。
c)品質マネジメントシステム要求事項を当社の事業プロセスに統合させる。(品質マネジメントシステム要求事項を会社経営の仕組みの一部として機能させる。)
d)プロセスアプローチ及びリスクに基づく考え方(4.4 参照)の利用を促進する。
e)品質マネジメントシステムに必要な資源を利用できるようにする。
f)有効な品質マネジメント及び品質マネジメントシステム要求事項への適合の重要性を伝達する。
g)品質マネジメントシステムがその意図した結果(期待した結果)を達成するようにする。
h)品質マネジメントシステムの有効性に寄与するよう人々を積極的に参加させ、指揮し、支援する。
i)改善を促進する。
j)その他の関連する管理層(部署長)がその責任の領域においてリーダーシップを実証するよう、部署長の役割を支援する。
5.1.2 顧客重視(顧客を重視すること)
社長は、顧客重視についてリーダーシップを発揮し、責任を果たすため、顧客のニーズ及び期待が満たされている程度について、顧客がどのように受け止めているか監視する。
このため、顧客要求事項及び法令・規制要求事項を明確にして顧客との約束を守り、製品・サービスの品質や顧客満足に影響する「リスクへの対策」及び「機会を生かすための活動」に取り組み、顧客満足の向上を要員に常に意識させる。
また、製品及びサービスの適合並びに納期どおりの引渡しに関するパフォーマンスを測定し、計画した結果が達成できない、又は達成できる見込みがない場合には、適切な処置をとる。
最後の一文がISO9100の要求ですが、以下のことを明確に要求されています。具体的にどうするかは、関連規定に定めることにします。
・品質保証(適合)
・納期遵守の状況(パフォーマンス)の計測
・計画達成の見込みがない場合に適切な処置をとること
5.2 方針(品質方針の決定と周知)
5.2.1 品質方針の確立(品質方針を決定すること)
社長は、次の内容を含む品質方針を決め、この品質方針に従い会社を運営する。必要な場合には、品質方針を見直す。
a)会社の目的にふさわしく、取り巻く状況を反映し、経営戦略に沿って、進むべき方向を示す。
b)品質目標を決められるように、実現しようとする内容の具体的なイメージを示す。
c)顧客要求事項及び法令・規制要求事項を満たし、顧客との約束を守る。
d)品質マネジメントシステムの改善に継続的に努めることを約束する。
5.2.2 品質方針の伝達(品質方針を周知すること)
社長は、品質方針を掲示し、要員に理解させ取り組ませる。
必要に応じて、密接に関連する利害関係者が入手できるようにする。
品質方針は、そうそう変わるものではありませんので、自社のWebサイトに公開する場合が多いようです。
5.3 組織の役割、責任及び権限(社長の役割・責任・権限、管理責任者の責任・権限)
5.3.1 社長の役割、責任及び権限
社長は、関連する役割に対し責任及び権限を割り当て、次の事項が正しく行われるように管理する。
社長は、当社の管理層(管理職、マネジメント職)から管理責任者を任命し、管理責任者に以下のa)~d)項について監督する責任及び権限を割り当てる。管理責任者は複数名でもよい。
管理責任者を複数名にする場合には、不在時や緊急時を含めた役割分担をあらかじめ定め、コミュニケーションを保つことが必要になります。
社長は、管理責任者が品質マネジメントの問題を解決するために、組織上の自由をもち、かつ、制約なく社長に接触できるようにする。
品質マネジメントに関する問題について、社長と管理責任者の役割分担だけでなく、日頃のコミュニケーションについても定期的なホウレンソウと緊急時対応などについて具体的な配慮が必要です。
責任及び権限を「表1 主要業務の責任と権限」に、組織を「組織図」に示す。
「品質マネジメントシステム体系図」と「組織図」は、ISO9001版品質マニュアルと同じとしています。
a)品質マネジメントシステムが、この規格の要求事項に適合する。
b)プロセスが、意図したアウトプット(品質目標の達成、要求事項を満たす製品の提供、顧客満足の向上など)を生み出す。
c)品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び改善(10.1 参照)の機会を把握する。
d)全社にわたって、顧客重視を促進することを確実にする。(顧客重視の考え方を要員に理解させ顧客を重視した仕事のやり方を行わせる)
e)品質マネジメントシステムへの変更を計画し実施する場合には、品質マネジメントシステムが“完全に整っている状態”を維持する(一部の変更により品質マネジメントシステム全体のバランスが崩れたり、他の部分と矛盾が起こらないようにする)。
5.3.2 管理責任者(管理責任者の責任と権限)
管理責任者は、与えられている他の責任とかかわりなく、5.3.1 a)~e)項及び次の事項に対して責任及び権限を持つ。
a)品質マネジメントシステムに関する事項について、外部関係者との連絡調整を行う。
ISO9100の場合、管理責任者を複数指名し、必要な責任と権限を明確にして分担するのが現実的かもしれません。
表1 主要業務の責任と権限
●:責任(主管)部署 ○:関係(関連)部署
項目 | 社長 | 品質保証 | 管理 | 技術 | 製造 | 営業 | 購買 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
4 組織の状況 | |||||||
4.1 組織及びその状況の理解 | ● | ||||||
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解 | ● | ||||||
4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定 | ● | ||||||
4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
5 リーダーシップ | |||||||
5.1 リーダーシップ及びコミットメント | ● | ||||||
5.2 方針 | ● | ||||||
5.3 組織の役割、責任及び権限 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
6 計画 | |||||||
6.1 リスク及び機会への取組み | ● | ||||||
6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
6.3 変更の計画 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7 支援 | |||||||
7.1 資源 | |||||||
7.1.1 一般 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7.1.2 人々 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7.1.3 インフラストラクチャ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7.1.4 プロセスの運用に関する環境 | ● | ● | ○ | ||||
7.1.5 監視及び測定のための資源 | ● | ● | |||||
7.1.6 組織の知識 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7.2 力量 | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | |
7.3 認識 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7.4 コミュニケーション | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
7.5 文書化した情報 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |
8 運用 | |||||||
8.1 運用の計画及び管理 | ○ | ○ | ● | ● | ● | ● | |
8.2 製品及びサービスに関する要求事項 | ○ | ○ | ○ | ● | ○ | ||
8.3 製品及びサービスの設計・開発 | ○ | ● | ○ | ○ | |||
8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理 | ● | ● | |||||
8.5 製造及びサービス提供 | ● | ● | |||||
8.6 製品及びサービスのリリース | ● | ○ | ○ | ||||
8.7 不適合なアウトプットの管理 | ● | ○ | ● | ○ | ● | ||
9 パフォーマンス評価 | |||||||
9.1 監視、測定、分析及び評価 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
9.2 内部監査 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
9.3 マネジメントレビュー | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
10 改善 | |||||||
10.1 一般 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |
