「品質マニュアル3.0」の関連規定の1つ、「営業管理規定」の一例です。
1. 目的
本規定は、営業業務の手順等を定め、営業業務を効率的に運用することを目的とする。
2. 適用範囲
本規定は、当社の営業業務に適用する。
営業業務フローを下図に示す。
なお、外注・購買業務については、「外注・購買管理規定」に示す。
3. 営業情報の伝達と商品企画等
3.1 営業情報の伝達(報告・連絡・相談)
(1)営業情報とは、商品企画情報、他社情報、顧客情報、受注情報などをいう。
(2)営業担当者は、営業部長に営業情報を業務レポート(週報)等で報告する。営業部長は、必要に応じ関係部署に伝達する。
(3)案件報告 営業会議を確認して合わせる。
案件情報については、営業部長に報告する。
報告する案件情報は、以下のものとし、見積前に報告する。
- 見積金額が100万円以上と想定される案件
- 収益性、技術面で課題があるもの
3.2 商品企画(製品の設計開発等)
3.2.1 製品の設計開発、改良
営業部は、新規製品、改良品、従来の顧客と異なる場合の既存品を検討する時は、「設計・開発管理規定」により、技術部に設計開発、改良の依頼をする。
3.2.2 設計開発の進捗管理
営業部は、設計開発計画の進捗を把握して、必要な場合は開発計画の変更を技術部に依頼する。
3.3 プロジェクトの計画と提案
新たなテーマのプロジェクトを起案、企画する場合、営業会議等で提案する。
提案する際には以下の事項を含め文書にまとめる。
①プロジェクトの概要
②背景・問題点・方向性など
③技術的検討項目
④営業・販売的検討項目
⑤検討項目③と④についての対策(概略の予定)
4. 見積業務
(1)営業部は、顧客からの引合、顧客への提案に対する見積依頼を受理する。顧客より口頭での見積依頼の場合は、必要な事項を確認し記録する。
①製品名(製品コード)
②数量
③納期
④仕様(図面含む)または見積範囲
⑤納入先(納品先)
(2)部署長は担当者を決定する。担当者は、納期・在庫を確認すると共に、見積台帳により採番し「見積書」を管理する。
(3)担当者は、購買部、製造部、又は外注先に見積を依頼する。
(4)購買部、製造部、又は外注先より見積書を入手し、顧客提出用見積書を作成する。
(5)担当者は、見積書正本、控、製造部、製造部、又は外注先よりの見積書、顧客からの引合書等関連書類を部長に提出し承認を得る。
(6)担当者は、見積書控、購買部、製造部又は外注先から見積書、顧客からの引合等関連書類を見積台帳で管理し、定められた方法で管理する。
(7)担当者は顧客に見積書正本を提出する。
5. 販売管理(受注・販売)
5.1 与信管理
(1)営業部は、顧客と取引を開始する場合、「信用取引申請書」により申請し、社長の承認を得る。社長承認後、管理部は取引先コードを基幹システムに登録する。
(2)得意先とは、原則として「取引基本契約書」又は「売買契約書」を締結する。
契約締結前に発注があった場合は、営業部長の承認の下に受注を行う。
(3)営業部長は、与信を伴う取引にあたり、与信限度額を遵守して受注を管理する。
5.2 販売計画
営業部は、過去の販売実績、顧客からの受注情報等を考慮し、年度予算計画策定時に販売計画を立案する。
5.3 取引条件
顧客支給品がある場合、製造部等の関連部署に連絡する。
5.4 注文内容の確認
営業部は、顧客より受注した場合、次の手順により注文(契約)内容を確認する。
(1)注文は、原則としてメール、FAXを含む文書にて受取る。
(2)口頭又は電話で注文を受けた場合は、注文内容をメール、FAX等により顧客に確認する。
(3)営業担当は、顧客の注文を書面で確認できない場合、営業部長の承認を得る。
(4)確認事項を以下に示す。
①製品名または製品コード
②数量
③価格
④納入先
⑤納期
⑥仕様、図面(原則として承認済みのもの)
⑦支払条件
⑧検査条件(顧客と取り決め検査図書へ反映する)
⑨その他の条件(包装条件など)
(5)顧客と取引基本契約書がある場合はそれに従う。
(6)売上分の値引きを必要とする事由が発生した場合は、営業部長の承認を得る。
5.5 受注登録
(1)営業部は、注文内容の確認完了後、図面、仕様書などの有無を確認する。
- 製作品の場合、図面、仕様書の作成を技術部に依頼する。
- 品質工程図及び作業手順書については、製造部長の判断を仰ぐものとする。
