このブログでは、20名規模のモノづくりメーカーを想定して作成した、「品質マニュアルと関連規定」やISOならではのマネジメントレビューの活用「実はやっているマネジメントレビュー」や内部監査の資料(内部監査ガイド、チェックリストの作り方)などISO9001を積極的に活用するための資料を公開しています。
ISO9001のQMS改善のヒントになればと思い、ISO9001:2015版品質マニュアルをISO9100:2016に対応させた品質マニュアルを作っていきます。
ISO9001の品質マニュアルの作り方については、以下をご参照ください。
Amazonへ:「わかりやすい品質マニュアルの作り方」
[ISO9100:2016版品質マニュアル]
7.支援(品質目標達成のためのサポート)
「7.支援」では、ISO9001に比べるとISO9100で具体的な要求が出てきます。
「監視・測定機器管理規定(QM9100版)」と「品質文書管理規定(QM9100版)」の改訂も必要なので、後日公開します。
7.1 資源(要員(社員)・建物・設備)
自社だけでなく、顧客や協力会社などを含む利害関係者についても考慮する必要があります。
7.1.1 一般(必要な資源を決定すること)
社長は、品質マネジメントシステムを運用し改善するために、必要な建物や設備などを用意し、要員を確保する。
このため、必要なものが必要な時に使えるように、マネジメントレビューにて、次の事項を考慮し決定する。
a)既存の内部資源の実現能力及び制約(既存の設備、要員などでできること、できないこと)
b)外部提供者から取得する必要があるもの
(新たに用意しなければならない設備、外注により取得する必要があるものなど)
7.1.2 人々(要員(社員))
社長は、品質マネジメントシステムを実行して良い結果を出す(製品の品質を確かなものとし、顧客の満足を得る)ため、品質マネジメントシステムの各プロセスを運用・管理するために必要な要員を明確にし、確保し、従事させる。
7.1.3 インフラストラクチャ(建物、設備など)
社長は、各プロセスを運用し、要求事項を満たす製品を顧客に提供するために必要なインフラストラクチャを用意する。
これには、受注から、設計開発、製造、納品、アフターサービスまですべてを考慮する。
必要なインフラストラクチャを「表2 インフラストラクチャ一覧表」に示す。
表2 インフラストラクチャ一覧表
インフラストラクチャ | 管理部署 | 内容 | 記録 |
---|---|---|---|
本社 | 管理部 | 建物及び建物の一部等の管理 | 資産台帳、点検記録 |
設備等 | 各部 | 設備等の管理 | 設備台帳、点検記録 |
OA機器等 | 管理部 | ネットワーク等の管理機器等の適切な管理 | ユーザー管理台帳 |
基幹システム | 管理部 | 販売、生産、会計等の管理 | ユーザー管理台帳 |
一般(什器・設備) | 管理部 | 一般(什器・設備)の管理 | 設備台帳 |
製造設備やICT関連設備を含めたインフラストラクチャについては、ISO9001に比べると対象が広くなりますし、管理方法についても具体的に定める必要があります。
規定化が必要になると思われますが、実際に継続して管理できるように実効性のあるインフラストラクチャの管理方法について検討するよい機会にもなると考えています。
7.1.4 プロセスの運用に関する環境(作業場所の環境)
要求事項を満たす製品を顧客に提供するためのプロセスの運用に必要な次の環境を整え管理する。
a)管理部長は、業務推進のために必要な職場環境を管理する。
b)技術部長は、開発(製造)現場の環境(製品品質の確保、安全衛生等)を管理する。
7.1.5 監視及び測定のための資源(監視・測定のための機器)
7.1.5.1 一般(監視・測定のための機器の管理)
監視及び測定について「監視・測定機器管理規定」に定める。
監視及び測定に必要な資源(監視・測定のための機器)を明確にし、適切に維持し、必要な文書化した情報を保持する。
7.1.5.2 測定のトレーサビリティ(測定値を保証する、トレースできるようにすること)
測定のトレーサビリティについて、「監視・測定機器管理規定(QM9100版)」に定める。