10.2 不適合及び是正処置 | ● | ○ | ○ | ● | ○ | ● | |
10.3 継続的改善 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
- 注1:品質保証は管理責任者とISO事務局を含む。
- 注2:設計開発は、主に設計を担当する技術と、主に製造を担当する製造とに分けて記載しています。
- 注3:購買は、主として営業が担当すると想定しています。
「表1 主要業務の責任と権限」は、ISO9001版品質マニュアルと同じとしています。ISO9100要求事項の追加要求事項の責任と権限については、マニュアルでの対応ではなく関連規定に明記します。
6.計画(事業計画)
計画について要求事項の変更はありませんが、実際に計画の中身「(実際にやること)=(関連規定)」は、見直しが必要となります。
6.1 リスク及び機会への取組み(リスクを洗い出し、備え、機会(チャンス)を活かす取組み)
ISO9000シリーズでは、ISMSのようなリスクアセスメントまでは求められていませんが、ISO9001よりもリスクについて正面から(程度差はありますが本格的に)取り組む必要があると考えています。
マネジメントレビューは年1回としていますが、計画の進捗状況などについて、日頃から共通の認識を持つため情報共有に加え、各階層でコミュニケーションを保つ工夫が必要になってくると考えています。
6.1.1 リスク及び機会の決定(リスクや機会(チャンス)を洗いだす)
社長は、次の事項のために取り組む必要があるリスク及び機会を決定し、マネジメントレビューにおいて明確にする。
これは、4.1に規定する課題(会社を取り巻く状況)及び4.2に規定する要求事項(利害関係者の要求事項)を考慮し、品質マネジメントシステムの計画(品質に関する仕組みやルール)を決める前に実施する。
a)品質マネジメントシステムが意図した結果を達成できるという確信を与える。(品質目標の達成、要求事項を満たす製品提供、顧客満足の向上など)
b)望ましい影響を増大する。(望ましい結果をより良くする)
c)望ましくない影響を防止又は低減する。(望ましくない結果を防ぐ、又は影響を小さくする)
d)改善を達成する。(改善の結果より良い結果を出す)
6.1.2 リスク及び機会の計画(リスクへの対策と機会(チャンス)を活かす行動計画)
社長は、リスク及び機会について、マネジメントレビューにおいて次の事項を明確にし、計画的に取組む。リスクへの対策や機会を生かす活動は、潜在的な影響(予想される問題の大きさや、得られるメリット)に見合ったレベルで行う。
a)上記により洗い出したリスク及び機会についての「リスクへの対策」または「機会を生かす活動」
b)このような対策や活動を、通常業務の流れ(プロセス)の中に、ルールや計画として組み入れる。(品質マネジメントシステムプロセスへの統合及び実施)(4.4 参照)
c)「リスクへの対策」「機会を生かすための活動」の結果を確かめる。(有効性の評価)
6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定(品質目標とその活動計画)
社長は、品質目標を達成するための計画をマネジメントレビューにおいて明確にする。
6.2.1 品質目標の確立(品質目標を決定すること)
社長は、品質マネジメントシステムに必要な、関連する機能、階層及びプロセスにおいて、「方針管理規定」に従い品質目標を決める。それを受けて、部署長は部署の品質目標を定める。
社長は、次の事項を満たす品質目標を文書で定め、変更した場合にはこの文書も改訂する。
a)品質方針と整合している。(品質方針を実現する手段となっている)
b)測定可能である。(目標の進捗状況や結果が、数値やその他の方法で判かる)
c)適用される要求事項(製品に求められている品質、法令・規制など)を考慮に入れる。
d)製品及びサービスの適合、並びに顧客満足の向上に関連している。
e)監視する。(目標の進捗状況をチェックする)
f)伝達する。(目標で定めた内容や結果を、関係者に伝える)
g)必要に応じて、更新する。(状況が変わった場合には、目標の内容を修正する)
6.2.2 品質目標の計画(品質目標を達成するための計画を作ること)
部署長は、品質目標を達成するため、次の事項を決め「方針管理規定」に従い品質目標実施計画を作成する。
a)実施事項
b)必要な資源(必要な要員、そのために使用する設備など)
c)責任者
d)実施事項の完了時期(それぞれの実施事項の完了予定時期)
e)結果の評価方法(実施した結果を評価する方法)
6.3 変更の計画(品質マネジメントシステムの変更に関する計画)
社長は、品質マネジメントシステムの変更をするとき、その内容をマネジメントレビューで決定する(4.4 参照)。
変更は次の事項を考慮し、変更のための段取りや確認事項などを計画して行う。
a)変更の目的、及びそれによって起こり得る結果(変更する目的、変更により得ようとしている結果、変更の影響により起こる結果)
b)品質マネジメントシステムの“完全に整っている状態” (一部の変更により、全体のバランスが崩れたり、他の部分と矛盾が起こらないようにする)
c)資源(変更の実施や検証に使用する要員や設備など)の利用可能性
d)責任及び権限の割当て又は再割当て(変更される仕組みやルールの責任・権限、変更による責任・権限の変更の必要性)
ここでは品質マネジメントシステムの計画に関する変更です。
一般論として、計画作成時には様々な事前検討が行われますが、変更についてはどこまで検討範囲に加えればよいかの判断が難しいこともあり、あまり意識されず、結果的に出たとこ勝負になってしまうこともあります。
計画通り進めることが目的ではないので、計画の変更は発生するという前提で、計画を変更するための条件や方法について、事前に検討しルール化しておくことが重要だと考えています。
7.支援(品質目標達成のためのサポート)
支援については、「1.2 適用範囲」及び「4.4.1 品質マネジメントシステム」に関連する当社以外の利害関係者(顧客や協力会社)についても必要に応じ適用する。
自社以外についても関連があることを明確にするため、上記の1文を追加しています。
7.1 資源(要員(社員)・建物・設備)
7.1.1 一般(必要な資源を決定すること)
社長は、品質マネジメントシステムを運用し改善するために、必要な建物や設備などを用意し、要員を確保する。
このため、必要なものが必要な時に使えるように、マネジメントレビューにて、次の事項を考慮し決定する。
a)既存の内部資源の実現能力及び制約(既存の設備、要員などでできること、できないこと)
b)外部提供者から取得する必要があるもの
(新たに用意しなければならない設備、外注により取得する必要があるものなど)
7.1.2 人々(要員(社員))
社長は、品質マネジメントシステムを実行して良い結果を出す(製品の品質を確かなものとし、顧客の満足を得る)ため、品質マネジメントシステムの各プロセスを運用・管理するために必要な要員を明確にし、確保し、従事させる。
7.1.3 インフラストラクチャ(建物、設備など)
社長は、各プロセスを運用し、要求事項を満たす製品を顧客に提供するために必要なインフラストラクチャを用意する。
これには、受注から、設計開発、製造、納品、アフターサービスまですべてを考慮する。
必要なインフラストラクチャを「表2 インフラストラクチャ一覧表」に示す。
表2 インフラストラクチャ一覧表
インフラストラクチャ | 管理部署 | 内容 | 記録 |
---|---|---|---|
本社 | 管理部 | 建物及び建物の一部等の管理 | 資産台帳、点検記録 |
設備等 | 各部 | 設備等の管理 | 設備台帳、点検記録 |
OA機器等 | 管理部 | ネットワーク等の管理機器等の適切な管理 | ユーザー管理台帳 |
基幹システム | 管理部 | 販売、生産、会計等の管理 | ユーザー管理台帳 |
一般(什器・設備) | 管理部 | 一般(什器・設備)の管理 | 設備台帳 |
製造設備やICT関連設備を含めたインフラストラクチャについては、ISO9001に比べると対象が広くなりますし、管理方法についても具体的に定める必要があります。
規定への反映が必要になると思われますが、実際に継続して管理できるように実効性のあるインフラストラクチャの管理方法について検討するよい機会にもなると考えています。
7.1.4 プロセスの運用に関する環境(作業場所の環境)
要求事項を満たす製品を顧客に提供するためのプロセスの運用に必要な次の環境を整え管理する。
a)管理部長は、業務推進のために必要な職場環境を管理する。
b)技術部長は、開発(製造)現場の環境(製品品質の確保、安全衛生等)を管理する。
7.1.5 監視及び測定のための資源(監視・測定のための機器)
7.1.5.1 一般(監視・測定のための機器の管理)
監視及び測定について「監視・測定機器管理規定」に定める。
監視及び測定に必要な資源(監視・測定のための機器)を明確にし、適切に維持し、必要な文書化した情報を保持する。
7.1.5.2 測定のトレーサビリティ(測定値を保証する、トレースできるようにすること)
測定のトレーサビリティについて、「監視・測定機器管理規定(QM9100版)」に定める。
規定要求事項にかかわる監視及び測定にコンピュータソフトウェアを使う場合には、最初に使用する前に意図した監視及び測定ができることを確認する。
また、必要に応じて再確認を実施する。
以下について、「監視・測定機器管理規定」に定める。
