ISO(品質マネジメント)や内部監査を通して、同じことを説明しても、その後変わるかどうかは本人次第ということを痛感しています。
ところで、「会社は99%社長で決まる」と聞いたことはありませんか?
私は、どうやら「会社は99%社長で決まる」のは本当らしいと考えています。
ここでは、社長ではなく部長を例に、「管理職しだいで組織(チーム)は変わるのか、変わらないのか?」について、「人は変われる」ことを実感したエピソードを紹介します。
なお、以下の内容は私の私見であり、事実とも違いますのでご了承ください。
2人の技術系部長について
この記事に出てくる技術系の管理職、2名の部長について紹介します。
- 技術部AのA部長、技術部BのB部長と呼びます。
- 2名の部長は、ほぼ同世代で10名前後の部員がいます。
- どちらも技術系の専門分野を持ち、自信と誇りをもって仕事に取り組んでいます。
勉強熱心だが自分中心のA部長
1年、2年と時は過ぎても、A部長はほとんど変わりません。
現在の技術部Aは、
- 全社プロジェクトにより実質的な人員減となっている。
- 中途採用の活動はしているものの、退職者の穴埋めは現状の部員でフォローせざる得ない。
といった状態が続いており、
- 以前からいる部員の負担が増えたままである。
- 退職者のスキルに依存した業務は、劣化コピーとなりつつある。
- A部長もプレイヤーとしてフォローしてはいるが、穴埋めには至っていない。
と、A部長及び現場にも無理がかかる状態が続いています。
技術部Aを見ていての気付き、教訓
仕事のできる人(ベテラン)が退職で抜けると、その人のやっていた仕事は劣化していきます。
なぜ劣化してしまうかというと、ベテランは個人の知識や経験を元に、担当業務を改善しています。改善していることに問題はないのですが、例えば業務手順1つにしても、その考え方や思想、こうしたい、変えていきたいという思いは、少なくとも対等に話ができるレベルの者にしか伝えることができないからです。(会社でいうビジョンが、個人の担当者レベルでもあるということです。)
ベテランが抜けた後、部員は次のような状態になっていきます。
- 何とかこなす部員
- 限られた時間で処理するので本人の力量はアップする。
- 反面専門性も高くなり、人が増えても引き継ぎに時間がかかるなど新たな問題が・・・。
- 指示されたことをするので精一杯の部員
- 何をすればよいのか自分で調べても分からず、力量を発揮できない新入部員(中途採用)
つまり、目の前の仕事をこなす消耗戦が続き、技術部A全体のパワーは確実に落ちているように見えます。
ノウハウの継承について
ノウハウの継承は、伝える側と受け取る側双方の力量が関係します。
マニュアル化したとしても、ただ作業を引き継ぐだけでは何か変化があった場合に対応できません。
現在はまさに変化し続けている時代ですからなおさらノウハウの継承は難しくなっています。
余談ですが、悪いことは簡単に伝わる
会社(組織)において悪いDNAは、何もしなくても遺伝するようです。
直接的な接触はないはずなのに、悪い面だけが遺伝しているかのように引き継がれ再現されていく。
初めてこれに気付いた時には、正直なところ驚きました。
何とかできないものかと思考実験したことも何度となくありますが、最終的に経営、社長しだいという結論となってしまうため、これが会社の文化、会社の遺伝子だと考え、「積極的にあきらめる」選択をしています。
「経営者ならどうするか」については、具体的に考えを深めることができないままでいます。
仕事の進め方を変えたB部長
1年、2年と時が過ぎ、何となく技術部Bが変わってきたな、変化してきたなと感じていたところ、内部監査で水を向けると、B部長の回答は、「考え方を変えました」とのことでした。
これまでの経過を簡単に振り返ってみます。
B部長の下にベテランのマネージャーを置く
B部長の下に、技術職としては知識、経験などの力量が上のベテランをマネージャーに置きました。
マネージャーと、マネジメントと技術業務(設計・開発)を分担しようとしたようですが、結果は失敗だった(何も変わらなかった)ようです。
B部長は、技術職のベテランであるマネージャーに、部員のマネジメントを期待したようです。しかし、結果は(おそらくは予想通り)できなかったため、マネジメントはB部長がやると思いなおしたのではないでしょうか。
考え方を変えたB部長
当初、B部長には、「部員一人一人に自ら判断して仕事を進めて欲しい」という思いがあったようです。
しかし、担当業務を各自の判断により進めさせてみると、結局放任と変わらず、問題が大きくなってから表に出て大問題となることを繰り返す、笑うに笑えない状況に・・・。
こうして、本人曰く「部長としての考え方を変えた」そうです。具体的には何をどの様に変えたのかは聞いていませんが、管理職としての自分の実力(力量)と技術部Bの実力(力量)を、現実として受け入れたのではないのかなと思っています。現実を受け入れ、どうするか考え、実行に移したのではないでしょうか。
1年、2年と時は過ぎ、技術部Bは相変わらず失敗していますが、次のようなことをするようになりました。
- 失敗の原因調査を進める。
- 原因と対策を関係者で共有する。
- 対策を実行し、振り返り、改善点があれば改善する。
今更言うことでもなく当たり前のことです。
しかし、当たり前と思うのは、当たり前にできている人だからそう思えるのであり、少なくとも技術部Bでは、当たり前ではなかったのです。
会社としては安くない勉強代ではありますが、次の段階に進みつつあるようにみえます。
両者の違いはどこに?