規定要求事項にかかわる監視及び測定にコンピュータソフトウェアを使う場合には、最初に使用する前に意図した監視及び測定ができることを確認する。
また、必要に応じて再確認を実施する。
以下について、「監視・測定機器管理規定」に定める。
- 校正又は検証を必要とする監視機器及び測定機器の回収に対するプロセスを確立し、実施し、維持する。
- 監視機器及び測定機器の登録を維持する。登録には、機器の種類、固有の識別、配置場所、校正又は検証の方法、頻度及び判定基準を含める。
- 監視機器及び測定機器の校正又は検証は、適切な環境条件の下で実施する(7.1.4 参照)。
ISO9100の「測定のトレーサビリティ」に関する追加要求は、ISO9001でもやるべき(やっている)ことですが、適用範囲とその深さいついては検討が必要です。
ISO9100の追加要求に対して具体的にどうするかについては、「監視・測定機器管理規定」に定めることにしています。
7.1.6 組織の知識(会社のノウハウ)
「表3 当社の知識と関連規定」に示す規定により、当社の知識を維持し、必要な範囲で利用できる状態にする。
表3 当社の知識と関連規定
当社の知識 |
関連規定 |
---|---|
マネジメントレビュー |
「品質マニュアル 9.3」 |
教育訓練の記録 |
「教育・訓練規定」 |
図面、仕様書、 品質工程図、作業手順書 |
|
苦情の情報 |
「苦情処理規定」 |
製品企画の資料、顧客情報 |
「営業業務規定」 |
協力会社情報 |
|
検査記録 |
「検査業務規定」 |
不適合品の情報 |
「不適合品処理規定」 |
是正処置報告書 |
「是正処置規定」 |
7.2 力量(要員の力量)
製品要求事項への適合に影響がある業務には、適切な教育、訓練、技能及び経験を判断の根拠として力量を有する要員を従事させる。
「教育・訓練規定」に従い、次の事項を行う。
a)品質マネジメントシステムの運用に必要な力量を明確にする。
b)適切な教育、訓練又は経験に基づいて、それらの要員の力量を把握する。
c)力量が不足する場合には、必ず、必要な力量を身に付けるための処置をとり、とった処置の有効性(力量が得られたか)を評価する。
また、その他の手段で力量がある要員を確保した時も、その要員の力量を確かめる。
d)力量を証明する記録として、教育・訓練や指導の記録、経験・資格の記録、力量を判定した記録などを保管する。
なお、必要な力量について、定期的にレビューを行う。
力量の定期的なレビューが注記として要求されています。
「定期的なレビュー」については、力量に応じ、年1回に限らず、必要であれば毎月1回等定めて実施します。
7.3 認識(要員の認識)
社長及び部署長は、「教育・訓練規定」に従い、当社の管理下で働く要員に、次の事項を正しく認識させるため、周知、教育・訓練、指導などを行う。
a)品質方針
b)関連する品質目標(各要員・部署の仕事に関係する品質目標)
c)パフォーマンスの向上により得られる便益を含む、品質マネジメントシステムの有効性に対する自らの貢献(製品及びサービスの質の向上と品質目標達成ために、どのような役割を担っているか)
d)品質マネジメントシステム要求事項に適合しないことの意味(決められたルールを守らないと、どの様な問題が起こるか)
e)品質マネジメントシステムに関連する文書化した情報及びその変更
f)製品又はサービスの適合に対する自らの貢献
g)製品安全に対する自らの貢献
h)倫理的行動の重要性
ISO9100の「認識」では、e)~h)の4項目が追加されています。
周知するだけでは不十分であり、a)~h)の全てについて社員全員が認識することを要求されています。
ISO9100の追加4項目は、ISO9001でも認識させるよう取り組んでいるとは思われますが、全社員に一律の教育・訓練だけでなく、ISO9100の適用製品やプロセスに関わる社員や職位に応じた教育・訓練が必要かつ有効になってくると考えています。
7.4 コミュニケーション(情報の意志疎通)
社長及び部署長は、社内で仕事に必要な情報(業務指示・連絡・報告・共有データなど)が正しく伝わるように管理する。
また、社外の関係者との情報交換が正しく行われるように管理する。