- 校正又は検証を必要とする監視機器及び測定機器の回収に対するプロセスを確立し、実施し、維持する。
- 監視機器及び測定機器の登録を維持する。登録には、機器の種類、固有の識別、配置場所、校正又は検証の方法、頻度及び判定基準を含める。
- 監視機器及び測定機器の校正又は検証は、適切な環境条件の下で実施する(7.1.4 参照)。
ISO9100の「測定のトレーサビリティ」に関する追加要求は、ISO9001でもやるべき(やっている)ことですが、適用範囲とその深さについては検討が必要です。
7.1.6 組織の知識(会社のノウハウ)
組織の知識について「教育・訓練規定」に定め、当社の知識を維持し、必要な範囲で利用できる状態にする。
7.2 力量(要員の力量)
製品要求事項への適合に影響がある業務には、適切な教育、訓練、技能及び経験を判断の根拠として力量を有する要員を従事させる。
「教育・訓練規定」に従い、次の事項を行う。
a)品質マネジメントシステムの運用に必要な力量を明確にする。
b)適切な教育、訓練又は経験に基づいて、それらの要員の力量を把握する。
c)力量が不足する場合には、必ず、必要な力量を身に付けるための処置をとり、とった処置の有効性(力量が得られたか)を評価する。
また、その他の手段で力量がある要員を確保した時も、その要員の力量を確かめる。
d)力量を証明する記録として、教育・訓練や指導の記録、経験・資格の記録、力量を判定した記録などを保管する。
なお、必要な力量について、定期的にレビューを行う。
7.3 認識(要員の認識)
社長及び部署長は、「教育・訓練規定」に従い、当社の管理下で働く要員に、次の事項を正しく認識させるため、周知、教育・訓練、指導などを行う。
a)品質方針
b)関連する品質目標(各要員・部署の仕事に関係する品質目標)
c)パフォーマンスの向上により得られる便益を含む、品質マネジメントシステムの有効性に対する自らの貢献(製品及びサービスの質の向上と品質目標達成ために、どのような役割を担っているか)
d)品質マネジメントシステム要求事項に適合しないことの意味(決められたルールを守らないと、どの様な問題が起こるか)
e)品質マネジメントシステムに関連する文書化した情報及びその変更
f)製品又はサービスの適合に対する自らの貢献
g)製品安全に対する自らの貢献
h)倫理的行動の重要性
ISO9100の「認識」では、e)~h)の4項目が追加されています。
周知するだけでは不十分であり、a)~h)の全てについて社員全員が認識することを要求されています。
ISO9100の追加4項目は、ISO9001でも認識させるよう取り組んでいるとは思われますが、全社員に一律の教育・訓練だけでなく、ISO9100の適用製品やプロセスに関わる社員や職位に応じた教育・訓練が必要かつ有効になってくると考えています。
7.4 コミュニケーション(情報の意志疎通)
社長及び部署長は、社内で仕事に必要な情報(業務指示・連絡・報告・共有データなど)が正しく伝わるように管理する。
また、社外の関係者との情報交換が正しく行われるように管理する。
なお、コミュニケーションには、品質マネジメントシステムに関連する内部及び外部からのフィードバックを含めるようにする。
フィードバックは、相手があることなので「含める」と言い切っていません。
ここでのコミュニケーションとは、例えば、開発会議に関連部署以外のメンバーを含め意見を聞いたり、顧客や協力会社などの外部関係者を加え意見を聞くことなどが考えられます。
また、フィードバックは、何のために何を求めるか考え、継続して見直していく必要があると考えています。
品質マネジメントシステムに関連するコミュニケーションについて、以下に示す。
a)内部コミュニケーション
会議体を「表4 会議体」に示す。
会議が開催できない場合は、必要に応じてそれに代わる手段を取る。
表4 会議体
名称 | 役割 | 担当者(部署) |
---|---|---|
取締役会
|
議長 | 社長 |
出席者 | 部長 | |
事務局 | 管理部 | |
開催頻度 | 月1回 | |
審議事項 | 会社の重要事項の審議・決議 | |
営業会議
|
議長 | 社長 |
出席者 | 部長 | |
事務局 | 営業部 | |
開催頻度 | 月1回 | |
審議事項 | 計画推進状況の報告他 | |
開発会議
|
議長 | 技術部長 |
出席者 | 社長、部長 | |
事務局 | 技術部 | |
開催頻度 | 月1回 | |
審議事項 | 設計・開発など技術に関する事項 | |
部内会議
|
議長 | 部長 |
出席者 | 部長が決定 | |
事務局 | 部長が指名 | |
開催頻度 | 部長が決定 | |
審議事項 | 情報連絡・意見交換 |
会議体について、ISO9100では定期的な確認事項も増えると思われますので、会議中の単なる確認は事前配布資料で済ませるなどの工夫も必要になってきます。
b)外部コミュニケーション
顧客については、8.2.1 顧客とのコミュニケーションに示す。
協力会社については、8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理に示す。
その他については、「表5 外部コミュニケーション」に示す。
表5 外部コミュニケーション
内容 | 実施時期 | 対象者 | 方法 | 担当部署 |
---|---|---|---|---|
ISO9001に関すること | 通年 | 審査機関 | メール、電話、Web | 管理責任者、 ISO事務局 |
法令、契約 | 通年 | 役所 | メール、電話、Web | 管理部 |
7.5 文書化した情報(文書・記録)
7.5.1 一般(必要な文書・記録)
次の文書化した情報を「品質文書管理規定」に定め、品質マネジメントシステムを運用する。
品質マニュアルの関連規定を「表6 品質マニュアルの項と関連規定」に示す。
a)この規格が要求する文書化した情報(適用範囲は1.2参照)
b)当社が品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると決定した文書化した情報
表6 品質マニュアルの項と関連規定
品質マニュアル | 関連規定 |
---|---|
4 組織の状況 | - |
4.1 組織及びその状況の理解 | - |
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解 | - |
4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定 | - |
4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス | - |
5 リーダーシップ | - |
5.1 リーダーシップ及びコミットメント | - |
5.2 方針 | - |
5.3 組織の役割、責任及び権限 | - |
6 計画 | - |
6.1 リスク及び機会への取組み | - |
6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定 | 「方針管理規定」 |
6.3 変更の計画 | 「方針管理規定」 |
7 支援 | - |
7.1 資源 | 「監視・測定機器管理規定」 |
7.2 力量 | 「教育・訓練規定」 |
7.3 認識 | 「教育・訓練規定」 |
7.4 コミュニケーション | - |
7.5 文書化した情報 | 「品質文書管理規定」 |
8 運用 | - |
8.1 運用の計画及び管理 | 「プロジェクト・マネジメント規定」 |
8.2 製品及びサービスに関する要求事項 |
「苦情処理規定」 「営業業務規定」 |
8.3 製品及びサービスの設計開発 | 「設計・開発管理規定」 |
8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理 | 「外注・購買管理規定」 |
8.5 製造及びサービス提供 | 「製造管理規定」 |
8.6 製品及びサービスのリリース | 「検査業務規定」 |
8.7 不適合なアウトプットの管理 | 「不適合品処理規定」 |
9 パフォーマンス評価 | - |
9.1 監視、測定、分析及び評価 | 「営業業務規定」 |
9.2 内部監査 | 「内部監査規定」 |
9.3 マネジメントレビュー | - |
10 改善 | - |
10.1 一般 | - |
10.2 不適合及び是正処置 |
「不適合品処理規定」 「是正処置規定」 |
10.3 継続的改善 | - |
7.5.2 作成及び更新(文書・記録の作成と改定)
文書化した情報の作成及び改定について「品質文書管理規定」に定め、実施する。
なお、承認とは、組織の決定どおりに、関連する文書化した情報の種類に対して、(承認)権限をもつ人々及び承認方法が特定されていることである。
「承認」について、具体的に定めることが求められています。
ルール通りに承認すること、つまり承認することに責任を持つことが明確に求められています。
7.5.3 文書化した情報の管理(文書・記録の管理)
7.5.3.1 管理目的(文書・記録を使う目的)
品質マネジメントシステム及びこの規格で要求されている文書化した情報は、「品質文書管理規定」に定め、管理する。
7.5.3.2 管理上の要求(文書・記録を保管する)
文書化した情報の作成及び更新について、「品質文書管理規定」に定め、管理する。
なお、「品質文書管理規定」には、以下について定める。
- 廃止された文書化した情報を何らかの目的で保持する場合、除去又は適切な識別若しくは管理による誤使用の防止