A部長とB部長との違いは、どこにあったのでしょうか?
私は、「部員が力量不足と分かっていても任せるか、任せないかの差なのではないか」と考えています。
これは、「力不足と分かっている部員に、任せることができるか、できないか」という意味でもあります。
任せきれず自ら指示をするA部長
A部長は、部員の力量が不足していると判断した場合(これがほとんどの場合なのですが)、具体的に何をするかといったこと(作業指示)を、部長自ら直接部員に指示します。しかし、部員全員にすべての作業指示を出し続けることはできません。
指示を受ける技術部Aの部員は、指示されたことをやった後、次の仕事に移ります。指示が次々とくれば、次第に指示されたことだけやり、指示されていないことは後回しにして、結局やらないことになります。この状態が続くと、直接指示を受ける部員は、毎月行うルーチンワークさえも、納期(期限)ぎりぎりまでやらなくなります。
このような状態になってしまうと、忙しくなってくる、緊急の要件が入ってくる度に、直接指示と進捗の確認が増えることになり、指示を受ける部員はますます「指示されたことだけすぐやる」ようになっていきます。(担当者にしてみれば、事前指示がメールになり、電話になると自分ではもうどうにもならないと思います。)
A部長としては、
- 毎月のルーチンワークは担当部員が計画的に実行しているに違いない。
- A部長が優先度が高いことだけ直接指示している。
と考えているのかもしれません。
しかし、実際の部員にしてみれば、
- ルーチンワークは空いた時間なども利用して計画的に進めようとしていた。
- 直接指示に対応しているうちに、ルーチンワークに予定していた時間が少なくなっていく。
- 今日も定時になってしまったので、ルーチンは明日にしよう。
これが繰り返され、
- ルーチンが期限ぎりぎりになってしまった。
- ルーチンは明日やるしかない。
- 翌日になると、こんな時に限って緊急の直接指示が・・・。
といった状況なのではないかと思われます。
どうしてこうなってしまうのか?
A部長の優先度と、部員の優先度が一致していないことに、両者とも気付いていないというのが問題なのではないでしょうか?
ただし、すべての部員が振り回されているわけではありません。振り回されない部員は、今すべきことを考え判断しています。自分で優先度が分からなければ、タイミングをみて確認しながら進めているようです。
そして、技術部Aでも1年、2年と時は過ぎ、忙しくなるだけで組織としては何も変わらない。
ふと、振り返ってみると、
- (この様な状態に気付いてしまった)技術部Aの中でも優秀な部員は転職してしまった。
- 残された部員は担当業務をこなすので精一杯、振り返る気になどなれない。
- 部員間で協力しろと言われてもそれどころではない。
といった状態になってしまっているようにみえます。
そして、A部長のイライラは増すばかり・・・。
任せて失敗を受容するB部長
B部長は、部員の力量が不足していると判断しても、ひとまず部員に任せます。ある程度の失敗は覚悟のうえで任せているようにみえます。
B部長は、複数の部員すべてに指示を出し、確認を続けることができないと判断しているのではないでしょうか。
B部長の言葉ではありませんが見ていると、
- 失敗しても繰り返さないために、原因調査と対策を考え実行することを続ける。
- 大きな失敗を避けるために、部員の様子を見て声がけ、質問等をして任せた仕事の進捗を確認する。
といったことを工夫しながら続けているようです。
これを続けていけば、
- 失敗から学ばない同じ失敗を繰り返す部員により注意する。
- 任せられる仕事、部員に対しては簡単な確認で済ませる。
といった対応ができるようになります。
部員にとってもこれはよい方向になると考えています。
なぜ任せられないのか?不安だから?
社長と社員を比べれば、小さい会社であればなおさら社長がすべての面で力量がある、優秀だと思います。
部長と部員を比べれば、部長として部員を管理(マネジメント)できるだろう、あるいは、できるようになって欲しいと考え部長にするのだから部員よりは優秀なのだとは思います。
それでも、「初めての仕事をする」、「部員に任せる」際に不安を感じるの当たり前のことです。
その不安をどうやって乗り越えていくかが部長には求められているのだと考えています。
聞いた話ですがエピソードを1つ紹介します。
あるプロジェクトの進捗会議で、タスクDの責任者であるC部長が、「不安でプロジェクトのあるタスクDの開始日を決められない」と発言したそうです。
それに対し、(ありがちですが)会議参加者は無言・・・。
結局、タスクDが決まらないと直接しわ寄せがくる別の部長が、タスクDの開始日を提案し、会議で承認させたそうです。
不安だからこそ、
- 任せた仕事の進捗状況をいかにして知るか
- どうやって大きな失敗をさせずに小さな失敗(ミス)を部員に気付かせるか
などについて考えようとしないのでしょうか、私は不思議に思います。
まとめ
2人の技術系部長を例に、「管理職しだいで組織(チーム)は変わるのか、変わらないのか?」について、「人は変われる」ことを実感したエピソードを紹介しました。
この記事をまとめていて、「人は変われる」ということを再認識させられました。
たかが振り返り、されど振り返り。
以上、博士のつぶやきでした。