- 製品検査については、品質保証部長の判断を仰ぐものとする。
(2)営業部は、顧客名、製品名、納期、数量、納入先等を含む必要な受注情報を基幹システムに入力し、製造部に生産、出荷を依頼する。
5.6 売上管理
5.6.1 売上基準及び売上・仕入未計上
(1)商品の売上は、原則的に出荷基準で計上する。
(2)売上・仕入未計上については、営業部、購買部又は製造部が管理する。
5.6.2 売上伝票のチェック
売上伝票を以下の通りチェックする。
(1)基幹システムから「売上明細」、「納品書」を出力する。
(2)「売上明細」または「納品書」と「注文書」を比較し、漏れがないかをチェックする。
(3)得意先の請求形式に合わせて、「請求書」を出力する。
(4)「納品書」、「請求書」を得意先の経理締切期日までに必ず到着するよう発送する。
5.7 照会業務
5.7.1 納期管理
営業部は、以下について把握し製造部と協力して納期管理を行う。
- 受注の状況、受注残の内容
- 商品の在庫状況、手配状況
5.7.2 売掛管理、返品処理
(1)所管部門
売掛債権の回収責任は営業部とし、管理部の協力を得て回収する。
(2)未回収、回収遅延の対応
営業担当者は基幹システムにて、顧客の入金遅延状況を把握するとともに、入金の時期を明確にして営業部長に報告する。
営業部長は、原因の分析・状況の検討を行うとともに、売掛金が未回収となる恐れがある時は、管理部長と協議し対応する。
(3)債権の確認
営業部は、必ず入金の消込をする。
営業部長は、定期的に得意先の残高を照合し、確認するとともに、与信限度を常に管理する。
(4)返品処理
顧客が返品を必要とする事由が発生した場合は、以下の手順で処理する。
なお、顧客が負担する費用(送料、検査や梱包などの費用等)は、未開封、開封済み、返品時検査の合否などの条件で異なるため、個別に対応するものとする。
①営業部は、製造部等にメールで返品を連絡する。
②製造部等は、返品された製品を受領後、当該営業部に受領したことを連絡すると共に、品質保証部に検査を依頼する。
③品質保証部は検査を行い、検査結果を受領担当者に連絡する。
④受領担当者は、当該営業部に検査結果を連絡する。
不適合品(検査不合格品)の処理については、「不適合品処理規定」による。
⑤当該営業部は、返品処理を行う。
5.8 指定伝票の管理
得意先の指定様式による「納品書」、「請求書」が必要な場合は、営業担当者が打出した「納品書」、「請求書」と照合の上、営業部長の承認を得る。
5.9 受注に関する変更管理
下記の変更は、文書にて関係部門に通知する。
(1)受注登録の変更
登録完了後に、顧客より登録内容(数量、納期、注文取消し等)の変更があった場合、営業担当者は、変更内容を、製造部、又は外注先に送付する。
(2)売買契約内容の変更
取引開始以降に取引条件が変更された場合、直ちに営業部長に報告するとともに、売買契約変更の手続きを行う。
(3)契約違反の処置
契約違反が発生した場合、営業担当者は直ちに営業部長に報告し指示を受ける。
営業部長は、重大な違反と判断した場合、社長に報告して指示を受けるとともに、当該関係者と協議して対処する。
6. 顧客とのコミュニケーション
6.1 顧客対応
(1)顧客からの問合せに対しては、営業部が窓口になり対応する。
(2)営業部は、顧客への製品引渡しに際して、必要に応じて取扱説明書等の製品情報を提供する。
(3)営業部は、納品後製品使用について顧客からのフィードバックを得るように努める。
(4)顧客に製品をサンプル品として提出(供与)する場合、営業担当者は営業部長承認のもと処理する。
6.2 品質苦情処理
顧客から品質に係わる苦情があった場合は、「苦情処理規定」により処理する。
6.3 顧客満足
(1)顧客要求事項を満足しているかどうかに関して顧客がどのように受けとめているかについての情報を以下の通り監視する。
毎日の営業活動の中で、以下のような調査もしているように運用(監視)することがポイントです。
a.直接調査
顧客訪問、新製品、改善提案など
b.間接調査
売上高や営業利益の推移、顧客クレームなど
(2)これらの情報を分析し、顧客関連プロセスについて必要に応じ改善を検討する。
まとめ
ここでは、「品質マニュアル3.0」の関連規定の1つ、「営業管理規定」の一例について説明しました。