- 文書化した情報を電子的に管理する場合のデータ保護プロセス
- 例えば、データの喪失、無許可の変更、意図しない改変、破損、物理的損傷からの保護
データを確実に保存することとバックアップについても要求されています。
例えば、ファイルサーバーにトラブルがあった場合の対応について、バックアップデータからの復旧や復旧までの対応についても事前に検討し、実際に対応できることを確認することが求められています。
8.運用(行動、日々の業務)
ISO9100では新たな要求事項や注記などにより、プロジェクト・マネジメントやリスク管理の考え方がより強く反映されています。
8.1の実現方法については、「プロジェクト・マネジメント規定」を新た作成し記載することにします。
8.1 運用の計画及び管理(運用ルールを決める)
要求事項を満たした製品及びサービスを提供し、「6.計画(事業計画)」で決定したリスクに備え機会を活かすため、次に示す事項(ルール)を定め、品質マネジメントシステムを運用する。
運用の計画及び管理は、例えば、統合された段階的なプロセスについて、「プロジェクト・マネジメント規定」に定める。
a)製品及びサービスに関する要求事項(製品仕様、サービス内容など)の明確化
製品及びサービスに対する要求事項の明確化には、必要に応じ以下の事項を考慮する。
-
-
- 人の安全及び製品安全
- 製造性及び検査性
- 信頼性、アベイラビリティ及び保全性(整備性)
- 製品に使用される部品及び材料の適切性
- 製品に組み込まれるソフトウェアの選定及び開発
- 製品の旧式化・枯渇(obsolescence)
- 異物の混入防止、検出及び除去
- 取扱い、包装及び保存
- 使用されなくなった際の製品のリサイクル又は最終廃棄
-
b)プロセス、製品及びサービスの合否判定に関する基準の設定
プロセスを管理するための判断基準、製品やサービスの合否判定基準について、製品の特性及び規定要求事項に応じて、設計検証や工程管理の補助として、下表の様な統計的手法を用いることを考慮する。
設計検証 |
|
---|---|
工程管理 |
|
検証 |
|
c)製品及びサービスの要求事項への適合を達成するために必要な資源の明確化
-
-
- 製品及びサービスを顧客に提供するために必要な設備や要員など
-
d)b)の基準に従った、プロセスの管理の実施
e)次のために必要な文書化した情報の明確化、維持及び保持
1)プロセスが計画どおりに実施されたことを確かめることができる。
2)製品及びサービスの要求事項に適合していることを実証できる。
f)クリティカルアイテムをマネジメントするために必要なプロセス及び管理を明確にする。そのプロセスには、キー特性が識別されている場合の工程管理を含める。
g)運用の計画及び管理に対して影響を受ける組織機能の代表者を参加させる。
h)製品及びサービスの使用及び保守(整備)を支援するためのプロセス及び資源を明確にする。
i)外部提供者から取得する製品及びサービスの明確にする。
j)不適合な製品及びサービスの顧客への納入を防止するために必要な管理を確立する。
組織、顧客要求事項並びに製品及びサービスに応じて適切に、資源及びスケジュールの制約内で、要求事項を受容可能なリスクの下で満たすために、スケジュールどおり計画した順番で実施すべき事項を含め、体系化され、管理された方法で製品及びサービスの提供を計画し、マネジメントする。
- これらの活動とは、当社のプロジェクト計画、プロジェクト・マネジメントのことである。
(1)運用の計画の主なアウトプット
この計画の主なアウトプットを、「品質マネジメントシステム体系図」に示す。
この計画のアウトプットの1つは、特定の製品、サービス、プロジェクト又は契約に適用される。
品質マネジメントシステムのプロセス及び資源を規定する文書化した情報を、品質計画書と呼ぶ場合がある。
(2)運用の計画の変更
運用の計画を変更する際は、計画変更により悪影響が生じないよう計画的に変更する。
悪影響が発生した場合には、変更により発生した結果をレビューし、必要な場合には悪影響を軽減する対策をする。
外部委託したプロセスも管理する。(8.4 参照)
(3)要求事項に対する作業の継続的な適合
要求事項に対する作業の継続的な適合を確実にするため、次の事項を実施する。
- 一時的又は恒久的な作業移管を計画及び管理するためのプロセスを確立、実施し、維持する。
- プロセスによって、作業移管の影響及びリスクを確実にマネジメントする。
なお、当社から外部提供者へ、又は、外部提供者から他の外部提供者への作業移管については、8.4 に示す。
当社のある施設から他の施設へ、外部提供者から当社への作業移管の管理については、8.5 に示す。
以下、「8.1.1 運用リスクマネジメント」、「8.1.2 形態管理」、「8.1.3 製品安全」、「8.1.4 模倣品の防止」は、ISO9100の追加要求事項です。
なお、現時点では、要求事項の中で「組織並びに製品」の「組織」は、自社のみでよいのか、協力会社などを含めたものなのか不明確なので「組織」としています。
8.1.1 運用リスクマネジメント
適用される要求事項の達成に向けた運用リスクを管理するため、組織並びに製品及びサービスに応じて適切に、次の事項を含むプロセスを計画し、実施し、管理する。
a)運用リスクマネジメントのための責任の割当て
b)リスクアセスメント基準(発生確率、影響の程度、リスクの受容等)の決定
c)運用(8.運用)を通してリスクの特定、アセスメント及びコミュニケーション
d)決定したリスク受容基準を超えるリスクを軽減する処置の特定、実施及び管理
e)軽減処置を実施した後の残留リスクの受容
なお、ここでいうリスクについて以下に補足する。
- 8.1.1は、製品及びサービスの提供に必要な運用プロセス(8.運用)に関連するリスクに限定し、適用する。(6.1では、組織の品質マネジメントシステムの計画を策定する場合のリスク及び機会に取り組むことを示している。)
- 一般に、航空、宇宙及び防衛産業では、リスクは、一般的に発生確率及び結果の重大性の観点で表現される。
8.1.2 形態管理(コンフィギュレーションマネジメント)
製品ライフサイクルを通じて、物理的及び機能的属性の識別及び管理を確実にするため、組織並びに製品及びサービスに応じて適切に、形態管理のプロセスを計画し、実施し、管理する。
このプロセスは、次の事項を実施する。
a)識別された変更の実施を含む、製品識別及び要求事項へのトレーサビリティを管理する。
b)文書化した情報(例えば、要求事項、設計、検証、妥当性確認及び合否判定に関わる文書類)が、製品及びサービスの実際の属性に整合している。
8.1.3 製品安全
組織は、組織及び製品に応じて適切に、製品ライフサイクル全体で製品安全を保証するために必要なプロセスを計画し、実施し、管理しなければならない。
これらのプロセスの例は、次の事項を含む。
- ハザード(hazards)の評価及び関連するリスクのマネジメント(8.1.1 参照)
- 安全クリティカルアイテムの管理
- 製品安全に影響を与える発生した事象の分析及び報告
- これらの事象の伝達及び人々の訓練
8.1.4 模倣品の防止
組織及び製品に応じて適切に、模倣品又は模倣品の疑いのある製品の使用、及びそれらが顧客へ納入する製品に混入することを防止するプロセスを、計画し、実施し、管理する。
模倣品防止プロセスには、以下の事項を考慮する。
- 模倣品防止プロセスに関わる人々への模倣品の認識及び防止の訓練
- 部品の旧式化・枯渇(obsolescence)の監視プログラムの適用
- 正規製造業者もしくは承認された製造業者、承認された販売業者又は他の承認された提供元より外部提供される製品を取得するための管理
- 正規製造業者又は承認された製造業者に部品及びコンポーネントのトレーサビリティを保証するための要求事項
- 模倣品を検出するための検証及び試験方法
- 外部情報源からの模倣品報告の監視
- 模倣品の疑いのある製品又は検出された模倣品の隔離及び報告
8.2 製品及びサービスに関する要求事項(受注・契約)
8.2.1 顧客とのコミュニケーション
次に示す顧客とのコミュニケーションについては、「営業業務規定」に従い実施する。顧客からの苦情については、「苦情処理規定」に従い対処する。
a)製品及びサービスに関する情報の提供
b)引合い、契約又は注文の処理。これらの変更を含む。
c)苦情を含む、製品及びサービスに関する顧客からのフィードバックの取得
d)顧客の所有物の取扱い又は管理
e)関連する場合には、不測の事態への対応に関する特定の要求事項の確立
8.2.2 製品及びサービスに関する要求事項の明確化(製品仕様やサービス内容)
顧客に提供する製品及びサービスに関する要求事項について、次の事項を明確にする。
a)適用される法令・規制要求事項、及び当社が必要とみなすものを含む、製品及びサービスの要求事項が定められている。
b)提供する製品及びサービスに関して主張していることを満たすことができる(実現できる)。
c)製品及びサービスに関わる特別要求事項が明確化されている。
d)運用リスク(例えば、新技術、製造能力及び生産能力、短納期)が特定されている。
8.2.3 製品及びサービスに関する要求事項のレビュー(受注・契約の管理)
8.2.3.1 レビュー内容(製品の要求事項)
顧客要求を満たす製品及びサービスを提供できるかどうかを、「設計・開発管理規定」に従い、次の要求事項をレビューする。
このレビューは、製品及びサービスを顧客に提供することをコミットメントする前に実施する。