なお、コミュニケーションには、品質マネジメントシステムに関連する内部及び外部からのフィードバックを含めるようにする。
フィードバックについては、相手があることなので「含める」と言い切っていません。
内部及び外部からのフィードバックについては、何のために何を求めるか考え、継続して見直していく必要があると考えています。
品質マネジメントシステムに関連するコミュニケーションについて、以下に示す。
a)内部コミュニケーション
会議体を「表4 会議体」に示す。
会議が開催できない場合は、必要に応じてそれに代わる手段を取る。
表4 会議体
名称 | 役割 | 担当者(部署) |
---|---|---|
取締役会
|
議長 | 社長 |
出席者 | 部長 | |
事務局 | 管理部 | |
開催頻度 | 月1回 | |
審議事項 | 会社の重要事項の審議・決議 | |
営業会議
|
議長 | 社長 |
出席者 | 部長 | |
事務局 | 営業部 | |
開催頻度 | 月1回 | |
審議事項 | 計画推進状況の報告他 | |
開発会議
|
議長 | 技術部長 |
出席者 | 社長、部長 | |
事務局 | 技術部 | |
開催頻度 | 月1回 | |
審議事項 | 設計・開発など技術に関する事項 | |
部内会議
|
議長 | 部長 |
出席者 | 部長が決定 | |
事務局 | 部長が指名 | |
開催頻度 | 部長が決定 | |
審議事項 | 情報連絡・意見交換 |
会議体について、ISO9100では定期的な確認事項も増えると思われますので、会議中の単なる確認は事前配布資料で済ませるなどの工夫も必要になってきます。
b)外部コミュニケーション
顧客については、8.2.1 顧客とのコミュニケーションに示す。
協力会社については、8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理に示す。
その他については、「表5 外部コミュニケーション」に示す。
表5 外部コミュニケーション
内容 | 実施時期 | 対象者 | 方法 | 担当部署 |
---|---|---|---|---|
ISO9001に関すること | 通年 | 審査機関 | メール、電話、Web | 管理責任者、 ISO事務局 |
法令、契約 | 通年 | 役所 | メール、電話、Web | 管理部 |
7.5 文書化した情報(文書・記録)
7.5.1 一般(必要な文書・記録)
次の文書化した情報を「品質文書管理規定」に定め、品質マネジメントシステムを運用する。
品質マニュアルの関連規定を「表6 品質マニュアルの項と関連規定」に示す。
a)この規格が要求する文書化した情報(適用範囲は1.2参照)
b)当社が品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると決定した文書化した情報
表6 品質マニュアルの項と関連規定
品質マニュアル | 関連規定 |
---|---|
4 組織の状況 | - |
4.1 組織及びその状況の理解 | - |
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解 | - |
4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定 | - |
4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス | - |
5 リーダーシップ | - |
5.1 リーダーシップ及びコミットメント | - |
5.2 方針 | - |
5.3 組織の役割、責任及び権限 | - |
6 計画 | - |
6.1 リスク及び機会への取組み | - |
6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定 | 「方針管理規定」 |
6.3 変更の計画 | 「方針管理規定」 |
7 支援 | - |
7.1 資源 | 「監視・測定機器管理規定」 |
7.2 力量 | 「教育・訓練規定」 |
7.3 認識 | 「教育・訓練規定」 |
7.4 コミュニケーション | - |
7.5 文書化した情報 | 「品質文書管理規定」 |