a)顧客が規定した要求事項(これには提供及び提供後の活動に関する要求事項を含む)
b)顧客が明示してはいないが、指定された用途又は意図された用途が既知である場合、それらの用途に応じた要求事項
c)当社が規定した要求事項
d)製品及びサービスに適用される法令・規制要求事項
e)以前に提示されたものと異なる、契約又は注文の要求事項
このレビューは、担当部署(該当する機能)と調整する。
レビューにおいて、顧客要求事項が満たされない又は部分的にしか満たされないということを組織が判定する場合、相互に受入れ可能な要求事項を顧客と交渉する。
契約又は注文の要求事項が以前に定めたものと異なる場合には、契約締結前に解決する。
顧客がその要求事項を書面で示さない場合には、顧客要求事項を受諾する前に確認する。
8.2.3.2 文書化した情報の保持(受注契約の記録)
該当する場合には、必ず、レビューの結果、及び製品及びサービスに関する新たな要求事項に関する文書化した情報を保持する(記録を残す)。
8.2.4 製品及びサービスに関する要求事項の変更(受注・契約の変更)
製品及びサービスに関する要求事項が変更されたときには、関連する文書を修正し、関係する要員にその変更内容を理解させる。
8.3 製品及びサービスの設計開発(製品の設計開発)
8.3.1 一般(設計開発のルールを決める)
以降の製品及びサービスの提供を確実にするために、「設計・開発管理規定」に従い、適切な設計開発プロセスを確立し、実施し、維持する。
8.3.2 設計開発の計画(設計開発の計画)
「設計・開発管理規定」に従い、設計開発のレビュー・検証・妥当性確認などを含む必要なプロセスを明確にし、そのプロセスに関する責任及び権限、必要な資源や関係者との関係などを考慮し設計開発を計画、管理し、必要な文書化した情報を保持する。
必要な場合には、設計・開発の活動を個別の活動に分割し、各活動について、作業項目、必要な資源、責任、設計の内容、インプット及びアウトプットを定める。
設計・開発の計画においては、製品及びサービスを提供し、検証し、試験し、保守(整備)する能力を考慮する。(8.1 a)のアウトプット参照)
8.3.3 設計開発へのインプット(設計開発に使う情報)
「設計・開発管理規定」に従い、機能や法令・規制などの要求事項、類似設計や当社の標準などを考慮し、設計開発する製品及びサービスに不可欠な要求事項を明確にする。
また、該当する場合には、旧式化・枯渇(obsolescence)から起こり得る結果(例えば、材料、プロセス、部品、機器、製品)を考慮する。
設計開発へのインプットは、設計開発の目的に対して、適切で、漏れがなく、曖昧でないものする。
設計開発へのインプット間の相反は解決し、これらに関する文書化した情報を保持する。
なお、設計・開発へのインプットの他の情報として、ベンチマーキング、外部提供者からのフィードバック、内部で発生したデータ及び運用中のデータも考慮できる。
設計開発の目的、インプットともその通りなのですが、現在の実力からあるべき姿(ありたい姿)になるために、段階的に目標を設定し継続して取り組むことがポイントです。
8.3.4 設計開発の管理(設計開発の管理)
「設計・開発管理規定」に従い、設計開発のレビュー・検証・妥当性確認を行い、設計開発のプロセスを管理し、これらに関する文書化した情報を保持する。
設計開発のプロセスを管理することで、次の事項を確実にすることができる。
a)達成すべき結果を定める。
b)設計・開発の結果の、要求事項を満たす能力を評価するために、レビューを行う。
c)設計・開発からのアウトプットが、インプットの要求事項を満たすことを確実にするために、検証活動を行う。
d)結果として得られる製品及びサービスが、指定された用途又は意図された用途に応じた要求事項を満たすことを確実にするために、妥当性確認活動を行う。
e)レビュー、又は検証及び妥当性確認の活動中に明確になった問題に対して必要な処置をとる。
f)これらの活動についての文書化した情報を保持する。
g)次の段階への移行を承認する。
設計・開発レビューへの参加者には、レビュー対象となっている設計・開発段階に関連する機能(役割)を代表する者を含める。
ISO9100では、設計開発で次の段階に移行する(進める)場合に、承認が求められています。
次の8.3.4.1は、ISO9100の追加要求事項です。
8.3.4.1 検証及び妥当性確認に試験が必要な場合には、これらの試験は、次の事項を確実にし、立証するために計画し、管理し、レビューし、文書化する。
a)試験計画書又は仕様書には、試験対象品及び使用される資源を特定し、また、試験の目的及び条件、記録するパラメータ並びに関連する合否判定基準を明確にする。
b)試験手順には、使用される試験方法、試験の実施方法及び結果の記録の方法を記載する。
c)正しい形態で、試験対象品を試験に使う(供する)。
d)試験計画及び試験手順の要求事項を、遵守する。
e)合否判定基準を満たす。
試験に使用される監視機器及び測定機器は、7.1.5に従い管理する。
設計開発完了時に、組織は、製品又はサービスの設計が全ての特定された運用条件下で仕様書要求事項を満たすことを、報告書、計算結果、試験結果などにより確実に実証する。
ISO9001でもやっているとは思いますが、ISO9100では要求事項として明確に求められています。
8.3.5 設計開発からのアウトプット(設計開発の結果)
「設計・開発管理規定」に従い、設計開発からのアウトプットが、インプットの要求事項を満たし、以降のプロセスに対し適切で、必要に応じ監視及び測定の要求事項や合否判定基準を含め、製品を安全に使用するために必要な情報をその特性を含めて明確にし、これらの文書化した情報を保持する。
設計開発からのアウトプットは、以下のことを満たすものとする。
a)インプットで与えられた要求事項を満たす。
b)製品及びサービスの提供に関する以降のプロセスに対して適切である。
c)必要に応じて、監視及び測定の要求事項、並びに合否判定基準を含むか、又はそれらを参照している。
d)意図した目的並びに安全で適切な使用及び提供に不可欠な、製品及びサービスの特性を規定している。
e)該当する場合には、必ず、キー特性を含むクリティカルアイテム、及びそれらのアイテムに対してとられるべき特定の処置を規定している。
f)リリースの前に、権限のある人(又は人々)によって承認を受けている。
製品の識別、製造、検証、使用及び保守(整備)を行うために必要なデータを明確にする。
このデータには、次の事項が含まれる場合がある。
- 製品の形態及び設計特性を定めるために必要な図面、部品リスト及び仕様書
- 適合した製品又はサービスを提供及び維持するために必要な材料、工程、製造、組立、取扱い、包装及び保存のデータ
- 製品を運用及び保守(整備)するための技術データ及び修理計画
ISO9100では、設計開発から製造、保守を含めて具体的な要求となっています。
8.3.6 設計開発の変更(設計開発の変更)
「設計・開発管理規定」に従い、要求事項への適合に悪影響を及ぼさないように、製品及びサービスの設計開発の間又はそれ以降に行われた変更を識別し、レビューし、管理する。
顧客要求事項に影響を及ぼす変更について、実施前に、顧客に通知するための基準を含むプロセスを必ず実施する。
設計開発の変更、レビュー結果、変更の許可、及び悪影響を防止するための処置に関する文書化した情報を保持する。
設計・開発の変更は、形態管理のプロセス要求事項に従い管理する。
ISO9100では、変更についてもあらかじめ定めた手順に従うだけでなく、変更前の顧客への通知や形態管理についても要求されています。
8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理(外注・購買、調達、物流サービス)
8.4.1 一般(外注・購買の管理)
「外注・購買管理規定」に従い、外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、要求事項に適合するよう管理する。
顧客指定の提供元から提供されるものを含め、外部から提供されるプロセス、製品及びサービス全ての適合に責任を負う。
要求される場合には、工程提供元(例えば、特殊工程)を含む、顧客指定又は承認された外部提供者を使用する。
外部提供者の選定及び使用と同様に、プロセス、製品及びサービスの外部提供に関連するリスクを特定し、マネジメントする。
要求事項を満たしていることを確実にするために、外部提供者がその直接及び下請(sub-tier)の外部提供者へ適切な管理を適用することを要求する。
ISO9100では、自社だけでなく、協力会社などを含めた管理と責任が明示されています。
外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、次の事項に該当する場合には、外部提供者に対して、評価、選択、パフォーマンスの監視、及び再評価を行うための基準を定め管理し、これらの活動及びその評価によって生じる必要な処置について、文書化した情報を保持する。
a)外部提供者からの製品及びサービスを当社の製品及びサービスに組み込む場合
b)製品及びサービスを外部提供者から直接顧客に提供する場合
c)外部提供者からプロセス又はプロセスの一部を提供する場合
なお、外部提供者を評価及び選定する際、客観的かつ信頼できる外部情報源からの品質データを、組織による評価として使用することができる(例えば、認定された品質マネジメントシステム又はプロセスの認証機関からの情報、政府当局又は顧客からの外部提供者認定)。
このようなデータの使用は、組織の外部提供者管理プロセスの1つの要素であり、外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが規定された要求事項を満たすことを検証する責任を負う。
次の8.4.4.1は、ISO9100の追加要求事項です。
8.4.1.1 承認等に関し当社が行うこと
組織は、次の事項を行わなければならない。
a)承認状態の決定、承認状態の変更及び外部提供者の承認状態に基づき外部提供者の使用制限を行うための条件について、プロセス、責任及び権限を定める。
b)承認状態(例えば、承認、条件付承認、否認)及び承認範囲(例えば、製品の種類、プロセスの分類)を含む外部提供者の登録を維持する。
c)プロセス、製品及びサービスの適合並びに納期どおりの引渡しを含む、外部提供者のパフォーマンスを定期的にレビューする。
d)要求事項を満たさない外部提供者に対してとるべき必要な処置を定める。
e)外部提供者によって作成及び/又は保持される文書化した情報の管理に対する要求事項を定める。
8.4.2 管理の方式及び程度(外注・購買の管理方法)
「外注・購買管理規定」に従い、次の事項を行い、外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、顧客に一貫して適合した製品及びサービスを提供する当社の能力に悪影響を及ぼさないよう管理する。
a)外部から提供されるプロセスを品質マネジメントシステムに含め管理する。
b)外部提供者に適用するための管理、及び外部提供者のアウトプットの管理方法を定める。
c)d)の管理方法について次の事項を考慮する。
1)外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を一貫して満たす当社の能力に与える潜在的な影響
2)外部提供者の自己管理の有効性(外部提供者の自己管理能力)
3)外部提供者のパフォーマンスの定期的なレビュー結果(8.4.1.1 c)参照)
d)外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが要求事項を満たすことを確認するために必要な検証又はその他の活動を明確にする。
外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの検証活動は、組織によって特定されたリスクに従って実施する。
模倣品のリスクを含め、不適合のリスクが高いとき、該当する場合には、必ず、検査又は定期的な試験を含める。
なお、以下について補足する。
- サプライチェーンのいかなるレベルで実施された顧客による検証活動も、受入れ可能なプロセス、製品及びサービスを提供し、全ての要求事項に適合するという組織の責任を免除するものではない。
- 検証活動には、次の事項を含み得る。
- 外部提供者からのプロセス、製品及びサービスの適合に関する客観的証拠(例えば、添付文書、適合証明書、試験文書、統計文書、工程管理文書、製造工程の検証及びその後の製造工程の変更の評価の結果)のレビュー
- 外部提供者先における検査及び監査
- 要求した文書類の内容確認
- 製造部品承認プロセスデータのレビュー
- 受領時の製品検査又はサービスの検証
- 外部提供者に対する製品検証の委譲のレビュー
外部から提供される製品が、全ての要求される検証活動の完了前に製造に使用するためリリースされる場合、後にその製品が要求事項を満たしていないと判明したときに回収及び交換ができるように識別し、記録する。
外部提供者に検証活動を委譲する場合には、組織は、委譲についての適用範囲及び要求事項を定め、委譲事項の登録を維持する。このため、外部提供者の委譲された検証活動を定期的に監視する。
外部提供者の試験報告書を、外部から提供される製品を検証するために利用する場合、その製品が要求事項を満たしていることを確認するために、試験報告書のデータを評価するプロセスを実施する。顧客又は当社が、材料を重大な運用リスク(例えば、クリティカルアイテム)として識別する場合、試験報告書の正確さの妥当性確認を行うためのプロセスを実施する。
ISO9100では、外部から提供されるプロセスや製品などについて、責任と検証(妥当性確認)が具体的に要求されています。
8.4.3 外部提供者に対する情報(外注・購買先との約束)
「外注・購買管理規定」に従い、次の事項に関する要求事項が妥当であることを確認した後、外部提供者に伝達する。
a)関連する技術データ(例えば、仕様書、図面、工程要求書及び作業指示書)の識別を含む、提供されるプロセス、製品及びサービス(購買製品の仕様など)
b)次の事項についての承認
1)製品及びサービス(製品仕様など)
2)方法、プロセス及び設備(製造方法、使用設備など)
3)製品及びサービスのリリース(リリース(出荷許可)の条件、納品方法など)
c)要員の力量。これには必要な適格性を含む。(要員の資格など)
d)当社と外部提供者との相互作用(外注・購買先との作業分担や情報のやり取りなど)
e)当社が適用する、外部提供者のパフォーマンスの管理及び監視(提出記録、監査、評価など)
f)当社又は顧客が外部提供者先での実施する検証又は妥当性確認活動(立会、製品評価など)
g)設計・開発の管理
h)特別要求事項、クリティカルアイテム又はキー特性
i)試験、検査及び検証(製造工程の検証を含む。)
j)製品受入時の統計的手法の使用、及び組織が受け入れるための関連する指示事項
k)次の事項に対する必要性
-
- 品質マネジメントシステムを実施する。
- 工程提供元(例えば、特殊工程)を含む、顧客指定又は承認された外部提供者を使用する。
- 不適合なプロセス、製品及びサービスを組織に通知し、それらの処置に対し承認を得る。
- 模倣品の使用を防止する(8.1.4 参照)。
- 外部提供者が利用する外部提供者又は製造場所の変更を含む、プロセス、製品又はサービスの変更を組織に通知し、組織の承認を得る。
- 顧客要求事項を含む該当する要求事項を外部提供者まで展開する。
- 設計の承認、検査・検証、調査又は監査のための試験供試体を提供する。
- 保管期間及び廃棄の要求事項を含む文書化した情報を保持する。
l)組織、その顧客及び監督官庁が、サプライチェーンのあらゆるレベルにおいて、施設の該当区域への立入り及び該当する文書化した情報の閲覧を行う権利
m)人々が、次の事項を認識することを確実にする。
-
- 製品又はサービスの適合に対する自らの貢献
- 製品安全に対する自らの貢献
- 倫理的行動の重要性
ISO9100が航空宇宙の製品やサービスを対象としていることから、追加されている内容については安全性や信頼性を確保(保証)するために必要であることは理解できます。
実施に当たっては、規定等でルールを定めたうえで、ルール通りに実施できるようにし、それを維持し、かつ、定期的にチェックすることが求められています。
8.5 製造及びサービス提供(製造工程)
ISO9100では、製造工程の管理についても具体的に要求されています。
8.5.1 製造及びサービス提供の管理(製造工程の管理)
「製造管理規定」に従い、製造及びサービス提供を、管理された状態で実行する。
管理された状態には、次の事項のうち、該当するものは必ず含める。
a)次の事項を定めた文書化した情報を利用できるようにする。
1)製造する製品、提供するサービス、又は実施する活動の特性。
2)達成すべき結果
文書化した情報について以下補足する。
- 製品及びサービスの特性を定める文書化した情報には、デジタル製品定義データ、図面、部品リスト、材料及び工程仕様書が含まれる場合がある。
- 実施する活動及び達成すべき結果についての文書化した情報には、製造工程表、管理計画、製造文書(例えば、製造計画書、トラベラー、ルーター、作業指示書、工程カード)及び 検証文書が含まれる場合がある。
b)監視及び測定のための適切な資源を利用できるようにし、かつ、使用する。
c)プロセス又はアウトプットの管理基準、並びに製品及びサービスの合否判定基準を満たしていることを検証するために、適切な段階で監視及び測定活動を実施する。
1) 製品及びサービスの合否判定のための監視及び測定活動について文書化した情報は、次の事項を含める。
-
-
- 合格及び不合格の基準
- 検証作業を実施すべき工程順序
- 保持(記録)すべき測定結果(最低限、合格又は不合格の表示)
- 要求される特定の監視及び測定機器、並びにそれらの使用に関連する指示書
-
2) 抜取検査を製品の合否判定の手段として使用する場合、抜取計画は認知された統計理論に基づき正当化されたものであり、使用に適するものであることを確実にする。なお、「使用に適する」とは、抜取計画が製品の重要性及び工程能力に適していることである。
d)プロセスの運用のための適切なインフラストラクチャ及び環境を使用する。
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- 適切なインフラストラクチャには、製品の専用治工具(例えば、ジグ、固定具、型)及びソフトウェアプログラムが含まれる場合がある。
e)必要な適格性を含め、力量を備えた人々を任命する。
f)製造及びサービス提供のプロセスで結果として生じるアウトプットを、それ以降の監視又は測定で検証することが不可能な場合には、製造及びサービス提供に関するプロセスの、計画した結果を達成する能力について妥当性確認を行う。
妥当性は、定期的に再確認する。
このようなプロセスは、特殊工程と呼ばれる。(8.5.1.2 参照)