8 運用 | - |
8.1 運用の計画及び管理 | - |
8.2 製品及びサービスに関する要求事項 |
「設計・開発管理規定」 「苦情処理規定」 「営業業務規定」 |
8.3 製品及びサービスの設計開発 | 「設計・開発管理規定」 |
8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理 | 「外注・購買管理規定」 |
8.5 製造及びサービス提供 | 「製造管理規定」 |
8.6 製品及びサービスのリリース | 「検査業務規定」 |
8.7 不適合なアウトプットの管理 | 「不適合品処理規定」 |
9 パフォーマンス評価 | - |
9.1 監視、測定、分析及び評価 | 「営業業務規定」 |
9.2 内部監査 | 「内部監査規定」 |
9.3 マネジメントレビュー | - |
10 改善 | - |
10.1 一般 | - |
10.2 不適合及び是正処置 |
「不適合品処理規定」 「是正処置規定」 |
10.3 継続的改善 | - |
7.5.2 作成及び更新(文書・記録の作成と改定)
文書化した情報の作成及び改定について「品質文書管理規定」に定め、実施する。
なお、承認とは、組織の決定どおりに、関連する文書化した情報の種類に対して、(承認)権限をもつ人々及び承認方法が特定されていることである。
「承認」について、具体的に定めることが求められています。
ルール通りに承認すること、つまり承認することに責任を持つことが明確に求められています。
7.5.3 文書化した情報の管理(文書・記録の管理)
7.5.3.1 管理目的(文書・記録を使う目的)
品質マネジメントシステム及びこの規格で要求されている文書化した情報は、「品質文書管理規定」に定め、管理する。
7.5.3.2 管理上の要求(文書・記録を保管する)
文書化した情報の作成及び更新について、「品質文書管理規定」に定め、管理する。
なお、「品質文書管理規定」には、以下について定める。
- 廃止された文書化した情報を何らかの目的で保持する場合、除去又は適切な識別若しくは管理による誤使用の防止
- 文書化した情報を電子的に管理する場合のデータ保護プロセス
- 例えば、データの喪失、無許可の変更、意図しない改変、破損、物理的損傷からの保護
データを確実に保存することとバックアップについても要求されています。
例えば、ファイルサーバーにトラブルがあった場合の対応について、バックアップデータからの復旧や復旧までの対応についても事前に検討し、定めた通りに対応できることを確認することが求められていると考えています。
まとめ
ISO9001のQMS改善のヒントになればと思い、ISO9001:2015版品質マニュアルをISO9100:2016に対応させた品質マニュアルを作りはじめました。
ここでは、ISO9100:2016版対応の品質マニュアルの以下の項目についてまとめています。
計画通りにいかないことを前提として、変更を計画しておくことが重要だと考えています。
- 7.支援(品質目標達成のためのサポート)
- 7.1 資源(要員(社員)・建物・設備)
- 7.1.1 一般(必要な資源を決定すること)
- 7.1.2 人々(要員(社員))
- 7.1.3 インフラストラクチャ(建物、設備など)
- 7.1.4 プロセスの運用に関する環境(作業場所の環境)
- 7.1.5 監視及び測定のための資源(監視・測定のための機器)
- 7.1.5.1 一般(監視・測定のための機器の管理)
- 7.1.5.2 測定のトレーサビリティ(測定値を保証する、トレースできるようにすること)
- 7.1.6 組織の知識(会社のノウハウ)
- 7.2 力量(要員の力量)
- 7.3 認識(要員の認識)
- 7.4 コミュニケーション(情報の意志疎通)
- 7.5 文書化した情報(文書・記録)
- 7.5.1 一般(必要な文書・記録)
- 7.5.2 作成及び更新(文書・記録の作成と改定)
- 7.5.3 文書化した情報の管理(文書・記録の管理)
- 7.5.3.1 管理目的(文書・記録を使う目的)
- 7.5.3.2 管理上の要求(文書・記録を保管する)
- 7.1 資源(要員(社員)・建物・設備)