g)ヒューマンエラーを防止するための処置を実施する。
h)リリース、顧客への提供及び提供後の活動を実施する。(8.6、8.5.5参照)
i)作業のできばえの基準を設定する。(例:規格書、標準見本、図解)
j)製造中における全ての製品に関する状態を把握する。(例:部品の数量、分割指示、不適合製品)
k)決められたプロセスに従った、キー特性を含む識別されたクリティカルアイテムを管理及び監視する。
l)ばらつきの値を測定するための方法を決定する。(例:治工具、機上測定プローブ、検査装置)
m)後工程では適合について十分な検証ができない場合、工程内での検査・検証ポイントを明確にする。
n)全ての製造及び検査・検証作業が、計画のとおり又は文書化され、承認された他の方法のとおりに実施された証拠を利用できるようにする。
o)異物の混入防止、検出及び除去を規定する。
p)製品要求事項への適合に影響する範囲で、ユーティリティ及び供給物(例えば、水、圧縮空気、電気、化学製品)を管理及び監視する。(7.1.3 参照)
q)後にその製品が要求事項を満たしていないと判明したときに回収及び交換ができるようにするため、後工程の製造で使用する目的で全ての要求される測定及び監視活動の完了前に、リリースされた製品であることを識別し、記録する。
以下、8.5.1.1、8.5.1.2、8.5.1.3は、ISO9100の追加要求事項です。製造に関する規定や標準などで具体的に規定する必要があります。
8.5.1.1 設備、治工具及びソフトウェアプログラムの管理
製造工程を自動化、管理、監視又は測定するために使用される設備、治工具及びソフトウェアプログラムは、製造への最終リリース前に妥当性確認を行い、維持する。
保管中の製造設備又は治工具に対して、必要となる定期的な保存処置及び状態の点検を含む保管要求事項を定める。
8.5.1.2 特殊工程の妥当性確認及び管理
結果として生じるアウトプットが、それ以降の監視又は測定で検証することが不可能な場合のプロセスに対して、次の事項のうち該当するものについて含めた手続を確立する。
a)プロセスのレビュー及び承認のための基準の決定
b)承認を維持するための条件の明確化
c)施設及び設備の承認
d)人々の適格性認定
e)プロセスの実施及び監視に対する所定の方法及び手順の適用
f)保持すべき文書化した情報に対する要求事項
8.5.1.3 製造工程の検証
製造工程により、要求事項を満たす製品を製造できることを確実にするため、製造工程の検証活動を実施する。
これらの活動には、リスクアセスメント、生産能力(capacity)や製造能力(capability)の調査、及び、管理計画が含まれる場合がある。
製造工程、製造文書及び治工具により、要求事項を満たす部品及び組立品を製造できることを検証するため、新規の部品又は組立品の初回製造からの代表品を使用する。
この活動(初回製品検査(FAI))は、初回の結果を無効にする変更(例えば、設計の変更、製造工程の変更、治工具の変更)が生じたときには繰り返す。
製造工程検証の結果に関する文書化した情報を保持する。
8.5.2 識別及びトレーサビリティ
製品及びサービスの適合を確実にするため、「製造管理規定」に従い、アウトプットを識別する。
実際の形態と要求した形態との違いを識別できるように、製品及びサービス形態の識別を維持する。
製造及びサービス提供の全過程において、監視及び測定の要求事項に関連して、アウトプットの状態を識別する。
合格表示媒体(例:スタンプ、電子署名、パスワード)を使用する場合、その表示媒体の管理を確立しなければならない。
トレーサビリティが要求事項となっている場合には、アウトプットについて一意の識別を管理し、トレーサビリティに必要な文書化した情報を保持する。
なお、トレーサビリティの要求事項には、次の事項が含まれる場合がある。
- 製品耐用期間を通じて維持できる識別
- 同じ材料ロット又は同じ製造ロットから製造された全ての製品を、その行先(例えば、引渡し、廃棄)まで追跡する能力
- 組立品については、その構成部品及びその次段階の組立品を追跡する能力
- 製品について、検索可能な一連の製造記録(製造、組立及び検査・検証)
8.5.3 顧客又は外部提供者の所有物(顧客や外注・購買先から預かるもの)
「製造管理規定」に従い、顧客又は外部提供者の所有物が当社の管理下にある間、又は当社がそれを使用している間、注意を払い、識別、検証及び保護・防護を実施する。
これらを紛失若しくは損傷した場合、その他これらが使用に適さないと判明した場合には、その旨顧客又は外部提供者に報告し、発生した事柄について文書化した情報を保持する。
8.5.4 保存(製品の保管)
「製造管理規定」に従い、製造及びサービス提供を行う間、必要なアウトプットを保存する。
この保存には、該当する場合、識別、取扱い、包装、保管及び保護を含め、製品を構成する要素にも適用する。
アウトプットの保存には、該当するものについては、仕様書及び適用される法令・規制要求事項に従い、次の事項も含める。
a)洗浄
b)異物の混入防止、検出及び除去
c)取扱注意を要する製品に対する特別な取扱い及び保管
d)安全警告及び注意を含むマーキング及びラベルの貼付
e)有効保管寿命の管理及び在庫品の回転
f)危険性のある材料の特別な取扱い及び保管
8.5.5 引渡し後の活動(アフターサービス)
製品及びサービスに関連する引渡し(提供)後の活動(アフターサービス)に関する要求事項については、次の事項を考慮しアフターサービスの程度を決める。
a)法令・規制要求事項
b)製品及びサービスに関連して起こり得る望ましくない結果
c)製品及びサービスの性質、用途及び意図した耐用期間
d)顧客要求事項
e)顧客からのフィードバック
f)運用データの収集及び分析(例:パフォーマンス、信頼性、教訓(lessons learned))
g)製品の使用、保守(整備)、修理及びオーバーホールに関連する技術文書の管理、更新及び提供
h)組織の外部で行う作業に対する必要な管理(例:組織の施設以外の場所での作業)
i)製品・カスタマーサポート(例:問合せ、訓練、保証、保守(整備)、交換部品、資源、旧式化・枯渇(obsolescence))
引渡し後に問題が検出された場合、調査及び報告を含む適切な処置をとる。
8.5.6 変更の管理(製造工程の変更管理)
製造又はサービス提供に関する変更を、必要な程度までレビューし管理する。
製造又はサービス提供の変更を承認する権限をもつ人々を明確にし、識別できるようにする。
なお、製造又はサービス提供の変更には、工程、製造設備、治工具又はソフトウェアプログラムに影響を与える変更が含まれる場合がある。
変更のレビューの結果、変更を正式に許可した人(又は人々)及びレビューから生じた必要な処置を記載した、文書化した情報を保持する。
8.6 製品及びサービスのリリース(製品の検査、出荷許可)
「検査業務規定」に従い、製品及びサービスの要求事項を満たしていることを検証するために、適切な段階において、計画(8.1参照)した取決めを実施する。
計画した取決めが問題なく完了するまでは、顧客への製品及びサービスのリリースを行わない。ただし、当該の権限をもつ者が承認し、かつ、顧客が承認したときは、この限りではない。
製品及びサービスのリリースについて文書化した情報を保持する。これには、合否判定基準への適合の証拠、リリースを正式に許可した人(又は人々)に対するトレーサビリティを含める。
製品認定の実証が要求された場合、組織は、保持する文書化した情報によって製品が定められた要求事項を満たしている証拠を提供する。
製品及びサービスに添付することを要求された全ての文書化した情報が出荷時に準備されている(存在することを確実にする)。
ISO9100では、製品認定などのエビデンスについても確実にそろえることが求められています。。
8.7 不適合なアウトプットの管理(不適合品の管理)
ISO9100では、不適合品の管理を確実に実施することが要求されています。
8.7.1 不適合なアウトプットの識別・管理(不適合品の識別・管理)
要求事項に適合しないアウトプットが誤って使用される、又は提供されることを防ぐため、「不適合品処理規定」に従い、それらを識別し、管理する。
不適合なアウトプットには、内部で発生した、外部提供者から受領したもしくは顧客によって特定された不適合な製品又はサービスを含む。
不適合の性質、並びにそれが製品及びサービスの適合に与える影響に基づき、適切な処置をとる。これは、製品の提供後、サービス提供中又は提供後に検出された、不適合な製品及びサービスにも適用する。
組織の不適合管理プロセスは、次の事項を含む文書化した情報として維持する。
- 不適合なアウトプットの内容確認及び処置判定に対する責任及び権限、並びにこれらの決定を行う人々の承認手順を規定する。
- 他のプロセス、製品又はサービスに及ぼす不適合の影響を封じ込めるために必要な処置をとる。
- 顧客及び密接に関連する利害関係者に引き渡された製品及びサービスに影響を及ぼす不適合の適時な報告
- 不適合の影響に応じて適切に、引渡し後に検出された不適合な製品及びサービスに対する是正処置を決定する。(10.2 参照)
なお、不適合な製品及びサービスの通知を要する利害関係者には、外部提供者、内部の組織、顧客、販売業者及び監督官庁が含まれる場合がある。
次の一つ以上の方法で、不適合なアウトプットを処理する。
a)修正(手直し) 修正後、要求事項への適合を検証する。
b)製品及びサービスの分離、散逸防止、返却又は提供停止
c)顧客への通知
d)当該の権限をもつ者及び顧客(該当する場合には、必ず)からの、特別採用による受入の正式な許可の取得
不適合製品の受入のためのそのまま使用又は修理の処置は、次の場合に限り実施する。
- 設計に責任のある組織の権限をもつ代表者又は設計組織から権限を委譲された人々による承認後
- 不適合が契約要求事項からの逸脱を引き起こす場合、顧客の承認後
廃棄と判定した製品は、物理的に使用できなくなるまで、分かりやすく、かつ、永久的な印を付けるか、又は確実に管理する。
模倣品又は模倣品の疑いのある部品は、サプライチェーンへの再混入を防止するために管理する。
不適合なアウトプットに修正を施したときには、要求事項への適合を検証する。
8.7.2 文書化した情報の保持(不適合品の記録)
「不適合品処理規定」に従い、不適合、とった処置、特別採用、及び不適合に関する処置について決定する権限をもつ人(又は人々)を特定している文書化した情報を保持する。
9.パフォーマンス評価(結果の評価)
マネジメントレビューと内部監査は、年1回としています。
ISO9001に対して追加要求事項はありませんが、中身(実際にやること)は、1段階レベルが上がるイメージです。
9.1 監視、測定、分析及び評価(業務の確認、分析と評価)
9.1.1 一般(確認・分析・評価の方法)
社長は、マネジメントレビューにおいて次の事項を決定し、品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性を評価し、この結果を記録し保管する。
a)監視及び測定が必要な対象
b)妥当な結果を確実にするために必要な、監視、測定、分析及び評価の方法
c)監視及び測定の実施時期
d)監視及び測定結果の分析及び評価の時期
9.1.2 顧客満足(顧客の見解)
顧客のニーズ及び期待が満たされている程度について、顧客がどのように受け止めているかを監視する。
この情報の入手、監視及びレビュー(改善の検討)の方法を「営業業務規定」に定める。
顧客(お客様)とのやり取り(コミュニケーション)は、主として営業が窓口となり行うため「営業業務規程」に記載しています。
9.1.3 分析及び評価(分析と評価)
社長は、次の事項を評価するため、監視及び測定からマネジメントレビューのインプット情報として適切なデータ及び情報を収集し分析する。
a)製品及びサービスの適合(8.6参照)
b)顧客満足度(9.1.2参照)
c)品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性 d)計画が効果的に実施されたか否か。
e)リスク及び機会への取組みの有効性
f)外部提供者のパフォーマンス
g)品質マネジメントシステムの改善の必要性(8.6、9.1.2参照)
分析と評価の要求事項に対しては、マネジメントレビューに集約していますが、程度の差こそあれ、様々な部署、業務で実施することが望ましいです。
9.2 内部監査
9.2.1 内部監査の目的
品質マネジメントシステムの要求事項への適合、及び有効に維持されているか否かに関する情報を得るため、「内部監査規定」に従い、あらかじめ定めた間隔(年1回)で内部監査を実施する。
9.2.2 内部監査の実施
「内部監査規定」に従い、内部監査を計画、実施し、その文書化した情報を保持する。
9.3 マネジメントレビュー
9.3.1 一般(マネジメントレビューの実施)
社長は、品質マネジメントシステムが、引き続き、適切、妥当かつ有効で、当社の戦略的な方向性と一致していることを確認するため、あらかじめ定めた間隔で(年1回、年度末前に)、品質マネジメントシステムをレビューする。
社長が必要と認めた場合には、上記とは別に臨時のマネジメントレビューを行うことができる。
マネジメントレビューは、目的に応じ適宜分割して1年間で網羅してもよいと考えています。
品質マネジメントを経営で活用するためには、マネジメントレビューは、品質保証部だけではなく、経営に関することは社長に近い部署が担当した方がよいと考えています。
また、ISO9100では社内だけでなく協力会社等の社外との関係においても実施すべきことが増えるため、要求事項を満足すると共に継続についても配慮が必要だと考えています。
9.3.2 マネジメントレビューへのインプット(マネジメントレビューの資料)
マネジメントレビューは、次の事項を考慮して計画し、実施する。
a)前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況
b)品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化
c)次に示す傾向を含めた、品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に関する情報
1)顧客満足及び密接に関連する利害関係者からのフィードバック
2)品質目標が満たされている程度
3)プロセスのパフォーマンス、並びに製品及びサービスの適合
4)不適合及び是正処置
5)監視及び測定の結果
6)監査結果
7)外部提供者のパフォーマンス
d)資源の妥当性
e)リスク及び機会への取組みの有効性(6.1 参照)
f)改善の機会
形式的になりがちなので、社内の状況(実情)に合わせて変更することを意識しておいた方がよいと考えています。
9.3.3 マネジメントレビューからのアウトプット(マネジメントレビューの指示事項)
社長は、マネジメントレビューのアウトプットに、改善の機会、品質マネジメントシステムのあらゆる変更の必要性、及び資源の必要性についての決定及び処置を含め記録し、保管する。
記録の保管は管理責任者もしくはISO事務局の場合が多いです。
ISO9100はISO9001よりも残す記録やデータが増えますので、保管の仕方にも工夫が必要だと考えています。
10.改善
10.1 一般
組織は、顧客要求事項を満たし、顧客満足を向上させるために、改善の機会を明確にし、選択しなければならず、また、必要な取組みを実施しなければならない。
これには、次の事項を含めなければならない。
a) 要求事項を満たすため、並びに将来のニーズ及び期待に取り組むための、製品及びサービスの改善
b) 望ましくない影響の修正、防止又は低減
c) 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性の改善
-
- なお、改善には、修正、是正処置、継続的改善だけでなく、現状を打破する変更、革新(制度や組織を新たなものにすること)及び組織再編なども含まれる。
10.2 不適合及び是正処置
追加要求事項があります。ISO9001と比べて、人的要因に関する不適合原因や外部提供者の不適合に関する是正要求などが求められています。
10.2.1 苦情から生じたものを含め、不適合が発生した場合、組織は、次の事項を行わなければならない。
a)その不適合に対処し、該当する場合には、必ず、次の事項を行う。
1)その不適合を管理し、修正するための処置をとる。
2)その不適合によって起こった結果に対処する。
b)その不適合が再発又は他のところで発生しないようにするため、次の事項によって、その不適合の原因を除去するための処置をとる必要性を評価する。
1)その不適合をレビューし、分析する。
2)該当する場合には、必ず、人的要因(human factors)に関する原因を含む、その不適合の原因を明確にする。
3)類似の不適合の有無、又はそれが発生する可能性を明確にする。
c)必要な処置を実施する。
d)とった全ての是正処置の有効性をレビューする。
e)必要な場合には、計画の策定段階で決定したリスク及び機会を更新する。
f)必要な場合には、品質マネジメントシステムの変更を行う。
g)外部提供者に不適合の責任があると判定する場合、外部提供者への是正処置要求を展開する。
h)適時及び効果的な是正処置がとられていない場合、特別な処置をとる。
是正処置は、検出された不適合のもつ影響に応じたものでなければならない。
組織は、不適合及び是正処置の管理プロセスを定める、文書化した情報を維持しなければならない。
組織には、自社(当社)だけでなく協力会社なども考慮する必要があると考えています。
10.2.2 組織は、次に示す事項の証拠として、文書化した情報を保持しなければならない。
a)不適合の性質及びそれに対してとったあらゆる処置
b)是正処置の結果
10.3 継続的改善
組織は、品質マネジメントシステムの適切性、妥当性及び有効性を継続的に改善しなければならない。
組織は、継続的改善の一環として取り組まなければならない必要性又は機会があるかどうかを明確にするために、分析及び評価の結果並びにマネジメントレビューからのアウトプットを検討しなければならない。
組織は、改善活動の実施状況を監視し、その結果の有効性を評価しなければならない。
- なお、継続的改善の機会には、教訓(lessons learned)、問題解決事例及び最善の慣行のベンチマーキングなどが含まれる。
ISO9100では、継続的な改善活動と、有効性の評価について、ISO9001よりも具体的に求められています。
まとめ
このブログで公開している、20名規模のモノづくりメーカーを想定して作成した、「品質マニュアルと関連規定」をベースに、ISO9001のQMS改善のヒントになればと思い、ISO9100:2016に対応させた品質マニュアル「QM9100版品質マニュアル:JIS Q 9100:2016対応版」です。
文字数3万4千とボリューム特大ですが、規定に記載すべきことも多くあります。